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第二十四話 合流

 

 ボーンドラゴン。ドラゴンの姿をした骨は、屍龍ドラゴンゾンビ等とは違ってドラゴンではない。ただのドラゴンの見た目の骨だ。

 屍龍は実際のドラゴンの死体が不死族アンデッドと化した魔物である。骨龍スカルドラゴンはドラゴンの骨が不死族と化したもの。これらはドラゴンと呼ばれる。

 それに比べてこの魔物は動く骨だ。飛べないどころか、ブレスの一つすら吐くことはない。大きな蜥蜴と変わらないのだ。

 扉が閉まると同時にボーンドラゴンは動き出す。ビビアには後ろへ下がっていてもらい、俺は一人で前へと出る。

 手を振り下ろすだけという一撃を躱して、骨の体へと大剣を叩き込む。


「思っていたよりも硬いな…」


 弾かれるようなことはなかったが、骨に少し傷を付ける程度のダメージしか与えることはできなかった。ドラゴンではないというだけで、一応ここのボスだ。

 傀儡のダンジョンで出て来たメカワイバーンと同等の力を持っているのだろう。ブレスを吐いたりできない分、純粋な近接戦はメカワイバーンよりも強いのかもしれない。


「斬鉄剣!」


 今度はスキルを使って攻撃する。大剣が骨の一部を砕くことに成功する。


「グォァァ!!」


 自身の体を傷つけられたことにようやく気付いたのか、途端に尻尾を振り暴れ始めた。その一撃を真上に跳んで回避する。


「嘘だろ…」


 ボーンドラゴンはドラゴン以上に知能がないようだ。尻尾を振ったまま一回転したようで、俺の真下に無防備な首が現れた。


重撃ハードスラッシュ!!」

「ガギャガァ!?」


 大剣がスキルで倍の大きさとなり、ボーンドラゴンの首の骨を砕く。重撃は本来、重さなどが倍になって一撃が強化されるというスキルだった。

 それがこちらでは武器自体が倍の大きさになるようだ。おかげで、途中で地面に刃が突き刺さり、首を両断することができなかった。

 それでも半分以上は減り込んだ。動かないところを見ると、命を奪うことができるだけのダメージは与えられたのだろう。


「終わったぞ」


 壁際で邪魔にならないように立っていたビビアに言ってやる。


「凄い!!」


 彼女は杖を握りしめてこちらを見ていた。戦闘を見て興奮したのか、顔が赤くなっている。


「こんな戦い初めて見た! 今のを見たら、騎士団の訓練ですら遊びかと思えるよ!」


 側へと全力で近付いて来た後、俺の手を握りながら早口でそう捲し立てる。やはりかなり興奮しているようだ。握った手にかなり力が入っていて少し痛い。

 それにさっきから、言葉遣いが砕けた口調になっている。本人はそのことにすら気付いていないのだろう。


「取り敢えず、素材を回収してここを出るぞ」


 俺がそう言うと、彼女はしっかりと後ろを着いて来た。






「ごめんなさい。興奮していたみたいで…恥ずかしいです」


 不死のダンジョンから出た後、ビビアは顔を少し赤くしながら言った。ようやく落ち着いたようで、自身の様子を顧みることができたのだろう。

 奴隷であるリリアやイルは言葉遣いに気を配っているようだが、クロとシロの二人は気にしている様子はない。勿論俺も気にしていない。

 彼女は俺にとって…というよりもセインにとって妹のような存在なので、砕けた口調でも問題ないのだが…。そこは物心ついた頃から父親に教育されていたようで、今更意識して戻すのは難しいらしい。


「あっちも問題なく終わっていますかね?」


 そう言いながら、ビビアは獣のダンジョンがある方向を見る。クロとリリアが付いているとはいえ、デールが心配なのだろう。


「早く終わって、先に宿に帰ってるかもな」

「そうですね。父さんが迷惑を掛けてなければいいんですけど…」


 俺の言葉を聞いて、苦笑しながら言う。そしてそのまま、宿の方へと歩みを進めた。

 宿に着いて確認すると、部屋にはまだ誰もいなかった。不死のダンジョンは構造上簡単に進むことができたので、こちらがかなり早く戻って来た可能性がある。

 もしそうならば、待つ時間が長く無駄となってしまう。戦いにおける体の動かし方等を教えてもいいのだが、彼女の職業は魔術師だ。俺自身が杖術はそれほど得意という訳ではないし、本来ならば近接戦闘に持ち込まれないような戦い方をするべきである。

 俺では彼女の教師になることができない。


「そう言えば、来客があったと言っていましたね」

「そうだな」


 宿へと戻った際に、受付からそう聞いている。その者は宿等を巡り、俺達の情報を集めているようだ。


「大丈夫なのでしょうか?」

「大丈夫だよ。俺達の仲間だと思う」


 探していた者の特徴を聞いて俺はそう考えていた。フードを目深に被った弓を背負う女性が一人。何人かで探しているというならば分からないが、一人ならば間違いなくイルだろう。

 王都に行った彼女が俺達を探してこの街へ来たということは、何かあったのだろうか?


「もう一度見て回って良かったっす」


 恐らく宿の従業員に戻って来たことと部屋の場所を聞いたのだろう。ノックをした後、扉を開けてイルが入って来る。


「おかえり。随分早いな」

「そうっすね。説明するので、少し来てもらえないっすか?」


 ビビアを一目見た後、彼女はそう尋ねてくる。どうやら場所を移動したいらしい。


「そっちの人もいいっすよ」


 ビビアには聞かせたくない話なのかと思ったのだが、どうやらそれも違うようだ。取り敢えず俺達はイルの案内の下、街の外れにある空き家へと連れて行かれた。

 空き家は数軒建っているが、どれも十年以上放置されているのが見て分かるほどである。時々人を見かけるが、殆どは浮浪者のような見た目をしていた。

 この辺りの空き家に無断で住んでいる者達なのだろう。普段は街の者達は近付かないのか、俺達を奇異の目で見てくる。それでもここは冒険者の街だ。襲われるようなことはない。


「何者だ?」


 イルに連れられて中へ入ると、そこには二人の獣人がいた。俺に何者かと尋ねてきたのは、猫の特徴を持った猫人族。そしてその後ろに守られるようにしているのが、兎の特徴を持った兎人族。

 二人はイルの知り合いなのだろう。彼女の方に探るような視線を向ける。俺達へと警戒心を剥き出しにしているが、それでも動こうとはしない。


「襲おうとか、逃げようとかしない方がいいっすよ。死にたくなければ」


 イルが二人へそう告げる。そして今度は俺達の方へと向く。


「どうぞ、座ってくださいっす。説明するので」


 そこから彼女は、王都へ向かった後の話しを始める。

 王都には途中までしか入れなかったようだ。オーレン王国はすでに上が腐っている。それを彼女の話を聞いて理解した。

 王都は富裕層と貧困層で分かれているらしい。それも物理的に。王都は二重の防壁があるようだ。内側にしっかりとした城壁、外側に見た目だけは立派な城壁。

 そして内側の城壁内は貴族街と呼ばれて貴族が暮らしており、外側に平民街と呼ばれて平民が暮らしているようだ。そして王都の領主…つまり国王は貴族しか見ていない。

 税は基本的にそれぞれの領主が決める。王都の税を決めるのは、勿論国王だ。

 王都の貴族達から税が安いと喜ばれているらしい。平民にも同様の税を課されることとなる。

 王都に住むような貴族は、ある程度の財は持っているものだ。その者達が安いと言っているからといって、平民がその税に耐えられる訳がない。

 そのため、貴族街と平民街よりも富裕層と貧困層と呼ばれることが多いようだ。

 流石のイルも、貴族街までは入ることができなかったらしい。

 貴族達は平民街にいる者達を、同じ人間として見ていないようだ。貴族が外に出る際には、平民街を通る必要がある。その時、平民はその貴族の馬車に絶対に近付かない。何をされてもおかしくないからだ。子供までそれを理解して、貴族達に怯えているという。

 彼女はそれらの情報を、平民街で集めたようだ。


「その時に、この二人を見つけたっす」

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