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その09:俺の親友たちの理解力がマジ高すぎて42

「おう、ソウイチ。準備はできてるぞ?ほれ、これが鍵」

「助かります、ジンさん」


ヒュンと飛んできた上の階の鍵をキャッチすると、打ち合わせしてるジンさんの邪魔にならないようさっさと上の階へ向う。


「ソーさん、俺ら挨拶せんでええの?」

「あー…いや、終わったあとにしようか」


声を掛けようと思ったがジンさんは俺に忙しいからあとにしろと言うハンドサインをもらったので終わったあとに挨拶しようと皆には伝えておいた。


ビルの階段を上がって行くと2階、3階は練習出来るスタジオと機材置き場がある。4階以降はジンさん、ヨルさんのプライベートなエリア?になっておりジンさん曰く、家に置いとくと面倒くさい貰い物とかを置いているらしい。


閑話休題。


「何も言っていないのに必要な楽器が全て準備されて置いてある…」

「ソーさん、ここになんか書き置きがあったぞ?」


ハカセがチューニングが必要なものがあるか機材チェックして回ってる俺にヨルさんのと思われる書き置きを渡してくれた。


「えっと…何何?…ドラムはソウイチ君の友達でバンド組むならきっとあの可愛らしい子でしょ?一応、軽く体格に合わせたつもりなのだけど…見ておいてもらえるかしら?」


マジか、ヨルさんエスパーかよ…

先程決めたばかりのパートを言い当てられて戦慄している俺はミコトにドラムの椅子に座るよう促し、スネア、ハイハット、タム、シンバルと打点チェックをしてみた。


「…調整はいらなさそうだな…」

「うん、なんか地味に一回り小さい?し、全部無理なく手が届きそうだよ…」

「ヨルさんやべぇな…」

「俺もそう思うよ…」


そんなこんなで意外と時間の掛かる準備が一瞬で終わったので早速、とテンポ良くどういった曲が書いてある設計図…つまり楽譜をみんなに配り初める。


「と言ってもコード譜なんだが…」

「「コード譜?」」

「簡単に言うと、基本的な和音と歌詞が書いてある楽譜なんだが…五線譜、タブ譜と違って楽器ごとのメロディーは書けてないんだよ…」

「なるほど…まぁ、ぶっちゃけ譜面の通りやってくれって言われてもできる気はしないしな…」

「確かに…ハカセの言う通りかも…」

「でソーさん、コード譜?はどうやって読むの?」

「まぁ、とりあえずいま渡してるのがコード付なんだが…まずは見てもらえるかな?」


そういって、俺は渡しきった譜面を読んでもらうよう促した。


「…わお、なかなかストレートな歌詞だね」

「でも…むしろこっちの方が良いのかもな、ソーさんらしいし」

「へぇ…これ、よく見たらこことここで韻を踏んでるのかな?…この上に付いてるアルファベットは??」

「そう、これがコード譜の肝で歌詞や間奏のコード、要はどの和音を弾くかって言うのが書いてるんだよ」


歌詞の品評を軽く受けながら、簡単にコード譜の読み方をレクチャーする。

話を進めやすくコーちゃんが質問をくれるので大分やりやすい。

そんな事を考えていたらハカセからも質問が飛んできた。


「これだと情報少なすぎねーか?誰が使うんよ?」

「確かに少ないね。これは俺の認識だけど、コード譜は基本的にメロディーが既に頭の中にある作曲者とか弾き語りやるギターリスト、皆と一緒に作曲するスタイルのバンドが草案として持ってくるイメージがあるな」


因みに、今回の場合は最初と最後の例が近い。

あと、個人的には実力不足で五線譜などに起こせる時間を取れなかったのもある…


とにかく、物は試しと実際にこの譜面をどう見るのか説明する。


「とりあえず軽くやって見るな?まず、上のこのコードはギターで弾くとこう、ついでにキーボードで弾くと確か…こうだな」


たららん、たららんと別の楽器で同じ和音を出す。

和音の聴感テストの様にシンプルに発音したそれはまだメロディーになっておらず皆が首を傾げ続きを促される。


「…まぁ、これだとまだ曲にすらなってない。ギターの弾き語りの場合このコード譜を見ながらこうやって弾く」


おお、と先ほどのコードの流れと演奏が繋がったのか感嘆符が3人の口から漏れるのを聴く。

どうやら感触は悪くないようで少しホッとする。


「そんでもって…ここの歌詞を一緒に歌うと…」

「「「ッッ!?」」」


3人の目がカッっと開かれる、ヤベェ…声、大きすぎたかな?

とりあえず切りのいいフレーズで切り上げて纏める事にした。


「…と、言う感…」

「「「ちょっと待って!なんで止めるの!?」」」

「え、どういう事!?」


今度は俺が驚く事になった。

え、マジでどういう事だ?


「いや、気持ちがめっちゃ入っててスッゲー良かったぞ!?」

「と言うか後からなんかキラキラした物が出てきたように幻視してしまったよ…」

「ソーさん、これは歌詞の文法とかそういう話じゃないね…」


えっと…コーちゃん、ミコト、ハカセの順で言ってることを要約すると、文法どうとかじゃなくてキラキラした物が出るぐらいスッゲー良かったって事?

ほんとに?


「そう言われるとは思わんかったなぁ…」

「僕もこんな事言うとは思わなかったよ…」

「と言うか、弾き語りだけでいいんじゃないか?ってぐらい完成度高いな…」

「だなぁ、ハカセ…自分、これに合わせるとか出来るのだろうか…?」


思った以上に反響が良く、つい顔が緩んでる自分とは裏腹にコーちゃんミコト、ハカセと順に表情が硬くなっていく…

ちょっと待ってくれ、と俺は緩んだ気を引き締めて3人に改めてお願いする。


「…これじゃぁ…自分だけじゃまだ足りないんだ。俺は、3人の持つ「想い」と、自分のい今までを含むこれからを「想い」にして、本気にして形作りたいんだ。だから改めてお願いする…力を貸してほしい」


一瞬訪れる静寂、しかし居心地の良い暖かな空気。

3人は声にならないため息の後


「…なんというか、ソーさんらしいな」

「…こういう所、ソウイチってズルいよね?」

「…でもまぁ、これがソーさんの良い所だと思うぜ?」


と口々に言う。

差し出された拳を軽く合わせてスキンシップしたあと、話を仕切り直す。


「さて、話を戻すけど…要はこの譜面だと基本の和音しか書いてないからこれから皆のレベルに合わせて詰めていく予定…とりあえず今日は実際に合わせられるレベルにまで持っていこうか」

「お、いきなりか!?」

「ソーさん、そんなに簡単にできるの?」

「出来る。…まあ、ミコトは最初だし、コード譜にはドラムの事は書いてないからちょっと大変かもだけど…」

「まあ…基本が出来てれば応用効くんでしょ?最初は少し位ハードでも僕は気にしないよ」

「そう言ってくれると凄い助かる」


先ずはと、基本のエイトビートを教えていく。

ドラムは体の使い方のセンスが問われる楽器なので実は最初のここが1番の鬼門だったりする。

幸いミコトはぎこちないながらも何とかなりそうなので今日、合わせるのに必要な分を簡単に教える。


「え、こんなんでいいの?」

「初日だしね、それにここからもっと複雑にフィルインを複雑にさせたりとかするんだけど…バンドでドラムは重要な大黒柱だ。下手に難しい事より安定して支えてもらえる方が助かる事もあるんだ。」

「なるほどね…」

「ミコトはこれで今のところ何とかなりそうだな…」

「ソーさん、俺は!?」


今日合わせられる最低限まではミコトに教えられたので次は…と見渡すとハカセの輝かせながら迫る様に見る目と合ってしまった。

…うん、ドラムときたら次はベースだな。


「…ベースはドラムと違って音色が存在するからコードの音色と合わせる必要がある。見なきゃいけないのはコード譜で言うところの…ここだね」


そう言って俺は譜面のコードのアルファベットに丸を付ける。


「この小文字のmとか数字の7とかは見なくていいのか?」

「見なくていい…いや、もっとレベルが上がってくれば必要なんだけど…ベースで重要なのは先ずこのルートと言われてるアルファベットなんだ」

「ルート?」

「そう、ルート。先にボケを潰しとくけど2分の1乗の事でもパソコンの管理者権限の事でも無いからね?」

「「くっ!」」


俺がボケたそうなミコトとハカセに釘を指すように言うと、2人は何ともわざとらしく悔しがってみせた。

コーちゃんはどちらかと言うと語源の方の意味で

正しく捉えてくれたらしく、ワンテンポ遅れてああ!と拳の底を掌で叩いた。


「…まあ、コーちゃんの思ってる通りこのルートって言うのはコードの根源…つまり基音の事を指すんだ。それでこのアルファベットは英語表記で、馴染みのある言い方だと…ドレミの事だね」

「ドレミがアルファベットって…A がド、とかそういう意味?」

「ミコト、惜しい!ドはアルファベット表記だとCだからドレミは英語でC D E F G A B Cー♪ってなる」

「「「おおー」」」


俺が持っているギターと合わせながらドレミを言っていくと感覚的にドレミとアルファベットが繋がったのか3人がなるほど、と納得できた表情を浮かべた。


「で…ベースなんだが、基本的にはこのルートの音をなぞっていけば先ずはオッケーかな?具体的にはコイツはこのフレットで…」


そう言って俺はハカセに1音ずつ音をどの弦のどこのフレットで弾くか教えていった。

そしてロックベースの基礎中の基礎とも言える表拍の8拍子で押して行く音を繋がるようタイミングを合図した。


ハカセは少々苦戦しながらも何とか出来るようになったので最後は、とコーちゃんに顔を向ける。


ありがたい事にコーちゃんは備え付けのヘッドフォンに片耳を当ててハカセのベースの音と自分の押した音が合っているかの聴き比べしていた。

これなら、大分話が早い。


「あ、ソーさん?わるぃ、手持ち無沙汰でついキーボードを触ってたよ」

「いやいや!?予習してくれてるのはすげぇ助かるよ!…それでキーボードの場合は大事なのはどちらかと言うと事前の音作りとかなんだよね」

「そうなのか?…と言ってもキーボードは初めてだし、どうして良いか全く分からんぞ?」

「あれ?コーちゃんって楽器経験者?」

「あ、未経験者には違いないぞ!?ソーさん!?…ただまぁ、姉貴がやってる横を見ながら…ちょっとだけ?」


そう言いながらコーちゃんは基本的な指の運指と長調、短調の和音を軽く弾いて見せてくれた。

どうやら五線譜にも多少理解があるらしく、それなら…とコーちゃんには追加でコードの読み方を教える。


とりあえず曲の中のコードの解説について大体終わった頃、ミコトとハカセの練習に一段落付きそうに聞こえたので、今日この後コーちゃんにやってもらおうと思ってる事を伝える。


「まぁ、と言っても白玉、パワーコードなんだけどさ」

「何それ?」

「えっとピアノ的な言い方をすると白玉は全音符の事、パワーコードは5度の音を追加した和音の事かな?あまりピアノっぽくないけどストリングス…オルガンみたいに長い音出る音色だと綺麗に音が重なるんだよ」

「なるほどねぇ…」


そう言いながら俺はコーちゃん音を流して貰いながら基本的なストリングスの様な音色を選択する。

コーちゃんが手間取らなかったのでまだ練習時間は十分ある。


「ソーさん、言ってた所は何とか出来そうだぜ」

「そういえば次、全員揃うのは前日になりそうなんだっけ?」

「あー…確かにそうだね…そしたら今日はできる限り曲の概要が分かるように練習していきたいね」

「勿論そのつもりだよ、と言うか皆理解が早くて滅茶苦茶助かってるよ」


そう言って俺は3人と視線を交わす。

そして、初めに持ってもらったやる気の火がまだ灯っている事に感謝しつつ自分の準備を進める。


今、出来ること、教えられる事は教えた。

これからする事、この場で俺の使命はただ1つ。

セッションを成功させること。つまりは初めてバンドをする3人に楽しんでもらうことだ。


「さあ、合わせようか」


ーー


最高の親友達と行う最初のセッションは誰にも文句を言わせないほど最高のものになった。


残り3日。

42は結構好きなネタなんですけど、よかったら「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」をコピってググって見てください。


それと、ブックマークお願いします。

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