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6話 イビルアビリティ教の集会所

 翌日の午前4時半過ぎ。

 小鳥遊心咲(たかなしみさき)高梨美瑠来(たかなしみるき)はようやくイビルアビリティ教の集会所の前に着いた。昨日の午後11時半過ぎに小鳥遊家を出たため、5時間程歩き続けた事になる。家の扉を素手で破壊できる程元気な高梨美瑠来はともかく、空腹で疲れきっている小鳥遊心咲にはかなりきつい道のりだった。


「……もう歩けない……何か食べたい」


 小鳥遊心咲は気分悪そうに座り込んだ。そんな小鳥遊心咲に高梨美瑠来は、

「ここまでお疲れ様。はい。きゅうり」

と言って、きれいなきゅうりをあげた。


「……きゅうりってそのまま食べても――」

「味が無いとか言いたいのか? そんなはず無いだろ。きゅうりは酸っぱいんだ」

「…………」


 小鳥遊心咲はもらったきゅうりを食べた。


「……やっぱり味無いじゃん」

「いやいや酸っぱいはずだ」


 高梨美瑠来は小鳥遊心咲が食べているきゅうりを食べた。


「……味……ねぇな」

「だろ?」

橘井槻(きついつき)の野郎騙しやがったなぁ」

「橘井槻……誰だよ」

「でたらめのイビルアビリティを持ってるアホだ。あいつがきゅうりはぽん酢より酸っぱいって言うからそう思ってたのに全然酸っぱくねぇじゃねぇか!」

「でたらめのイビルアビリティ持ちの人の言うことって信じる意味ある?」

「イビルアビリティ教の奴らはみんな信じてるぞ?」

「え? みんな揃ってきゅうりは酸っぱいって思ってるの?」

「そうだよ。小学校の給食であるじゃん。酸っぱいきゅうり」

「あぁ、あれはぽん酢に浸けたきゅうりだよ」


 その時、高梨美瑠来が真顔になった。いや、驚愕して真顔にならざるおえなかったのだ。その反応に驚愕した小鳥遊心咲は、

「え? 知らなかったの?」

と思わず言ってしまった。


「だ、だだだ大ニュースだ! みんなアホの橘井槻に騙されている! きゅうりが酸っぱいんじゃない! ぽん酢に浸けたきゅうりが酸っぱかったのだ!」

「大げさすぎない?」

「大げさじゃないぞ!? よし! 今からあのアホの橘井槻をしばきたおしてやろう!!」


 高梨美瑠来はそう言うと1人で町中へ突っ走って行った。小鳥遊心咲のきゅうりを持ったまま。

 1人になった小鳥遊心咲はとりあえずイビルアビリティ教の集会所に入った。だがそこは――、


「……臭い」


 集会所の奥にゴミ山があった。腐りきっている食べ物、かなり汚いボロボロの服、とんでもない悪臭を出している謎の物体などのゴミが積まれているゴミ山である。


「なんで……なんで集会所にゴミ山があるんだよ……」


 小鳥遊心咲は険しい顔で文句を言おうとした。その時、後ろから、

「あのゴミ山はイビルアビリティ教の御神体です」

とアホな事を間抜けっ面の男に言われた。そんな事言われた小鳥遊心咲は更に険しい顔になった。


「御神体があんなゴミ? ふざけてるのか?」

「そう思いますか? でも事実です。あのゴミ山にイビルアビリティ教に入りたいと言えばイビルアビリティを貰う事ができます」

「え? イビルアビリティ教のみんなはあのゴミ山からイビルアビリティを貰ってんの?」

「はい」


 小鳥遊心咲はイビルアビリティ教に入りたいとは思ったものの、ただでさえイビルアビリティはポンコツな能力が多いのに、御神体がゴミ山となるとますますイビルアビリティの事をポンコツだと思ってしまい、非常に悪いイメージを持ってしまった。

 ドン引きしている小鳥遊心咲に間抜けっ面の男は言った。


「あのゴミ山を見て嫌な顔するのは誰だって同じです。僕も最初は嫌な顔をしました。イビルアビリティを貰うためにあのゴミ山の上に乗らなくてはいけないとイビルアビリティ教の先輩に聞いた時はドン引きしてしまいました。ですが、我慢してあのゴミ山に乗ってイビルアビリティが欲しいと言ったら素晴らしい能力を貰う事ができました」

「……素晴らしい能力。……どんな?」

「僕のイビルアビリティは消臭のイビルアビリティ。どんな臭いでも消すことができます」

「……ならこのゴミ山からする激臭を消して」

「はい」


 間抜けっ面の男はポケットから消臭剤を取り出してゴミ山にかけた。ゴミ山の全体にまんべんなくかけるとゴミ山から激臭はしなくなった。


「どうですか? これが僕のイビルアビリティです」

「……消臭剤が必要なの?」

「……はい。消臭剤が無いと消臭はできません」

「……それって結局のところ無能力じゃないか」


 その時、間抜けっ面の男が真顔になった。当然の事を言われて真顔にならざるおえなかった。小鳥遊心咲は間抜けっ面の男の反応に、

「え? 自覚してなかったの?」

と思わず言ってしまった。

 間抜けっ面の男は真顔のまま小鳥遊心咲に言った。


「乗りなさい」

「……何に?」

「ゴミ山に乗りなさい」

「嫌です」

「乗りなさい」

「嫌です」

「さっさと乗れやクソアマァァァァァ!!」


 間抜けっ面の男は急にぶちギレて、小鳥遊心咲をゴミ山に突き飛ばした。しかし、間抜けっ面の男は以外に力があったせいで小鳥遊心咲はゴミ山に直撃後、ゴミ山が崩れて小鳥遊心咲は崩れてきたゴミに埋もれてしまった。

 機嫌がおさまった間抜けっ面の男は、

「やっちゃったぁ」

とアホな顔して突っ立っていた。

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