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ゼロマキナIF -始まらない物語-  作者: Deino
IF8話 真相
40/48

IF8話-01 事の始まり

「どういう経緯か説明してちょうだい!!!!」


 研究室に戻るなり、いきなり壁ドンされるウチ。異性に壁ドンされるのは普通なら嬉しいが、生憎相手がバニ様だと萌えられない。


「えと、ウチはミカヌーを迎えに来まして……」


「全部話すまで返さないわよ??」


「ウチはそれでも大丈夫だけど、バニ様人間でしょ? 睡眠必要じゃ……」


「イライラが凄すぎて寝れたもんじゃないわ! せめて事の経緯だけでも説明しなさい! 全て!!」


 あーこれは今夜は帰れそうに無い。セロルちゃんの花壇に水あげるために研究室に立ち寄ったのだが……今日の水やりはミカヌーに任せるしかなさそうだ。


「バ、バニ様室長殿、私はどうしたら……?」


「ミカイヌちゃんにはなんの罪もないわ。今日は返ってゆっくり寝なさい。……アタシはこの糞裏切りビッチをとっちめてから寝るから」


「け、結構話が長くなるよ? 大丈夫バニ様?」


「そう思うなら早く話し始めなさい。寝不足はアタシのお肌にも響くわ」


 うむ。やはりこれは逃げられない。ウチはミカヌーに挨拶をしつつ水やりを頼み、バニ様へと向き合った。セロルちゃんごめんね。明日はウチも水やりやるから。あと亡くなった同期の皆、今度お墓に謝りに行くよ。君達が本気で目指してたアルマ行き、ウチ潰しちゃったから。



「うーんと、じゃあ順を追って説明していくな。まずは……そう、3年前のあの日、バニ様の第二研究室で映像を見た日の夜からだ」


 ウチは語りだす。この三年で起きた事を。ウチが裏で進めていた計画の全貌を。さぁ、種明かしの時間だ。



   * * *



【三年前】


 バニ様達の映像を見たウチは、素直に虚灯うらかしに恐怖を感じていた。虚灯と言うよりも御劔学長か……まだ組織の全容は解って無いが、悪い予感がする。

 ネブルにとって良くないことがおきそうな、多く人が死にそうな、何かが。


(これを今夜するのは、ある意味賭けだよな……)


 ウチはある人物に通話をしようと、タブレットを握っていた。正直迷いもある。まだ御劔学長から話を聞いてない現状で、彼にこの話を振ってもいいのだろうか?

 そもそも彼は信用出来るか? 頭は良さそうだが、ウチやバニ様の情報を与えて悪用される可能性も……


(その時は、最悪クロムシェルに逃げるか)


 相手の反応次第で、対処は変えればいい。最初はバニ様の情報は出さず、ウチが救世主というネタだけで攻めてみよう。話が通じるヤツなら、今後情報を小出しにして虚灯もとい、アルマ奪還計画阻止への協力者になってもらえばいいのだ。


(あの計画は、無謀すぎる)


 内容が楽観的すぎる。ウチに電子汚染を浄化出来る能力があるとはいえ、数億のヱレーム相手に機都奪還とか正気の沙汰ではない。十中八九失敗するし、死者も大量に出る。


(エムジも、もういないし)


 バニ様はエムジの戦闘用外骨格を作っていた。エムジは普通の機械だから単品では汚染されてしまうが、ウチが触れれば汚染は回復する。記憶には無いがこれまで年月が解らない程の長い期間、一緒にヱレームと戦って来たのだ。その相棒が、貴重な戦力が無い今、アルマ奪還計画の成功率はビデオ撮影時よりも低い。


(アルマを手に入れて、不安の無い世界で暮らすのがエムジの夢だったみたいだが……)


 そのエムジはもう、いない。そんな世界で長生きして、アルマを手に入れて、ウチに何のメリットがあるんだ。エムジといられれば、それでよかったのに。それだけで、ウチは生きられたのに。


(まずは、通話かな)


 夜遅いから出てくれるかは不明だが、とりあえずかけてみよう。頼む、ウチの味方になってくれよ? ……アルヴィス。



   * * *



挿絵(By みてみん)



 深夜の自室。ウチはタブレットをオンラインにして、電話を掛ける。




 プルルルル──プルルルル──




「ども。夜分遅くすみません。起きてました?」


『寝てたよ。何? 非常識な外来種だね』


「ごめんなさい。いやーアナタが恋しくなっちゃって。近いうちに会えません?」


『こんな夜中に愛の相談? 勘弁してよ。僕は忙しいんだよ。……それとも、何か別の話でも? 逃げ出した外来種さん』


「あぁ、ウチが逃げた話知ってたんですね……。いやーお恥ずかしい。どうせ喜々として調べてたんでしょう」


『人聞きが悪いなぁ。でも正解。ホント面白かったよ。街抗のあの事件。君は逃げて正解だね。どう? 一人生き残った気分』


「最悪ですね。最悪だからこそ、アナタに会わなくてはいけない」


『話が見えないね。単刀直入に言ってよ』


「……察せないですか?」


『……君は僕に、役に立つと言ったね』


「はい」


『その君が、僕に会いたがってる。しかも内容をぼかして』


「はい」


『聞かれちゃ悪い話題で、なおかつ僕の役に立つ情報を持ってる?』


「流石、その通りです」


『……明日の《黎》、僕の部屋においでよ』


「有り難うございます。明日って……もう日付変わっちゃってますけど、葬儀の夜で大丈夫です?」


『そそ。言い方悪かったねごめんごめん』


「いえいえ、ややこしっすよねそのへん。ではその日に」



 プツリ。プープー……



 通話は滞りなく終了した。明日は……もう明日じゃないけど、朝になったら葬儀に行って、夜は約束のイベントだ。


 ……アルヴィス、やっぱり頭良いな。この端末は最悪盗聴されている可能性もある。フィラメンタに入って確認はしたものの、全てを見られた訳では無い。確信的な内容は口に出さない方が良いだろう。


「あとは、彼が味方に付いてくれるか……」


 機械の躰、救世主であるという事実を、保守派の彼がどう受け止めるか。そこが問題だ。



   * * *



【同日 葬儀後】


「やぁいらっしゃい、外来種のお嬢さん?」


挿絵(By みてみん)


 ウチはアルヴィスの部屋を訪ねた。相変わらず人を馬鹿にしたような口調で話しかけてくるが、お嬢さん呼ばわりは何か嬉しいので喜びに胸をゆだねておこう。



 ……虚灯は危険だ。そう直感が告げている。まだ御劔学長に会ってない段階でこの話をアルヴィスにするのも賭けではあったが、動くなら早い方が良い。この考えは1日では変わらなかった。

 最悪虚灯の計画が完璧なものだったとしても、どうしても街抗に死者は出るだろう。そして悲しむ人も……。誰かが死ねば誰かが悲しむ。これは完全なるウチのワガママとエゴだが、もう死者を見たいくないのだ。


 その思いは、本日の葬儀で確信へと変わった。大勢の悲しむ家族や友人。アルマ奪還作戦など実行したら死者はこの比では済まないだろう。


(ミカヌーのお母さんの意見が、正しい)


 名誉などいらない。お金もいらない。ただ生きてくれてるだけで良い。そう言って泣きながら我が子を抱きしめる母の姿は、ウチの脳裏から離れない。失った記憶の中でも、そういったシーンを沢山見て来た気がした。

 ただ、愛する人と一緒にいられる幸せを。ウチは、それを望む。だからこそ、今日、この場でアルヴィスが必要なのだ。



「きのうといい今日といい、夜遅くにすみませんね」


「いやいや気にしないでよ。──だって、僕に特に何かを持ってきてくれたんでしょう?」


 期待で目を輝かせるアルヴィス。それは決して無邪気な物ではなく、むしろ邪気しかない歪んだものだが。


(監視カメラや盗聴器はなさそうだな……)


 眼前のアルヴィスと会話しながら、軽くフィラメンタに入って確認する。機械は光るのでそういった類のものを探しやすいのは良い事だ。便利だねフィラメンタ。

 アルヴィスはいくらクロマタクトの一員と言えど、ここではただの軍学徒。特別な待遇を受けている訳では無い様だ。


「同室の方は不在で?」


「そうそう。僕の配慮に感謝してほしいな。まだ何も聞いてないけど、たぶん二人きりの方が良い話でしょう? あ、盗聴器とかは付けて無いから安心してね」


 軍学徒校は宿舎制だ。二人で一つの部屋を共有して使っている。ウチはバニ様のはからい……もといそう言う設定で学長が用意した特殊な寝床を使ってるので一人部屋だが、普通はそうはいかない。


「ご配慮有り難うございます。あとで同室の方にもお礼言っておいてください。盗聴器無いのは確認済みなんで大丈夫ですよ」


「……?」


 不思議な顔をするアルヴィス。今の一言でウチへの警戒度が上がった様だ。よしよし。臆病さと頭の良さはウチの求めるレベルに達している。後はウチと言う存在がどう転ぶか……


「ウチが持ってきた話題ですが……プラスになるかマイナスになるかはアル、貴方次第ですよ」


「僕次第?」


「そう。だって──」


 そう言いながらウチは上着を脱ぎ去り、上裸になる。


「まってまって露出狂さん。そりゃ僕も男だけど、別にそういうの見せられてもうれしく無いし、そんな事のために……な……???」


「……っん」



 流ちょうに喋っていたアルヴィスの目が驚愕に見開かれる。ウチは上着を脱ぎ、そして……手に持っていた刃物で自身の腹を突き刺した。


「何、して……」


「それは見てのお楽しみ」


 ウチは突き刺したナイフをそのまま上にスライドする。痛覚オフに出来る躰にしてもらってよかったぜ。

 ナイフはウチの本体を覆っている生きた皮膚と肉を裂いて行き、次第に無い分言隠れていたものをさらけ出す。あぁこれもある意味露出だななんて思うけど、残念ながら性的興奮は無い。

 ただ、アルヴィスには興奮……もとい信じられないものが見えた様で。



「……!!!」


「部屋に入った時、ウチを外来種と呼びましたね? 正解です。大正解。だってウチは──」



 肉を裂いて出て来た機械の部品を見せながら、ウチは告げる。



「人に味方するヱレーム、悠久文献に登場する救世主ですから」



 傷からしたたり落ちた血が、アルヴィスの部屋を汚した。

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