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ゼロマキナIF -始まらない物語-  作者: Deino
IF8話 真相
41/48

IF8話-02 反アルマ奪還計画

「人に味方するヱレーム、悠久文献に登場する救世主ですから」


 などとのたまい、ウチは腹の中に入った機械を見せる。ネブルの技術では確か人工内臓は作れなったはずだ。脳のみを培養液に入れて生かす技術はあったはずだが、体を全て機械にして脳だけで生きてる人間は今のところ知らない。この躰を見せればウチが人間でないと解るだろう。


 ……人間に味方するヱレーム。ぶっちゃけ現時点では自分がヱレームという確信は無いが、救世主伝説になぞらえるならその方が説明が楽なので仮にそう名乗っておいた。よほどヱレームに詳しく無い限り、ヱレームとそれ以外の機械の区別なんて外見ただけじゃつかないだろうし。ましてやアルヴィスは陸羽志望の軍学徒だ。縁の無いアルマに住む機械なんて、授業でもそんな習わないだろう。


「ウチと取引しましょう?」


 腹から血を滴らせながら、ウチはアルヴィスに問う。あの自信家のアルヴィスが顔を驚愕にゆがめてる様は正直ちょっと面白い。



「ヱレー……ム?」


「そうですが?」


「……!」


「無駄ですよ」


 とっさに端末に手を伸ばすアルヴィスだが、ウチはフィラメンタに入ってブロックする。本格的に機械の中に入ったのでウチの躰は一旦地面にこけるが……。強化外骨格にしててよかったね。傷一つないや。


「な、何だ?! 何で動かない!」


「……よいしょっと。まぁこんな感じでウチ、周囲にある機械をある程度操れるんですよね。ヱレームの電子汚染って知ってるでしょ? あれの応用です」


「なっ……!」


 嘘八百であるが、電子汚染がフィラメンタに関係してる可能性もあるので完全に嘘でも無いかもしれない。現時点で『シーエという存在がヱレームである』とアルヴィスに確証を持たせることが重要だ。


「てなわけでその端末は一時的に使用不可にさせて頂きました。あと自動扉も、電源を切ったんで簡単には入れません。この部屋にはウチとアル、二人きりですよ」


 軍学徒の宿舎のドアは自動ドアである。『軍人にプライバシーは無い』がネブルの軍全体の方針なので、扉は人が前に立つと自動で開くようになっているし、鍵をかける事も出来ない。

 ……自慰中の軍学徒が他人に目撃されるという悲劇が毎年男女ともに起きるが、まぁそこも含めて自身のプライドを消して行けって方針なんだろう。ウチがもし、ただの人間で普通の部屋に住んでたなら、堂々と自慰してルームメイトに怒られてたんだろうなぁ。



「ウチに攻撃の意思はありません。あったら最初から動いてるでしょう?」


「……何が、目的なんだよ」


「良い話を持ってきたんですよ。その上で取引しましょ?」


 ウチは彼の前にディスクとタブレットを出す。


「この映像を見て、素直な感想を教えて下さい。おそらくは、貴方に有意義なものとなるはずです」



   * * *



 ウチが持って来た映像はこっそりと録画したもの。エムジと戦うヱレーム、そしてアルマ上にてヱレームを触るだけで行動不能にするウチの二つだ。

 他にも映像は多数あるが、中にはバニ様が映っているものもある。アルヴィスが味方と判断出来るまでは見せる事は出来ない。


 そしてこの二つの映像、勉強不足な軍学徒なら見ても特に何かを感じる事は出来ないだろう。この映像からウチの有用性が解るくらい頭が良いのか、彼を試す意味でも映像の種類は絞らせてもらっている。



「……」



 アルヴィスは食い入るように画面を見つめている。もちろんウチへの警戒は解かずにだが。


「……ねぇ」


「何です?」


 見終わったアルヴィスが顔を驚愕にゆがめながら質問してくる。今日はアルの変顔を沢山見れて楽しいなぁ。


「聞きたい事? が山ほどあるんだけど……。まず一個目の映像、あれってクロムシェルの中だよね?」


「そうですよ」


「……何でヱレームが動いてるの?」


 おお! やっぱアルヴィス行けてるじゃん! 陸羽志望なのにそこにしっかり目が付けられるなんて。


「……まだ詳しい話は解ってませんが、実はクロムシェル内にて活動出来るヱレームが増えて来てるらしいんですよね。その映像はウチがたまたま出会った個体です」


 他の個体にはまだ出会って無いが、過去の映像でエムジが言っていたので恐らく沢山いるのだろう。


「クロムシェルは、ネットワーク端子を通さない……だからネブルは安全なはずじゃ……」


「残念ながらその安全神話は今や不確定なものになりましたね。だって──」




 現にここに動くヱレームが立ってるじゃないですか。




 そう、ウチは告げた。アルヴィスの顔は青ざめる。


「き、君は何なんだ」


「だから救世主ですよ。悠久文献に出てくる。ルーツは不明ですね……多数のヱレームとの戦闘で一度記憶ドライブをぶっ壊されて、昔の事覚えてないんですわ」


「そんな、突拍子もない話……」


「今のウチを見てもそう言えます? あ、もっと肉裂いて機械見せましょうか?」


「いや、いや良い。大丈夫だ。こんな映像も見せられたし、タブレットも汚染された。それにこれ以上僕の部屋が汚れても困る」


「あぁそれはごめんなさい。後でルームメイトさんにも謝っといてください」


「いや血だまりとか何て説明すればいいか解らないから僕が掃除するよ……」


「ならウチも手伝います!」


「……頭痛くなって来た」



 眉間を抑えてうなるアルヴィス。ウチへの警戒は少しは解いてくれたかな?



「質問を変える。最初の映像の中で電子汚染が直っていた様に思えたけど、あれは何?」


「ウチの能力です。ヱレームに汚染された機械を浄化できる」


「わーお、それはアンビリィバボゥ。じゃあ二つ目の動画で、君が振れただけでヱレームを止めていたのも?」


「お、そこに気づくとは流石ですね」


「街抗志望じゃないからどれがネットワーク端末なのかは解んないけど、ヱレームが表面撫でただけで止まる機械じゃないってのは知ってるよ」


 アルヴィス、頭良いだけじゃなくて勉強熱心でもあるな。デメリットは性格が悪い事だけか?



「それは凄い。んで話題戻しますけど、それもウチの能力ですね。ネットワーク端末を破壊しなくてもヱレームを止められる。まだ仮説段階ですが、ヱレームの電子汚染とネットワーク端子はほぼ同じものなんじゃないかってウチ考えてて、それを遮断、浄化するシステムがウチにはあるみたいです」


「何でそんな事が?」


「これもまだ解りません。予想なんですけど、たぶんウチはどっかの集落で改造されたヱレームだと思うんですよね。奴らが使う端子やら汚染やらを逆転できるように。んでたぶんその集落は滅んで、以降ウチは色んな集落を守りつつ転々としてきたと。それが各集落の文献に記載されて、悠久文献としてネブルに伝わった」


「改造されたヱレーム……君はさっきからまるでヒトリディアムみたいに流調に喋ってるけど……ヱレームに知能ってあるの?」


「……どう、思います?」


 質問に質問で返しながら、ウチは腹の手当てを開始する。別に傷ついてて行動に支障が出る訳では無いが、血だらけだと廊下で目立つし。とりあえず包帯で巻いておこう。あれ、予想以上に血出るなコレ。床見たら血だまりだよ。どうみても事件じゃん。



「僕は『ヱレームには知能が無い』って授業で教わったんだけどなぁ」


「じゃあ目の前にいるウチは何でしょうね?」


「君だけじゃないよ。映像の中のヱレームも何か言ってたじゃん。理解できなかったけど、あれは言語だ」


「……流石。頭良い人は好きですよ」


 腹の手当てを終え、床の掃除をしながらウチはアルヴィスの回答に満足していた。


「んでどう見ます? 今の状況」


「ヱレームが床を拭いているというシュールな状況をかい?」


「お、冗談言う元気出て来ましたね」


「冗談でも言わないとやってられないさ」


 アルヴィスはふぅとため息をつき、続ける。


「状況は最悪だよ。クロムシェルで動くヱレーム。こんなのいたらネブルの安全神話もズタボロだ。民衆が知ればパニックが起きるし、正直僕も怖いよ」


「直ぐにネブルにやって来るって事は無いと思いますよ。その集落アルマに近い位置ですし。……でも確実に端子は届かない位置ですけどね」


「ならアルマとの距離はあまり関係無いじゃない。端子無しで自立活動が出来るなら、深く潜っていればいずれネブルに来てもおかしくない」


「その通り。たぶん今もクロムシェル内をうろついているヱレームはいるでしょうね」


 ウチは掃除を終え、アルヴィスに向き合う。


「そこで、ウチの出番だ」



 さぁ、アルヴィスを味方に引き込むぞ。



「君の出番?」


「そ、だってウチ、救世主ですよ? 電子汚染を浄化出来て、触るだけでヱレームを止められる」


「ちょっと待って。それはつまり、ヱレームと戦うって事かな?」


「そうですが?」


「いやいやいや! それはまずい」


 再び青ざめるアルヴィス。そりゃ彼にとってはそうだろうね。


「この情報が街抗の手にでも渡ったら、それこそネブルの危機を理由にアルマ奪還とか騒ぎかねない。民衆も賛同してしまう」


「街抗は客寄せパンダで人気者ですからね」


「クロムシェルにヱレームがいるってだけで脅威の情報なのに、それに対抗できる手段があるなんて……僕ら保守派には状況が厳しすぎる」


「……保守派の目指す世界は何です?」


「何も起きない事だよ!!!」



 アルヴィスは声を大にして主張する。



「ネブルはネブルのままで、種礼序列に従って秩序ある生活をして、何の不安要素も無く、存続する事だ」


「この箱庭の中で一生を終える事ですね」


「そうだよ! 僕らはネブルで産まれたんだ。それの何が悪い! なんで、ワザワザ危険な外の世界なんて目指すんだよ!! 糞! 今まではうまく行ってたのに……」


 アルヴィスの思う存続とウチの思う存続は若干異なるだろう。彼は正統血種でクロマタクト。ネブルを統べる人種だ。約束された安寧の生活。それを脅かされることを恐れている。

 対してウチは命と愛。種礼序列や差別なんかどうだっていいけど、人が死ぬのは怖い。別れが、怖い。それが起きるくらいなら、このまま存続が望ましい。だから──



「だからこそ、ウチの出番ですよ」



 そう、彼に再び言い聞かせた。



   * * *



 アルヴィスに語った内容を端的にまとめると、『ウチが革命派の道具にならずに、保守派の道具になる』という案だ。

 ヱレームはクロムシェル内をうろついているが、現状の情報だと集団での活動はなさそうだ。アロイジウスもボロボロだったし、ネブルに入ってきても大した戦力ではない。そこへウチが駆けつけ、指先で撫でれば全て解決。周囲の汚染された機材も元通りというものだ。


 もちろんこの案は未来永劫続くものではない。いつかたまたま大量のヱレームが来たりして守り切れなくもなるだろうが……少なくとも学長が計画しているアルマ奪還計画よりも死ぬ人の数は抑えられる。

 あっちの計画は成功すればアルマ手に入るだろうが、そもそも成功するビジョンが見えないからなぁ。


「君が、ネブルを守る?」


「記憶には無いのですが、そもそもウチは各集落を守ってたっぽいんですよね。他の集落はネブルみたいに生活水準が高く無かったからアルマ目指すしかな無かったっぽいですが……。ここなら、安定した生活が送れます」


「確かに、君がいてくれればヱレームが入ってきても安全ではあるが……。でも君が裏切らないという保証は? そもそも君はなんで軍学徒を演じている?」


 お、今そこに気が付いたか。いやまぁ情報が多すぎてパニクるよね普通。

 今のところアルヴィスは変に喚き散らしてもいないし、結構信頼出来る。次のステップに進んでもいいかもしれない。


「それについては、この映像を」


 バニ様がエムジを発見してから、学長が計画を発案するまでの映像を見せた。バニ様が映ってしまっているが、ここまで来たらしょうがない。何とか言いくるめよう。


「御劔学長と、真屡丹研究室長も、グル……」


「革命派は既に動き出してますね。ウチも先日のアルマ事件までは、計画に乗せられて革命への準備をしてました」


 正確には頭痛で思考が変わったのだが、その辺はめんどくさいので割愛。


「このままだと、あと数年で革命派の計画が実行される……僕らの知らぬ間に」


「まだ『民衆が下りられない理由』とやらは決まって無いのでどうなるかは解りませんが……動画に出て来た虚灯うらかしなる集団がウチは怖い」


「君は……さっきから話を聞いてるととても彼等の仲間には見えないね」


「今のウチはバリバリの保守派ですからね。ネブルを安全に。これを理念に行動してます。ので、彼ら革命派が怖いんですよ。まぁ、アルの仲間だね、思考的には」


「仲間……。君が裏切らないという保証は、植え付けられた記憶か……」


「そう。ウチは先日まで自分の事をヒトリディアムと思ってましたからね。ネブルには好きな人も沢山いますし、ここを裏切る事は無い。悠久文献も良かったら読んでみて下さいよ。救世主が裏切った記述はどこにもありませんから」


「なるほどね。大体は解ったよ。そこで疑問なんだけど、君は最初僕に、良い話を持って来たって言ったよね? 今のところ悪い話ばかりなんだけど」


「おやおやそうですか? これらの情報を使って、アルに出来る事、ありませんか?」


 アルヴィスは少し考えた後



「君をそのまま上に渡して、革命派の動きを止める? 保守派内での僕の株もあがりそうだ」


「それ冗談で言ってるでしょう。だって──にやけてますよ?」


「バレた?」


 アルヴィスは既に気が付いている。ウチがこの話を持って来たことのメリットを。良いねぇ。


「一応ウチを上に受け渡す案に対しての反対はしておこうかな? 保守派としてはその選択肢もありでしょうが……。革命派の切り札であるウチを奪ってしまえば、それが一番の打撃になるでしょうし。でもウチは簡単に逃げれますよ? ウチは機械だ。動力は電気。そんなもんクロムシェルからいくらでも取り放題だ」


 ウチは両手を広げておどけてみせる。どうもアルヴィスが相手だとこういう動きが素で出てくるな。相手に合わせて行動が変わるタイプの人種なのかウチは。人じゃないけど。


(エムジの前でのウチは、いつもいじられたばかりだったよな)


 もっと早く知っていれば、気が付いていれば、頭痛が来ていれば、エムジと話し合ってネブルに留まる選択も出来たろうに。



「あとウチ、人の見た目してますけどバチクソ機械なんで正直強いですよ? 実技成績一位の理由は実はこれだったんですよねぇ。……ウチを捕まえるのは難易度が高い」


 思考を切り替える目的でウチはアルヴィスに向き直る。


「つまり君を捕まえると言ったら強行突破で逃げていくと」


「場合によってはアルを殺す事も出来る」


 アルヴィスにも友人や家族がいるだろうし、殺しはしないけどね。まぁ本気で取り押さえに来たら骨の何本か折るくらいはする。


「いやーそれは怖いねぇ。僕は自分が傷つくのが嫌いなんだ」


「ウチだってそうですよ」


「自分で腹切り裂いておいて?」


「ああ痛覚オフにしてるんで、特に問題無いです」


「……本当に機械なんだね。あまりに自然だから違和感が仕事してくれないよ」


「それも学長達の作戦でしょうね。人にしか見えない機械なら、民衆の賛同も得やすい」


「その通りだねぇ。まんまと策略にやられてるよ」


 アルヴィスはため息をつき、ベッドに腰かけた。行動からだんだんと警戒心が無くなってきている。



「んじゃ、君を利用させてもらおうかな」


「……どうやって?」



 いいぞいいぞ。アルヴィスの真意が聞ける。ここで語るアルヴィスの話がウチの考えてる事と似てるなら……彼は味方になりえる。



「君と言う、革命派の切り札を逆利用して……革命派をつぶす」


「……」


 ウチは感激で息を吸い込む。呼吸の必要は無いが人に擬態するために着いた機能だ。自然とこういうしぐさは出るのだろう。


「やりましょう」


 ウチは立ち上がり、手を差し出す。


「計画を止めて下さい。ネブルのために」



 ──愛する人たちの、ために。



「それよりもネブルを守るヒーローになりませんか?」


「ヒーロー?」


 ウチがいようといなかろうと、ネブルの危機に変わりはない。ヱレームは動くのだから。

 でもウチがいえれば、救世主がいれば、ネブルを守ることが出来る。侵入するヱレームを倒せる。ウチの事は置いておいても、クロムシェルで動くヱレームの話は十七委員会は無視できないと思う。

 学長はこの情報を元に、交渉を仕掛ける気だ。



「具体的な案を聞きたいな」


「保守派、陸羽側から十七委員会にコンタクトを取って、ネブルの危険とウチの有用性をアピールする。ついでに学長の危険な計画の阻止もね? その手助けをして下さい」


「僕のメリットは?」


「そんなもん、考えなくてもいくらでもあるでしょう?」


 邪悪に笑うアルヴィスは、答える事無く立ち上がった。



 陸羽にネブルの危機を報告した実績、アルマ奪還計画という危ないであろう計画、その情報を軍監査警察に報告した実績。それだけでもアルヴィスの陸羽就任後の地位は約束される。

 それにウチが十七委員会と繋がるのであれば、アルヴィスをさらに高い地位に置く事も可能だろう。これは捕らぬ狸の皮算用だが……しかし実際有能だった場合はそれ相応の見返りを出してあげないと可哀想だ。



「しかし十七委員会となると、一介の軍学徒の僕には荷が重いな」


「そこはクロマタクトの力で何とかして下さいよ」


「無茶言うなぁ。でもまぁ、やってみる価値はあるだろうね」


「そうそう。アルの陸羽就任後の地位に影響するんだから頑張って下さいよ? あそうだ。今話した内容、ウチが救世主って件も含めてもし情報を扱う際は慎重に。場合によってはウチが保守派に破壊されかねない」


「僕の出世がかかってるってだけで、保守派全体としては面倒事は避けたいはずだからね。君という革命派の切り札なんか知ったら真っ先に壊しにくるだろうね」


「もちろんその時は逃げますけど……そうなるとアルにとっては美味しい話じゃなくなるでしょ? ので、出来る限り最小の人数で十七委員会とコンタクトを取りたい」


「難しいなぁ」


 腕を組み悩むアルヴィス。実際一介の軍学徒には難しい内容だろう。例えクロマタクトの一員であろうと、彼はまだ若い。

 とはいえ、政界にパイプがありそうな知り合いはアルヴィスしかいないのも現状の事実だ。



「とりあえずコンタクトの件は今後引き続き考えるとして、まずは学長の計画の詳細が知りたいね」


「実はまだ学長とは詳しく話してないから、話したら共有しますね。とりあえずウチを主軸とした作戦らしいですが」


「いくら救世主がいようと、ネブルの機械への悪感情は凄いよ? 仮に学長が十七委員会に話したとしても通るとは思えない。まぁ君ヒトリディアムにしか見えないから、そこはクリアしてるんだろうけど」


「そ。だからウチに偽の記憶を入れて、人間社会に溶け込ませたわけ。さっきも話したけど。人と共に生活出来るよアピールですね。計算外だったのはウチが保守派になったことかな」


「あはは。それは笑えるね。でも悪感情はそれで薄まるとしても、それでも本腰いれてアルマ奪還に民衆が賛成するとは思えない。映像で真屡丹研究室も言ってたね」


「ですね。だから何か降りられない理由を作るみたいです。それが怖いんだよなぁ」


 学長、ネブルの危機を利用する様な発言してたし。ただでさえアルマへ出向くとか反対なのに、ネブルに危機が及ぶとかたまったもんじゃない。


「ともかく、学長と話したらまた連絡します。……以後、一緒に頑張りましょう。アル」


「……よろしく。超外来種の救世主マドモアゼル



 ウチらは握手を交わす。小規模ながら最初の反アルマ奪還計画のメンバーが誕生した瞬間だった。

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