6話 美少女転校生の母親
翌日の午前7時過ぎ。牛尾悠香は自室――ではなく、五十嵐灯里と五十嵐葵美の自室で目覚めた。
(あぁ……あんまり寝れなかった。なんで3人で同じベッドなんだよ。可笑しいだろ)
牛尾悠香はお姫様が使うような大きなベッド(五十嵐灯里と五十嵐葵美のベッド)に五十嵐灯里と五十嵐葵美の3人で寝ていたのだが、いつも1人で寝ているために落ち着かず、あまり寝られなかったのだ。五十嵐灯里と五十嵐葵美は大好きな人と一緒に寝られてとても幸せそうに寝ている。
(2人とも可愛い寝顔しやがって……。満足に寝れなかったのはあたしだけかよ。まぁいいや起きよ)
牛尾悠香はベッドからおりて、五十嵐灯里と五十嵐葵美の自室から出た。リビングに行くと、五十嵐灯里の母親が近くのキッチンで4人分の朝ごはんを作っていた。五十嵐灯里の母親は牛尾悠香が来た事に気づくと可愛らしい笑みを浮かべた。
「悠香ちゃんおはよう!」
「おはよう桜華さん」
挨拶してくれた五十嵐灯里の母親――五十嵐桜華に牛尾悠香は挨拶した。
「今日セイクリッドアビリティは出た?」
「ん~残念ながら出なかったわね。2日連続で出るっていうのはあまり無いし……」
「そうかぁ。……神もきまぐれすぎだぁ」
神様は1日に複数回どこかの美少女にセイクリッドアビリティを授けたり、何日か連続でどこかの美少女にセイクリッドアビリティを授ける事がある。だが、それは稀で大体は1週間から1ヶ月に1回程度の頻度でどこかの美少女にセイクリッドアビリティを授けている。これにより、セイクリッドアビリティを美少女に授ける神様はきまぐれというイメージがついてしまった。
「そもそもさ。なんで美少女だけなんだ? なんで美女はダメなんだ? ここ本当に解せない」
「そうねぇ。その美少女が成長して美女になってもセイクリッドアビリティはそのままなのにねぇ」
「既に美女になってたら与えないのってやっぱり可笑しい!」
「それは同意せざるおえないわ」
「美女にも与えてくれたら桜華さんも絶対授かるのに!」
「まぁ! それって私が美女だって事? 嬉しいわぁ!」
五十嵐桜華はニコッと笑った。頬のピンク色も少し濃くなり可愛さが増した。二児の母親とは思えない可愛さである。そもそも、すごく可愛い五十嵐灯里にそっくりな地点で五十嵐桜華もすごく可愛いのだ。
牛尾悠香は椅子に座って朝ごはんを待っていると、五十嵐灯里と五十嵐葵美が手を繋いでリビングに来た。五十嵐葵美はまだ眠たいのか、目がほとんど開いていない。
「悠香ちゃんおはよ~! 私と一緒に寝てどうだった~?」
「暑苦しかったよ」
「ちょ、ちょっと~! 暑苦しいってどういうこと~!? 私女の子だよ~!? 男じゃないよ~!?」
「何回も抱きついてきやがって! 何回起きてしまったか!」
「え~? そのまま抱きつかれててよ~? というより悠香ちゃんも抱いて~!」
「嫌だね!」
「うわ~酷~い!」
朝から仲良しな牛尾悠香と五十嵐灯里を見て五十嵐桜華はニコニコしていた。
朝ごはんが完成すると、牛尾悠香と五十嵐灯里、五十嵐桜華、五十嵐葵美は揃って朝ごはんを食べ始めた。だが、普通の食事とはいかない。
五十嵐灯里は牛尾悠香の方を向いて、
「悠香ちゃんあ~ん」
と自身のおかずを牛尾悠香の口元に近づけた。
「いらない」
「ダ~メ! あ~んしたいの~! 間接キスし~た~い~の~!」
「気持ち悪いわ!」
「悠香ちゃん酷いよ~! 女の子同士なんだから何も気持ち悪くないよ~!?」
「それでもいらない! そのおかずは灯里の物だ! あたしは絶対に食べん!」
「や~だ~! 食~べ~て~食~べ~て~!」
牛尾悠香と五十嵐灯里は食事中でもイチャイチャしていた。五十嵐桜華はクスッと笑いながら牛尾悠香と五十嵐灯里を見ていた。五十嵐葵美はさっきまで眠そうにしていたのに、今は頬を膨らませて牛尾悠香と五十嵐灯里を見ていた。五十嵐葵美は妬いているのだ。
「お姉ちゃんのあ~んはボクの~!」
我慢ができなくなった五十嵐葵美は五十嵐灯里の腕を両手で掴んだ。五十嵐灯里は困ったような表情で五十嵐葵美の方を向いた。
「葵美~今私は悠香ちゃんと……」
だが、五十嵐灯里は前日、五十嵐葵美とキスした時のような表情になった。五十嵐葵美の魂のセイクリッドアビリティの効果が出たのだ。
「葵美……あ、あ~んして?」
「あ~ん」
五十嵐葵美は口を可愛らしく開けて五十嵐灯里のおかずを口に入れた。そして、すごく嬉しそうにモグモグ食べた。五十嵐灯里はまだうっとりとした表情のまま、
「ね~葵美~。今度は私にあ~んして~?」
と目をうるうるさせながら五十嵐葵美に言った。
「うん! じゃあこれ~」
「やった~あ~ん!」
五十嵐灯里は五十嵐葵美のおかずを美味しそうに食べた。だが、口に含んだおかずを飲み込んだ後も五十嵐灯里の表情は変わらず、五十嵐葵美と目を合わすと、
「葵美~……また……チューしたいな~」
と言いながら五十嵐葵美の顔に自身の顔を近づけた。
「うん……チューしよ~」
五十嵐灯里と五十嵐葵美はお互いの唇を重ねた。
「「ちゅ……ん……んちゅ……は……あ……」」
舌をなめあって過激な音をたてている五十嵐灯里と五十嵐葵美。その様子を見ている五十嵐桜華はニコニコして、
「やっぱり眼福だわぁ」
ととても嬉しそうに言った。ただ、五十嵐灯里と五十嵐葵美がディープキスしてる間に牛尾悠香は思った。
(このまま2人で結ばれてしまえ。あたしはセイクリッドアビリティを探求し続けるのだから。だから葵美には灯里を魅了し続けてもらわなくてわなぁ!)
牛尾悠香は明らかに悪い表情をしているが、その表情を見てる人はいない。