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第二十五話 新たな仲間

  

 二人は、王都では底辺の暮らしを強いられていたようだ。生きていくために、貧困層の者達からも扱き使われる。平民街の中でもスラムに等しいような場所を住処にしていたとか。

 猫人族の名前はフィン。兎人族の名前はルゥ。

 フィンは大人びた身体つきをしているが、まだ十三歳だという。獣人族は成長が速いというのは、本当らしい。

 ルゥは完全に見た目からして子供だったが、八歳だそうだ。

 二人は他の獣人達と行動していたが、はぐれてしまったらしい。そして、王都で隠れて生活していたようだ。

 獣人は人間よりも身体能力が高いと言っても、流石に子供二人が人間の街で生きてくことは難しかったのだろう。イルは人間の街で唯一頼れる獣人だからか、かなり信頼されているようだ。俺達が人間なのにもか関わらず、彼女の説明で警戒を解いてくれたのが何よりの証拠だ。

 二人は猫人族と兎人族だが、姉妹という話である。血は繋がっていないので、義理の姉妹と言うやつだ。フィンがルゥを後ろに庇って守ろうとしたのを見ているので、姉妹としての二人の絆は確かなものだと感じている。


「それで、二人を仲間にしてもいいっすか?」


 イルの言葉と共に、二人が俺の方へと視線を送ってくる。表情から、許可してほしいという思いが窺えた。彼女達にとっては、ようやくできた頼れる存在なのだ。流石に今から反対するのは酷だろう。


「イルは仲間として二人を連れて来たんだろ?」

「そうですが…反対されたら仲間にできないとも言ってあるっす。それに問題なく二人で生きていけるように、すでにある程度は育てているっす」


 俺達が仲間候補を探すのに苦戦している間、彼女は二人を育てていたようだ。レベルは共に20と俺達の脅威にはならないが、普通に暮らしていく分には十分強力な強さとなっているらしい。知識も殆ど与えておらず、イルなしで二人だけで上級職まで上り詰めることはできないということだった。

 一応反対される可能性もあるので、途中で育成を止めていたようだ。だが、仲間になる前提の育ち方だった。時間が掛かりそうなミッションを先にこなしていたのだ。これならば、俺が許可を出せばすぐにでも上級職になれるだろう。


「イルが仲間にしようと思ったなら、俺はいいと思うぞ」

「ありがとうございますっす」

「「ありがとうございます」」


 俺の言葉を聞き、イルと共に二人も礼を告げる。元々王都での仲間探しや育成はイルに任せていたのだ。本来ならば俺の許可を取る必要すらない。

 態々必要のない許可を取りにここまで来たのは、彼女が俺の奴隷だからだろう。俺としては奴隷として彼女を扱っていないのだが、リリアもイルも奴隷として自分を下に置き、俺を上へ立てようとするのだ。

 恐らくは奴隷としてこのように奴隷商から教育されていたのだろうが、俺はそこまで上下関係というものが好きではないのだ。仲間として同等の関係でいたいとは思っている。


「そう言えば、二人の職業は?」

「あたしは狩人だ」

「私は剣士です」


 フィルは狩人、ルゥは剣士らしい。狩人も剣士もイルはミッションの内容を知っている。なので、二人の職業をその二つにしたのだろう。

 猫人族のフィルは視力も良く、動きも素早いので狩人には適している。しかし、ルゥは兎人族だ。兎人族の特徴は獣人なのに力が弱く、戦闘に向いていないというもの。その代わり危機察知が高く、逃げ足が速い。

 確かに力よりも技術で斬る剣士は、戦士程は力を必要としない。それでも、剣士は力が強い方がいいに決まっているのだ。


「何故ルゥは剣士なんだ?」


 どう考えても、兎人族は狩人向けの特徴を有している。それはイルも分かっているはずなのだが…。


「ルゥは剣を振って前で戦いたいって、自分から言ったんすよ」

「あたしは反対だったんだ。ルゥのことはあたしが守ればいいからな」


 イルが俺の疑問に答えてくれた後、フィルがそれに対して文句を告げる。


「私だって、守られてばかりなのは嫌! 自分でも戦えるようになりたいの!」


 フィルの言葉に、眉根を寄せてルゥが言う。その言葉には、若干の怒りが籠っている。力を手にできると知って今の自分を変えたいと思ったのか、彼女は自分も仲間を守る側になりたいということだった。後方からの援護も立派な仕事だが、彼女はどうやら後ろに守る存在を置いておきたいらしい。

 これは明らかに、フィルが関係している。彼女は咄嗟にルゥを自身の背後に庇った。その様子から、これが普段からの行動であると分かる。つまり、彼女の影響なのだ。

 フィルはルゥに前へ出て欲しくないようだが、その原因が自分であることに気付いていないようだった。

 実際に前で戦うとなれば、狩人よりも剣士か戦士の方がいいだろう。スキルで上昇するステータスが力に寄っているからだ。そして戦士の方が力の上昇量は高いが、戦い方の関係上剣士の方が向いているのだろう。

 思っていた以上にイルは二人のことを見て、考えているようだ。


「イルに二人のことを任せていいか?」


 俺の言葉を聞いた途端、二人は少し嬉しそうな表情をした。イルが大丈夫と言っているので警戒は解いているが、やはりまだ人間に対して思うところがあるのだろう。それはこれから少しずつ改めてもらえばいい。


「大丈夫っす。役に立てるよう、しっかりと育ててみせるっすよ」

「頼んだ」


 俺に頼られたことが嬉しいのだろう。イルの尻尾がファサファサと揺れているのが分かる。普段はしっかりと隠しているが、室内なので問題ないと考えているようだ。

 まあ、それ以前にフィルとルゥは姿を完全に晒しているのだが…。

 この街の中にも亜人の奴隷はいるので、別に見られたからと言って問題はない。イルの場合は一人で行動することが多いので、獣の特徴を隠しているだけだ。流石に奴隷が一人で行動していたら、厄介事に巻き込まれる可能性が高い。それも亜人なら尚更だ。


「俺はクロとリリアと合流するから」

「こっちも頑張るっす」


 こうして俺達は再び別れた。

 イルはフィルとルゥを育てるために。俺はデールとビビアを育てるために。






「こっちは終わりました」

「長かった…」


 クロ達が獣のダンジョンから戻って来たのは、俺達が不死のダンジョンを攻略してから二日後のことだった。二人はかなり疲れた顔をしている。やはり階段を探すことが一番面倒なようだ。

 それも今回はデールを育てながらということで、それがさらに疲れる原因となったらしい。ビビアの場合は後方からスキルを魔物に撃てたので簡単だった。それに群れに対して範囲攻撃を行うことで、経験値もあっという間に溜まったからな。


「他のダンジョンはリリアに任せるよ」

「…………はい」


 返事までにかなりの間があった。俺が言ったことなので従ってくれるようだが、かなり嫌そうだ。

 顔に出していないのは流石といえるが…。クロなんてあからさまにホッとした表情を浮かべている。


「地図は用意してあるよ」


 俺もこの二日間、ただ無駄に時間を過ごしていた訳ではない。鱗のダンジョンに潜って、簡単にマッピングしていたのだ。傀儡のダンジョンと不死のダンジョンに潜って、俺一人ならばマッピングしながらでも危険はないと分かっていた。

 ただ、リリアの作った地図程上手には作れていない。そこは許してほしい所である。

 それに魔物の情報も載せている。そのため、どの階層まで潜る必要があるかは一目瞭然となっていた。


「ありがとうございます。これならば、二日で二人を上級職にできます」

「上級職…」

「私が…上級…たった数日で…」


 リリアも俺の渡した地図を見て、かなり楽になったことを理解してくれたようだ。すでに経験値で得られるスキルも全て獲得している。なので、余計な魔物と戦う必要もない。

 上級職になってからは、再び経験値稼ぎと戦いにおける体の動かし方の勉強をすることとなる。決めた期限までには十分間に合うだろう。

 当人であるデールとビビアは、自分達が上級職になると聞いて呆然としていた。この世界では上級職になれれば、強者であるという証明になる。騎士団でも分隊長以上だったり、冒険者でも数人しかいないと言われているAランクの者達が上級職なくらいだからな。


「明日は取り敢えず休みにするか」


 俺がそう言うと、皆は大いに喜んでいた。

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