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第三十三話 仲良し

 

 クロを連れて町を出る。


「皆、元気にしてるのかな?」

「シロとイルが一緒だ。流石にあのメンバーを殺せる魔物はいないだろう」

「確かに。それに大型は目立つから、近付いて来たらすぐに分かるか」


 二人で話しながら森の近くへと向かう。


「セイン。皆仲良さそうにしていましたよ」

「魔物の群れも散らしておいたっす。なので、大群に襲われることもなかったっすよ!!」


 森へと向かう最中でシロとイルの二人が合流する。この二人が密かに見守っていたことは五人には秘密なので、見つかる前に先に合流したのだ。

 これならば、俺達は一緒に町を出たと思ってくれるだろう。


「セイン様!」

「案外簡単だったな…」

「本来の目的通り、仲良くなれましたわよ」


 森から出て来たビビアが大声で俺を呼び、さらにフィンとシルベーヌが続く。確かにかなり仲良くなったようで、獣人であるフィンとの距離がかなり近くなっている。

 森へと向かう前と比べるとかなりの差だ。フィンとルゥが獣人ということに戸惑っていたようで、初めはここまで近くには寄っていかなかった。まあそれは、フィンとルゥの二人も同じ状況だったのだが。


「戻りました」

「お帰り」

「はい!」


 さらに後ろからイルとデールも出て来た。出て来たのだが、デールは何やら疲れた表情を浮かべている。一人だけ年齢がかなり上なので、気を張っていたのかもしれない。

 能力値だけ見れば問題はないが、それでも油断等をしていたら危険に晒されることだってあるだろう。警戒することはいいことだ。だが、それで疲弊するのも問題である。


「デール、肩の力を抜いていいんだぞ」

「いや、そう言う訳ではないんだが…はぁ」


 気の利いた言葉を掛けたつもりだったのだが、溜息を吐かれた。どうやら、別のことで疲弊していたようだ。


「セインお兄ちゃん!!」

「おっと!?」


 ルゥが突然俺に飛びついて来た。彼女はまだかなり幼く、発育が速い獣人だが人間の子供と同じ大きさの体だ。簡単に受け止めることができた。


「あっ!! ルゥ!?」

「お兄ちゃん!?」

「むぅ…」


 フィンとビビアの二人がそれを見て叫ぶ。特に近くにいたビビアの叫びは、俺の耳に軽いダメージを与えるほどだ。

 クロは下から何かを訴えかけるような視線を向けて来ていた。恐らくだが、彼女の抱っこを断っているからだろう。

 昔は抱っこやおんぶを強請られて、よくしてやった。その時はクロもシロももっと幼かったし、体も小さかった。確かにクロは今でもルゥとそれほど変わらないくらいには小さいが、シロは俺よりも背が高く立派に育っている。

 流石にシロがあれだけ成長しているのに、年上である姉のクロを子供のように抱っこやおんぶをする訳にはいかない。

 なので強請られても断っている訳だ。

 本当の親を知らず、親代わりの者は自分達が命懸けで集めてくる食料を奪う存在。そのような状況で育ってきたので、クロもシロも最初の頃はかなり俺に甘えてきた。

 俺も日本では、子供がいてもおかしくない年齢だったのだ。それこそ親のように優しく、時には厳しく接するように意識をしていた。今ではそんなことはないが、当時は子供二人を育てるということで、親になろうと空回りの努力をしていたのだ。

 そのツケが現在でも残っている。親代わりで育てた者として、甘えられたり頼られることは素直に嬉しい。だが、いつまでも甘やかす訳にはいかない。

 クロはいつまで俺に甘えてくるのだろうか? 仲間とも仲は良いが、彼女がここまで甘えるのは俺だけなのだ。シロはすでに親離れをしてくれたのだが…。

 仲間と仲が悪ければもう少し言えるのだが、決して仲が悪い訳ではなく普通に話している。彼女が人見知りだということを知っているだけに、新たな仲間が増える度に彼女が頑張っているのも理解できるのだ。

 なので、彼女を突き放すことをできないでいる。これは俺も、子離れができていないということなのだろうか?


「セインお兄ちゃん。お兄ちゃん達、私達を見守ってくれてたんですよね?」

「何のことだ?」

「三人には言ってませんが、私とフィンは流石に気付いていますよ?」

「だから何のことだ?」


 カマを掛けているだけだろうと思ってさらに恍けてみる。

 だが、ルゥはさらに言葉を続けた。


「魔物を狩れば、死体を隠しても血の臭いが残ります。それに、私の耳は誤魔化せませんよ」

「三人には内緒だぞ」

「はい!」


 すでに証拠も挙がっているようなので、三人には内緒だと釘を刺しておく。それにしても血の臭いとは…。これは人間では咄嗟に思いつかないことだ。死体を隠す際に、血溜まり等も地面に埋めたりする。放っておけば臭いが充満してしまうが、こうすることで臭わなくなるのだ。

 だが彼女達獣人の鼻は、その臭いすらも嗅ぎ取ってしまうらしい。

 さらに兎人族であるルゥは、ある程度近付くことで心音の僅かな違いを捉えることができるようだ。それにより、俺が誤魔化そうとしたことにも気付いているという。

 語ったことが真実か嘘かを、彼女は心音が変化するかどうかで確認できるようだ。本当に些細な変化の場合もあるので、より正確に確認するには近付く必要があるということだった。


「それよりも、遂にこの時が来たんだ。早速宿に戻って、襲撃の話を詰めていこう」

「セイン様、一緒に頑張りましょう!!」

「そうですね。私もセインさんやビビアさんのために、精一杯頑張りたいと思います!」


 何故かシルベーヌがさらに燃えていた。


「実は…」


 未だにくっついたままのルゥが説明してくれる。

 彼女は元々自分の身に起きた理不尽な貴族社会の闇が原因で、裏で悪事を働いてそれを貴族としての力でもみ消している者達が嫌いだ。

 俺に協力してくれているのも、シロが誘ったからということもあるだろうが、それが理由である。

 なのでリストア伯爵家への襲撃を、成功させるために尽力すると何度も言っていた。そこに今回ビビアと仲良くなったことで、どうやらビビア達が家を不当に追い出されたことも知ったらしい。

 つまり元々燃えていたところに、仲間が受けた理不尽という燃料が投下されてしまった訳だ。

 頑張ってくれるということに文句はないので、放っておくことにする。


「シロ、後でシルベーヌへの説明は頼む」

「そんな…」


 裏切られたと言いたげな目を向けてくるシロを視界から外して、そのまま宿へと戻る。

 張り切りすぎなシルベーヌを話し合いに参加させると、間違いなく長引くだろう。保護者のような立場であるシロに任せるのが一番だ。





 宿で決めたのは次の日の早朝にこの町を出ることと、領都であるスラーベンへの道順である。俺が戻って来たことを知られたくはないので、あまり街等に近寄りたくはない。

 しかし一切街に近付かないというのも、周囲の人間が見たら不審な行動だ。つまりできるだけ人間が通らないようなルートで向かう必要がある。


「獣道等を通るとしても、限界があります」


 シロが言う通りで、大きな街の周囲は見晴らしがいいように整地されている。そのためかなり大きく迂回しなければならず、スラーベンに近付く際にも見つからないようにとはいかないだろう。

 それに冒険者は小さな村等を除き、殆どの街に存在する。そして依頼を受けた冒険者は、何処へやって来るか見当もつかない。


「冒険者に関しては、俺もイル達のような服で顔を見え難くすればいいだろう。もし不振に思われたら、フィンが顔を見せる。獣人だと知って襲って来た場合は、殺してしまってもいいだろう」

「分かったっす。フィンにも言っておくっす」


 こうして話し合いは続いた。襲撃の詳細に関しては、情報を集めに向かったリリアが合流してからになる。

 そして勿論この話し合いの場に、シルベーヌはいない。同じく話し合いに参加していないクロの下にいる。さらにフィンも難しい話し合いに飽きて、早々に出て行ったのだった。

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