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第三十一話 考察

 

 さて、地竜を倒した者は何者で何処へ行ったのだろうか?

 周辺を探してみても、それらしき人物はいなかった。そもそも戦闘音一つ聞こえて来なかったので、俺達がここへ近付く前には地竜は倒されていたのだろう。

 それからさらに移動をしていた場合かなり離れているはずなので、見つけるのは困難だ。

 これが人の手によるものなのは明らかだ。地竜の死体には無数の切り傷が付いており、さらに喉元も深く抉られている。これは剣で付けられた傷だ。


「まだ帰らないの?」


 すでにクロは興味を失っており、暇そうにしていた。地竜が何者かによって先に倒されていたことを嘆いていた彼女だが、それから倒せる程の強者がいることに興奮していた。探してみてすでに近くにいないと知ると、帰りたいと言い始めたのだ。

 彼女の言葉を無視して、思考を続ける。地竜の死体が何者かは手練れであると示しているのだ。体に付いた無数の傷は兎も角、致命傷になるような深い傷は喉元の一つだけだ。

 初めからその一撃を狙っていたのだろう。喉元…というよりも、腹や喉等は鱗が他の場所より柔らかくドラゴンの弱点だ。つまり、ドラゴンという種族を倒し慣れているということである。

 この世界は下級のドラゴンですら危険度Aランクに指定されている。それを狩り慣れているということは、この世界以外の知識を持っている可能性があるということだ。危険度Aランクの魔物に、この世界の者達は手を出そうとしないからな。


「俺以外にもいるのか?」


 さらに深く思考する。クロとシロを連れていく中で、初めに考えたことはそれだった。俺がここに来たということは、他の英雄街道のプレイヤーがいてもおかしくないということなのだ。

 そして俺にとって一番脅威となるのは、この世界の強者ではなく俺のように高レベルでこの世界に来たプレイヤーである。俺がスキルマスターという特殊な職業になったように、他の者が特殊な職業になっている可能性もあるのだ。

 その場合、戦えば俺はかなり不利を強いられることになるだろう。この世界とは違い、日本では少し検索するだけで簡単にスキルの情報を調べることができた。なので、俺のスキルは全て知られていると思った方がいい。

 だが相手が特殊な職業となっていた場合、知らないスキルを取得している可能性もある。様々な職業のスキルを得て高レベルとなっている俺よりも、知らないスキルを持った相手の方が有利に戦闘を進められるはずだ。

 三年の間クロ達四人を育てつつ、俺は他のプレイヤーが来ていないか調べていた。その結果、来ていないという結論に至ったのだ。

 理由は全くその痕跡が見つからなかったから。身を隠していた場合は分からないが、ちょっとした噂話や歴史書等にも明らかに突出した強さの持ち主は出て来なかった。


「地竜を単独で倒す存在か…」


 それこそクロ達でもできるので、これをやったのがプレイヤーと確信している訳ではない。しかしこの世界の者だったとしても、確実にプレイヤーが絡んでいると断言できる。

 それはこの世界の者達と俺達プレイヤーの考え方の差だ。

 この世界の者達は、生まれた時から魔物と戦うことが命懸けの危険な行為だと教えられている。そのため、自分よりもかなり格下の魔物しか相手にしない。安全面をかなり意識しているのだ。

 その反面、俺達はゲームとしての意識が残っている。この世界が現実だと知っているので、命が掛かっているのは同じだ。だが、俺達には知識がある。

 自分がどの程度の魔物を倒せて、どの程度の魔物が危険なのかを。効率のいい成長の仕方を。そして強くなることこそが、自分の身を守る最善の方法だということを。


「そう言えば…」


 この道はフォグからリストア領へと向かう際、問題が起きて迂回しない限りは必ず通る道だ。つまり、リストア領の様子を見に行ったリリアも通ったはず。

 そして彼女はプレイヤーが育てた。勿論龍の渓谷で何度もドラゴンとの戦いを経験しており、一人でも問題なく倒せる実力がある。彼女は馬に乗って向かったので、時間的に考えても彼女が地竜と戦っている時、俺達は冒険者ギルドのいざこざに巻き込まれていた頃だろう。

 それに思い当たると、もうそうとしか思えない。

 まさか、ずっと考えていたプレイヤーの存在が自分だったとは…。


「はあ……犯人は俺とリリアか…」


 深い溜息と共に、俺の口から無意識に言葉が漏れる。


「リリア?」


 クロの質問に、思い当たった一つの結論を伝える。


「確かに、その可能性が一番か。流石はセイン」


 クロも俺の考えに納得したようだ。

 それにしても、考え過ぎて疲れた。この世界に来てから滅多に頭を使うことがなかったので、久しぶりに本気で思考を重ねた気がする。今までレベルによる力と、英雄街道の知識でどうとでもできたからな。殆ど頭を使わなくても、力尽くで問題なかったのだ。

 それなのにあれ程考え込んでしまったということは、やはり今でも俺にとって一番の脅威は他のプレイヤーだということなのだろう。やはり未来の自分の安寧のためにも、もっと高レベルの仲間を増やさなければ…。






「こちらが依頼の報酬となります」


 町への帰りに逃げたオークを見つけたので、それを狩ってギルドへ戻って来ていた。


「地竜に関しての情報は確認でき次第、特別報酬を支払うということでよろしいでしょうか?」

「それで問題ない」


 俺は依頼達成の報告と共に、地竜に関する情報を伝えていた。勿論リリアが倒したとは言わず、何者かによって倒されていたと言ってある。この後他の冒険者が依頼を受けて、ギルド職員と共に確認に向かうはずだ。


「クロ、今日は宿に戻るか」

「うん」


 体は疲れていないが、頭が疲れている。こういう日はさっさと宿に戻り、ベッドで横になるのが一番なのだ。

 中々に大変な一日だった。デールやイル達を見送り、次にリリアをリストア領へと向かわせた。その後冒険者ギルドで絡まれ、地竜の確認やオークの討伐を行ったのだ。

 一日でこなす量ではないと思う。

 それに地竜が討伐されていなければ、それも加わっていた。

 この世界に来てある程度経つというのに、未だに会社で働いていた頃の気分が抜けていないのかもしれない。癖になっているのか、一日にいくつもの仕事をこなそうとしてしまう。それが一番効率がいいと言えばそうなのだが、俺はスローライフを目指すのではなかったのだろうか?

 もう少しゆっくりしてもいいのかもしれない。だが取り敢えずは、母の敵討ちだ。ゆっくりするのはその後にしよう。

 そう思いながら、夕食の時間まで仮眠を摂ることにする。頭を働かせたからか、目を閉じるとすぐに睡魔が襲って来た。

 もぞもぞと隣にクロが潜り込んでくる。微睡みの中追い出すのも面倒なので、彼女の体を逆に引き寄せてやる。


「あれ? あの…えっと…その」


 俺が積極的に一緒に寝ようとするのが珍しいからか、困惑したような、少し焦ったような声が近くから聞こえてきた。

 しかしそれを気にせず、俺は眠気に任せて意識を手放した。

 9/17の24時に、私の新たな小説がアップロードされます。


念願の異世界転移に成功したら人間が世界を滅ぼしていた世界だったので、過去に戻って魔王軍を手伝うことになりました


 というタイトルです。

 内容はタイトル通りの異世界転移、そして魔王軍に入って人間と戦争をするというものです。

 魔王軍の者達を育て上げたリ、内政にも手を出す予定です。

 こちらもどうぞよろしくお願いします。

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