0話 小学生の馬鹿女とセイクリッドアビリティの授業
初作品です。よろしくお願いします。
地方のある小学校。そこの4年1組の教室にて。
六時間目の授業が、チャイムが鳴るまであと10分程ある時に終わってしまった。しかし、他のクラスはまだ授業中なため、児童達を解散させるわけにはいかない担任は、ある話しをする事にした。
「時間が余ったからちょっとセイクリッドアビリティについての話しをするわ」
担任のその言葉を聞いた途端、一部の児童が、
「神の力! ゴッドパワー!」
「リアルスキル!」
「神に選ばれし者だけが手に入れる事ができる聖なる力! 全てを超越する伝説の力!」
などということを上機嫌に発言した。
「変な言い方をしてる子がいるけどその通りよ。神様が選び抜いた1人の人間にその神様が能力を授ける。その能力の名前が神聖な能力ことセイクリッドアビリティね。これは誰でも分かるはず。では、最初にセイクリッドアビリティを授かった人が現れたのはいつか知ってる?」
担任の問いに1人の女子児童が、
「2010年の10月1日! 出雲大社の近くに住んでる7歳の女の子が炎のセイクリッドアビリティを授かった!」
と自信満々に言った。
「牛尾さん大正解。いつなのかだけじゃなく場所とその女の子がなんのセイクリッドアビリティを授かったかまで分かるなんてすごいね。訂正しておく事は出雲大社の正しい読み方は出雲大社という事だけね」
担任の問いに大正解した女子児童は「そんな読み方するんだ」と言って自身の持っているメモ帳にメモした。
「その女の子はいきなり炎が使えるようになった事で大混乱して家を燃やしてしまってね。両親や近所の人達は大パニックになったの。その時でも女の子は泣きながら炎を出し続けて大火災を引き起こしてしまった。幸い、駆けつけた消防士が女の子を落ち着かせたから町中が燃える事は無かったんだけど、その女の子は消防団や警察によって保護される事になったわ。保護された後に消防士が女の子とちょっと話したようなんだけど、どうやらその女の子は炎が使えるようになる直前に誰かの声を聞いたそうなの」
その時、さっきの女子児童が、
「我は世の神話にて伝わる神。汝に炎の力を授けよう」
とかっこつけて言った。
女子児童の発言に児童達はちょっと引いているが、担任は弱めに手を叩いて児童達を自身に注目させた。
「牛尾さんが言った事はその女の子が実際に聞いた言葉よ。だけど、その事は最初誰も信じなかったわ。神様なんて実際にいるなんて信じられてはいなかったから。でも、後に信じざるおえない事が起きた。それは――」
「10月7日に広島県に住んでいる10歳の女の子が氷のセイクリッドアビリティを授かったから!」
担任が言おうとした事をさっきの女子児童が大きな声で言った。
「……牛尾さんの言った通り。しかもその女の子は氷が使えるようになる直前に――」
「我は世の神話にて伝わる神。汝に氷の力を授けよう」
担任が言おうとした事をまたさっきの女子児童が大きな声で言った。
「……その通り。しかもその翌日に――」
「愛媛県に住んでいる5歳の女の子が花のセイクリッドアビリティを授かった!」
「……そ、そうよ。それによって日本中がその能力の事で持ちきりになった。誰もが神様の存在を信じざるおえなくなったのね。そして、また誰かが神様からの声を聞いてセイクリッドアビリティを授かるかもという事で騒ぎになったわ。それ以降も能力を授かる女の子が増えていった。2020年現在では――」
「307人!」
「……はい。307人の女の子がセイクリッドアビリティを授かったの。日本だけじゃなくて世界中での合計よ。今後も確実にどんどん増えていくわ。だけどなぜ女の子だけなのかは定かではないの。単に神様が女の子に優遇しているだけという説もあるけど」
担任が言い終わった時、さっきの女子児童が、
「神様は特殊な能力が使える可愛い女の子が大好きだからだと思う! 実際、セイクリッドアビリティを授かった女の子達はみんな可愛い! ブサイクは1人もいなかった!」
とはりきりながら言った。
「……認めたくないけど実際その通りだから反論はできないわ」
担任はちょっと悔しそうに言った。その直後に、一度時計を見ると、授業が終わるまであと2分程だった。
「ではセイクリッドアビリティという言葉ができたのはいつからなのか知ってる?」
担任の問いにさっきの女子児童が、
「2011年の1月3日! 日本に来た偉い神父が名付けた!」
と自信満々に言った。
「……牛尾さん。……正解。牛尾さんってセイクリッドアビリティの事になると本当にすごいね」
「そんなの当たり前! セイクリッドアビリティ大好きだから!」
「……では牛尾さん。1つ聞くね?」
「うん」
「セイクリッドアビリティを授かるのは女の子だけということだけど、その女の子が大人になったらセイクリッドアビリティは――」
「無くならない! そのセイクリッドアビリティはもう女の子の物なのだ! 実際、2010年に恋のセイクリッドアビリティを授かった18歳の女の子は28歳になった今でも恋のセイクリッドアビリティを使える!」
「……正解よ」
担任はセイクリッドアビリティの話しになってからやたらと元気なその女子児童に引いてしまった。
「ちなみにセイクリッドアビリティを授かった女の子は色んな人から神様のように扱われて拝まれる事があるの。一方で敬遠されたり恐れられたりする事も少なくないわ。だけど、その事は社会問題になっているの。セイクリッドアビリティがあるとはいえ1人の人間であることには変わりないのだから」
担任が言い終わった時、チャイムが鳴った。授業終了の挨拶をして授業が終わった。
放課後。セイクリッドアビリティの話しをしたことでウキウキしている女子児童の牛尾悠香は、1つ後ろの席に座っている五十嵐灯里に話しかけた。
「灯里はすごく可愛いから近いうちにセイクリッドアビリティを授かるかもね!」
「え~そんな事無いよ~」
「そんな事あるさ! こんな可愛い子を神が逃すわけない!」
「世界中の女の子の中から私が選ばれるなんてあり得ないよ~」
「それは選ばれるフラグだぞ!」
「そうかな~? ん~でもやっぱりあり得な~い」
五十嵐灯里は自身がセイクリッドアビリティを授かるなんて事はあり得ないと思っている。
読んでいただき、ありがとうございました。