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セイクリッドアビリティ 神様の能力を授かった少女達  作者: イツキヤロ
セイクリッドアビリティオタク編
2/30

1話 童顔の美少女転校生

 午前6時。自室で寝ていた牛尾悠香(うしおゆうか)は目覚まし時計の音で目覚めた。起床した牛尾悠香はすぐにリビングへ行き、テレビをつけてニュース番組を観た。

 経済のニュース、芸能のニュース、事件のニュースなどを牛尾悠香は興味無さそうに観ていたが、7つ目に、

『昨日午後7時半頃、北海道在住の女子中学生が(きり)のセイクリッドアビリティを授かりました』

というセイクリッドアビリティのニュースが報道された。


「来たぁぁぁ!! 549人目!!」


 急にテンションが上がった牛尾悠香はテレビの近くにある引き出しからノートを取り出し、【2027年4月26日 北海道に住む女子中学生が(きり)のセイクリッドアビリティを授かる】と書いた。


「やっと来た! 1ヶ月ぶりに来た! 神のやつめぇ、1ヶ月も何してやがった!? もっと美少女達にセイクリッドアビリティ授けろよ!」


 牛尾悠香はそんな事を言いながら、1つ前に書いた【2027年3月21日 東京都に住む女子高生が星のセイクリッドアビリティを授かる】を見た。1ヶ月ぶりというよりかは1ヶ月強も経っていた。


「神も困ったやつだ! 今まで1ヶ月空く事なんて無かったのに! もっと働いて欲しいものだ!」


 大声で神への文句を言う牛尾悠香。罰当たりたが、牛尾悠香にはそんな事知ったことではないのだ。

 その後は朝ごはん(ソーセージ3本)を食べてから、自室のパソコンで何人かの同志達とセイクリッドアビリティについてのチャットを午前8時までし続けた。




 午前8時30分前。地方のある私立高校にて、牛尾悠香は上機嫌で2年2組の教室に入った。


「やぁみんな! おはよう!」


 牛尾悠香の大きな声に、教室にいたほとんどの生徒達が戸惑いながらも、振り向いて「おはよう」と返した。牛尾悠香は席に着くと、前の席の馬田杏樹(うまだあんじゅ)がニヤニヤしながら後ろを向いた。


「悠香。いつもはブスッとした顔してるのに今日は随分と機嫌が良いじゃないか」

「新たにセイクリッドアビリティを授かった女の子が出たんだ! マジで嬉しいね!」

「出なかったブスッとするのかよ」

「当たり前だ! セイクリッドアビリティを授かる女の子が出てきてくれる事があたしにとっての楽しみなんだからな! てかここ1ヶ月出てこなかったからマジで滅入ってた!」

「セイクリッドアビリティ以外の趣味も見つけろよ」

「それはできない! セイクリッドアビリティあってのあたしだからな!」


 自慢気にアホな事を言う牛尾悠香。自身がセイクリッドアビリティを授かっているわけではないのにここまで言える事に馬田杏樹は不思議に感じた。


 午前8時30分になり、担任の平井貴音(ひらいたかね)が教室に入ってくると、号令担当の馬田杏樹の号令で生徒全員が一連の動作(起立、礼、挨拶、着席)をした。


「おはようございます。早速ですが皆さんに大事なお知らせがあります」


 大事なお知らせと聞いて生徒達は少しガヤガヤした。良いお知らせなのか悪いお知らせなのか気になっているのである(牛尾悠香はセイクリッドアビリティの事を考えている)。


「今日からこのクラスに……転校生が来ます! とっても可愛い女の子です!」


 平井貴音のその言葉を聞いた途端、男子生徒達が歓喜の声をあげた。女子生徒達は男子生徒達の露骨な反応に若干引いているが、転校生の事に関しては楽しみな様子である(牛尾悠香はセイクリッドアビリティの事を考えている)。


「それでは入ってきてもらいます。五十嵐(いがらし)さん! 入ってきてください!」


 教室のドアが開き、1人の女子生徒が入ってきた。だが、その女子生徒を見た時、生徒達は思わず驚愕した(牛尾悠香はセイクリッドアビリティの事を考えている)。

 ポニーテールにくくられた長い銀髪、宝石のように綺麗な黄色い瞳、女子高生とは思えない程の幼さのある童顔、全く日焼けしていない白い肌、制服の上からでも分かる抜群のスタイルという、可愛さと美しさを両方兼ね備えた美少女だった。


 その女子生徒は教卓の横に立つと可愛すぎる顔を生徒達に向けた。そのタイミングで平井貴音はその女子生徒に自己紹介をするように言うと、その女子生徒は口を開いた。


「はじめまして~。私~五十嵐灯里(いがらしあかり)って言いま~す。東京からこの町に来ました~。話す事が大好きなのでみんなとたくさんお話ししたいで~す。よろしくお願いしま~す」


 その女子生徒――五十嵐灯里は明るい笑顔をした。その直後、男子生徒達は嬉しさのあまり歓喜の声をあげた。かなり大きな声なので女子生徒達(牛尾悠香を除く)、平井貴音、五十嵐灯里は思わず驚いてしまった。だが、牛尾悠香は五十嵐灯里という名前を聞いた時、セイクリッドアビリティの事から五十嵐灯里の事に思考が変わった。


(五十嵐灯里? 小学生の時引っ越したのに今度は引っ越しでここに戻ってきたのか? こんな事あり得るのか? 信じられないな。 ……にしても成長して体は大人っぽくなったのに顔を相変わらず子供みたいに可愛いな。……あの喋り方も全然変わってないし)


 牛尾悠香はちょっと気になる事でもある感じの表情で五十嵐灯里を見ていた。その様子に後ろを向いた馬田杏樹は気づいた。


「おや? 牛尾悠香が転校生に興味を示しているぞ?」

「……あの転校生は小学生の頃の友達だったんだ」

「……は? なに!? 小さい頃からずっとセイクリッドアビリティの事しか興味無かった牛尾悠香に友達がいたのか!?」

「そうだ。唯一の友達だ」

「ぬぅ……あんな可愛い子が唯一の友達だったなんて……罪なやつだ!」


 その時、平井貴音は手を強く叩いた。


「皆さん静かにしてください! 喋るのは休み時間にしてください!」


 歓喜の声を上げていた男子生徒達と喋っていた女子生徒達は平井貴音の指示で静かになった。その時も五十嵐灯里はニコニコしていた。


「では五十嵐さん。あそこの空いている席に座ってください」

「は~い」


 平井貴音の指示で、五十嵐灯里は廊下側の前から5番目(1番後ろ)の席に向かった。だが、五十嵐灯里が座る1つ前の席は牛尾悠香が座っている席だ。五十嵐灯里は席に着く前に牛尾悠香と目があった。


「……あれ~? 悠香ちゃん?」

「……うん」

「わ~! 悠香ちゃんだ~!」


 五十嵐灯里はすごく嬉しそうな表情になって牛尾悠香に抱きついた。それにより、牛尾悠香含めた生徒達は驚愕した(馬田杏樹はニヤニヤしているだけ)。


「なにするんだ灯里! 離せ!」

「やだ~! せっかく会えたのに~!」

「後にしてくれぇぇ!!」

「え~! じゃあ後で抱かせてね~!」


 五十嵐灯里はまぶしい程の笑顔で牛尾悠香から離れて、牛尾悠香の後ろの席に着いた。牛尾悠香はすぐに落ち着こうとした。しかし、男子生徒達から明らかな敵意を含んだ視線を向けられてしまったため、全く落ち着けなかった。そんな中、平井貴音はそんな牛尾悠香に、

「牛尾さん。五十嵐さんと友達だったの?」

と聞いた。だが、牛尾悠香が口を開く前に馬田杏樹が、

「小学生の頃、大親友だったそうです!」

とニヤニヤしながら言った。


「そうなんですか。でも五十嵐さん。再開が嬉しいのは分かりますが、抱きつくのは休み時間にしてください」

「は~い」


 五十嵐灯里は平井貴音の言った事に笑顔で返事した。


 ホームルームは平井貴音がお知らせを書いたプリントを2枚配って終わった。

 ホームルームから1時間目の間の休み時間。五十嵐灯里はすぐに席から立つと、牛尾悠香の前に行って牛尾悠香に抱きついた。


「えへへ~悠香ちゃ~ん会いたかったよ~!」

「そうか」

「ずっと会いたくて会いたくてたまらなかった~! 会えない間すっごく寂しかった~!」

「……そうか」


 五十嵐灯里に強く抱きしめられて苦しそうな表情をしている牛尾悠香。そんな様子を馬田杏樹はニヤニヤしながら見ていた。だが、牛尾悠香はハッとして、ニヤニヤしている馬田杏樹の方を見て指差した。


「そういえば杏樹! さっきあたしと灯里が大親友だったって言ったな! 盛り過ぎだ! あたしと灯里はただの友達だ!」


 牛尾悠香はそんな事を言った時、五十嵐灯里は牛尾悠香を抱くのをやめて、牛尾悠香の両肩を掴んだ。この時、五十嵐灯里はちょっと悲しそうな表情になっていた。


「なに言ってるの悠香ちゃ~ん! 私と悠香ちゃんは大親友でしょ~? 相思相愛でしょ~!? お互いに大好きって言い合ってたのに~!」

「そんなわけあるか! 知ってるだろ!? あたしはセイクリッドアビリティ一筋だ! セイクリッドアビリティ以外の事を好きにはならない!」

「え~! ……でも私~セイクリッドアビリティあるよ~?」

「そんなわけあ……ん? セイクリッドアビリティある?」


 五十嵐灯里が突然言った言葉に牛尾悠香は急に真顔になった。さっきまでニヤニヤしていた馬田杏樹は五十嵐灯里のセイクリッドアビリティに興味がある様子だ。


「……セイクリッドアビリティを授かったのか?」

「授かったよ~」

「……何のセイクリッドアビリティを?」

(いのち)だよ~」

「そうか! 命のセイクリッドアビリティを……え? えぇぇぇぇぇ!!」


 突然、教室全体に響く大声をあげた牛尾悠香。他の生徒達(馬田杏樹を含む)は全員驚いて牛尾悠香の方を見た。牛尾悠香はあまりにも驚いていて、教室内の状況に気づいていない。


「命のセイクリッドアビリティを授かったという事は……殺された灯里の妹を生き返らせたという事だな?」

「……そうだよ~。やっぱり悠香ちゃんは知ってたんだね~」


 五十嵐灯里はその可愛い顔で不敵な笑みを浮かべた。喋り方は変わっていないが、その表情だけで全く雰囲気が違っていた。他の生徒達(馬田杏樹を含む)は「殺された」という言葉が聞こえた時、一斉に真顔になって沈黙した。

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