橋のある風景 【月夜譚No.133】
澄んだ川面を跨いだ橋は、二つの町を結んでいた。石造りの立派なその橋は、雨の日も雪の日もそこに佇んで、何十年もの間人々を見つめ続けてきた。
もしも橋に意思があったなら、何を思うのだろう。壊れた部分は丁寧に直してもらい、時折乱暴に歩かれることもあったが、二つの町に大切に扱われてきた橋だ。人間のことを悪くは思わないだろう。
しかし、きっと愚かだとは考えていることだろう。
かつて透明な水の中を魚が泳いでいた川は淀み、小魚一匹すら見られなくなった。毎晩休みなく灯された橋の外灯の大半は割れ、陽が暮れるとこの辺りは闇に沈む。
荒廃した景色に、今は人の影はない。
それは些細な衝突だった。それが日増しに大きくなり、最終的には町の間で戦争が起こったのだ。
人間を滅ぼすのは、人間だ。それを目の当たりにした橋は、今もただそこに佇み続けてる。