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第五十四話 悪質な計画と退学者

 

 目的地へ到着して課外訓練を無事に終えた俺達は、他の生徒と共にまだ戻って来ていないパーティーを待つこととなった。

 教師から伝えられたが、今回のポイントは加点の計算を変えるという。原因は今までの計算方法で俺達が歴代最高ポイントどころか、考えられないほどのポイントを得ることになってしまうからだ。

 例年通りの計算では、このままだと俺達のパーティーは実技試験を受けるまでもなく、点数が足りてしまう。流石にそれは不味いので、計算方法を変える必要が生まれてしまったのだ。

 もらえるポイントは少なくなってしまうが、パーティーメンバーは誰も文句を言わなかった。ジャンドとミルアは良い経験ができたと言って喜んでいたし、アリステラも自力で試験を突破する方が良いと考える性格だ。

 そもそも半分以上の魔物は俺が倒したものだから、俺がパーティーのリーダーだからとその辺りは全て任せられたのである。

 俺もこのようなポイントを必要とすることなく、自力で試験を突破することは可能だ。なので、文句を言う気はなかった。

 勿論、もらえるポイントの上限を俺達はもらえることとなっている。そこを上限に設定しなければ、他のパーティーがポイントを得られなくなってしまうからだ。

 あれこれと新たな計算方法を模索する教師を目の前にして、俺は大変そうだなと思う。

 こういった時に割合等の計算方法が確立されていれば楽なのだろうが、掛け算や割り算ですらまともにできる人が少ないこの世界の人々では、それは無理な話だった。


「最後のパーティー遅いな」

「あいつらだし、私達に勝とうとして無茶してるのかもね?」


 ジャンドとミリアがラストのパーティーの話をしている。今目的地に到着していないパーティーは、残り一つ。俺によく絡んでくる男達がいるパーティーだ。

 彼等は一応ある程度の実力があって、課外訓練の経験もある。なので、俺達の次に長い道のりを進むルートを割り振られていたはず。

 それでも俺達が到着してからすでに一日以上が経過しているので、訓練校を出てからそろそろ四日目に突入する。

 俺達のルートですら三日と数時間ほどで到着できる距離だ。なので何かあったのだと考えるか、ミルアが言ったように時間を気にせずにポイントを稼ぎに向かったのだろうと考える。

 先ほど、教師があと半日もすれば冒険者に依頼して探してもらうと言ったいた。すぐに依頼をしないのは、ただ狩りを長く行っているだけの可能性もあるからだ。

 流石に四日以上が経過すれば、時間面でもらえる殆どのポイントが失われる。そうなれば、どれだけ魔物を狩っていようがもらえるポイントはマイナスだ。

 そのため、四日経過した時点でその可能性を完全に排除するという訳である。

 俺達が探しに行くのではなく、冒険者に依頼をするのは金が掛かる。だがルートを外れている可能性もある以上、捜索範囲はかなり広い。冒険者に依頼して数パーティーに探してもらった方が早く見つかるのだ。


「おお! お前達、無事だったか!!」


 結局冒険者に依頼をすることはなく、四日目に突入する二時間前にパーティーは戻って来た。

 皆それほど大きな怪我を負っているようにも見えないので、強力な魔物に襲われたという訳ではないのだろう。迷子になっていたとかその辺りだろうかとも考えたが、経験だけは豊富な彼等だ。普通にルートを通っていけば、そう簡単に迷うはずもない。


「お前達、何かあったのか?」


 パーティーメンバーの一人が討伐部位を出したのを見て、教師が彼等にそう尋ねる。彼等が持って来た討伐部位は数匹分の魔物の部位。それにどれも、それほど苦戦する魔物ではない。

 これだけの数を討伐したにしては、やけに到着が遅かったからだ。


「お前達、何処を通ってここまで来た?」

「そうだ。お前達はルートを外れてここまで来ただろう? ルール違反で退学だ!」


 教師の心配する声を他所に、いつも絡んでくる二人が俺達の下へやって来た。そして自慢げにそう言ったのだが、周囲の者達は何を言っているか分からないといった様子である。


「お前達!? 何を言っているんだ!」


 そして残りのメンバーが少し慌てた様子で二人を止めようとしていた。だが、得意げに語る二人はそんな制止を促す声に耳を傾けることはない。


「残念だったな。時間を節約するために近道をしたようだが、ルール違反は退学の対象だ!」

「そうだ! お前達は退学だ!」


 ただの言いがかりにしては、やけに自信満々で言う彼等。

 やけに遅い到着に、俺達にルートを外れて進んだと自信満々に言う姿。そして、それを止めようとしているパーティーメンバー。

 なるほど、そう言うことか。彼等の行動を見て、ようやく彼等が何をしていて遅れていたのかが分かった。そして、彼等がどれほど馬鹿だったのかということも。


「確かに俺達は近道をして、時間の短縮をしたな」

「やはりな!」

「自分から認めるのか?」


 嬉しそうな表情でそう言う二人。俺が認めたことが不思議だったのか、二人を止めようとしていた男が動き止める。


「俺達がルートを外れていたとでも、教師に言うつもりか? 教師はここで待っていて、誰も見ていない。どこにも証拠はないぞ?」


 敢えて挑発するように、二人へ向けてそう言ってやる。

 すると、二人はさらに笑みを深めた。まるで、その言葉を待っていたと言わんばかりに。


「証拠ならあるさ!」

「残念だったな! なんたってお前達がルートを通らなかったのを、俺達が見ていたんだからな」


 どうだ、参ったかといった様子で、得意げな表情を浮かべる二人。そしてその言葉を聞いて、俺の意図を理解したのか、男が再び二人を止めようと口を開こうとする。だがそれよりも早く、俺は二人へ話す。


「そうか…。お前達は俺達がルートを通らなかったところを、見に来ていたのか」

「そうだ! だから、お前達の退学は確実だ!」

「この目でしっかりと見ていたんだからな。それが何よりの証拠だ!」


 ここで、ようやく止めようとしていた男が言葉を溢す。


「はぁ…。もう終わりだ」


 それは諦めの混じった声だった。そして、恨みがましい視線を俺と二人へ交互に向けていた。


「そうだ! お前達は終わりだ!」

「俺達の勝ちだ!」


 舞い上がっている二人は男の視線に気付くことなく、言葉を勘違いしてそう宣言する。

 だから俺は、そんな彼等に告げてやる。


「そうか見ていたのか。確かにお前達のルートは近くだが、それでも俺達のルートまでは見えないはずだ。ルートを外れて、こちらの様子を見に来ない限りはな」

「いや、俺達は…」

「そんなことは…」


 ようやく自分達の失言に気付いたようで、声が途端に弱々しくなる。目的地は同じなので、それぞれのルートはあまり離れていない。あまり別々の場所に進まれると、何かあった時に教師が面倒を見きれなくなるからだ。

 俺達のルートは遠距離のルートであり、彼等のルートともそれなりに近い。それでも狩る魔物を求めて争いにならないように、ある程度は離されている。ルートを通ったかどうか、自分達のルートから目視できる距離では決してない。

 恐らく元々は先回りして、俺達の妨害をしようとでも考えていたのだろう。それがいつまで待っても、俺達は来なかった。彼等は俺達を待っていたせいで、ここまで遅くなったのだ。

 しかし、そんなことで挫ける彼等ではなかったようだ。


「だが、お前達がルートを外れていたのは事実だろう! 話を変えるんじゃない!」

「そ、そうだ! ルートを外れていたのはお前達だ! 変なことを言うな!」


 完全に逆ギレである。せめて俺達を自爆に巻き込もうとしているのか、それともこのまま押し切れば助かるとでも思っているのか…。

 馬鹿だから、先のことを考えていないだけな気がする。仕方がない。彼等には引導を渡してやろう。


「俺はルート外れたとは、一言も言ってないぞ」

「何だと!? 嘘を吐くな!」

「俺達はさっき、この耳で聞いたぞ!」


 我が意を得たりとばかりに突っ込んでくる二人。だが、本当に俺は一言もルートを外れたとは言っていない。そう誤解するような言い方はしたが。


「俺は、時間を短縮するために近道をしたと言ったんだ」

「一緒だろう!」

「ルートを外れたのは変わらないぞ!」

「残念だが、ルートは外れていない。俺達が通ったのは、危険地帯だからな。危険地帯は毎年誰も通らないだけで、ルートの範囲に含まれている」


 俺の言葉を聞いて、ポカンとした表情を浮かべる三人。


「セインの言っていることは本当だぞ。危険地帯の魔物の部位を、いくつも確認したからな」


 さらに、そこへ教師が告げる。あれだけ大声で騒いでいたのだ。少し遠くにいた教師だが、何事かと近くまで来ていたらしい。


「そ、そんな…」

「う…そだろ…」


 ようやく観念したようだ。二人は顔を青褪め、下を向いてしまった。


「それよりも先ほど騒いでいた話を、もう少し詳しく聞かせてもらおう。取り敢えず、今日は解散だ! 皆、気を付けて寮に戻るように!」


 そう言って、その日は解散となった。

 後日彼等四人は教師に呼び出された。勿論あれだけの人数の前で、それも教師本人にも二人の自爆を聞かれていたのだ。

 今更誤魔化せるはずもなく、ほどなく四人は退学となったのだった。

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