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その08:本気でやるってこういう事、たぶんね?

アルファベットと日本語、英語の組み合わせを模索する。

Gから始めるか、Cはセブンスかセブンスマイナーか…

共鳴音から「想い」の色を決める。

口ずさみ紡いだ声、歌詞、メロディーにギターのフレットをそっと当てて、「想い」の欠片を集めて形にする。

強い気持ちが胸の内から早く出せ!と強く叩き、急がせるが不器用な俺は綺麗に作れず、不自然なステップを刻んでしまっている。


「焦るな…見せたいのは俺の、それ以上でもそれ以下でもない本気だ…このタイムリミットでベストを尽くせ…」


緊張を糧に創り上げていく新しい世界の設計図。

これから一緒に歩んでくれる仲間にだってそれ以上もそれ以下も必要ない。


あの後、自宅に戻った俺は1分1秒が惜しいとばかりに創作活動に没頭していた。

とめどなく溢れる創作意欲を塊にしては削り、また塊にしては削ると言う一進一退な進捗を見せながらただ、その精度を鋭くさせる。


人生の中ででやりたい事、やるべき事、やらないといけない事が一致したこの瞬間はとても貴重で、自分が今生きてるこの瞬間はかけがえのないものだと実感しながら全力に没頭する。


そして気づくと日も落ちており、本日最後の予定の時間に近づいてきた。


「…よし、ジンさんの所へいくか」


作業中のPCを閉じて雑にカバンへ入れて俺は今週最後の予定の何時も通りへ向かった。





「今週休む?なんだソウイチ、風邪でも引いてるようには見えないんだが…?」

「あ、いや…ちょっと…」


何も考えず無責任に今週休みたいと告げた俺にジンさんは割と真剣に心配してくれた。

さて、どう話したもんか…

そう思ってるとヨルさんから助け船がやってきた。

ド直球で。


「あら…この様子だと例の娘の話じゃない?」

「ああ…つまり、女か?」

「いや…ええと…はい…」


仕方ないと、流石に迷惑かけてしまう事になりそうな二人に事情を洗いざらい話すことになった。


「実は…言っていた例の女の子、実は神仏案件の娘だったんですけど…」

「ほう…薄々そうかなと思ってたがやはりなぁ…」

「となると…もしかしてと思う所はあるけど…ソウイチ君?」

「はい…残り時間が少ないそうなんです…で…曲を…作ろうかと…」

「「曲を作る?」」


そういったジンさんとヨルさんはふむと顎に手を当てて考え込む様子を見せた。


え、マジで恥ずかしいんだが…

「女のためにオリソン作るの没頭するんで休みまーす☆」って言ってるってのがバレたんだよな…これ…

え、恥ずかしい…大人にとっちゃ大分非常識に見えるだろうし、何ならパッと見どう見ても痛い子扱いだわ…


…とか考えていたんだが、返ってきた返事はウルトラ友好的な返事だった。


「なるほど…うん、そしたら仕方ないわね?ジン?」

「だな。機材は…使いそうだな。1式、いつ必要だ?」


俺の目をみて一緒にやる仲間がいるのを分かったのかジンさんは約束通り機材を貸すと言ってくれた。

俺は大きく驚いたが、この人達に正直に予定を告げることにした。


「えっと…次の土曜決行予定ですけど…ジンさん、いいんですか?」

「ああ、上手く行ったら彼女とここに呑みにこい。そしたらついでにライブだ」


全く…この二人には敵わないな…

その後、俺は今週最後の何時もの仕事を行い帰路についた。


残り4日。


起きて腹に朝飯を突っ込んでから機能の作業の続きを行う。

昨日、溢れるほど湧いてきたアイディアは一晩置くことで良し悪しのわかる程度に固まった整形物の様に俺の目に映る。


これなら行けると作っていたコードの進行も繋ぎが不自然だったり、難しすぎたりしているので修正を重ねていく。

今日は夕方から3人に曲の概要と何をして欲しいかを言う予定だ。


デモ音源の様な形にしたかったが…流石にその時間は作れないと思う。


「さぁ、あいつ等はなんて言うかな…?」


結局、俺はデモ音源を作ることなく待ち合わせ時間までひたすら曲の制作に没頭していた。




「…で、だ。皆はどの楽器やりたい?」

「ソーさん!俺、バエルやつやりてぇ!」

「うーん…僕的には基本が出来てれば応用効きそうなやつだとありがたいかな?」

「んー…その前にソーさん、今回の曲ってどの構成でやろうとしてるの??」


講義が終わった空き教室で練習する前に何を使いたいかと聞いてみたところ、三者三様な答えが返ってきた。

とりあえず答えやすいコーちゃんの質問から答えてみる。


「特に強い楽器の要望がなければ基本的なギター、ベース、キーボード、ドラムで行きたいと思ってるね。理由は、今から教えるとなると俺の触れる楽器位じゃないと何ともならないのと…初心者がいきなり管楽器とかを手入れ込みで使いこなすには時間が足りないからの2点だね」

「なるほど…って、え?ソウイチが全部教えるの?」

「ジンさんとヨルさん?いや、流石にあの二人も存在してない曲を教えるのは難しいと思う…」


ミコトが目を丸くする。

流石に俺が全部やるとは考えて無かったようだ。

…まぁ、あの二人ならできるかもしれないけど。


「その中で1番動くやつは?」

「ギターかベースかな?ただ、時間的にギターはキツイかも…」

「お、そしたらベースか!ちょっと頑張ってみるかっ!」


1番最初から乗る気だったハカセはパートを決めるのも1番早かった。

今回は時間が無いため、俺がギターをやるとして…キーボードとドラム、二人にはどちらをやってもらうべきか…


「コーちゃんとミコトはどうする?ドラムはもし、続けて何曲やるにしてもセッティングとかやる事はそう変わらないと思うし、キーボードは楽譜やセッティングを覚えれば後は動きとしてはそこまでハードじゃない…と思うかな?」

「それならソウイチ、僕はドラムの方やらせてもらおうかな?ドラムは応用効きそうな感じっぽいし」

「それなら自分はキーボードかな?ソーさんの言う通りなら楽譜を読み込めってことなんでしょう?」

「その通りだわ、ただコーちゃん、今回はスマンだけど直接演奏を教える形になっちゃうわ」

「まぁ、仕方ないよ、また楽しみにしてるな?」

「サンキュー、コーちゃん」


言われて見れば確かにと言う形で2人とも、不満なくパートを決める事ができた。

パートはバンドを行う上で揉めることの多い話題と周りからよく聞くので続けられれば気をつけていこうと俺は小さく心に誓った。

パートを決められたところでハカセが続きを促し始めた。


「…そしたらソーさん、次はいよいよ?」

「ああ、練習だ。一応、ジンさんが使ってる機材管理兼練習場所を聞いているから、そこに行こうかと言っても同じビルの別のフロアだけど」

「何時もの店って訳じゃないのか?」

「ハカセ…流石に演奏未経験者がステージで初練習はハードル高すぎるよ…」

「確かに…一理あるかもしれんな…」

「いや、一理どころの騒ぎじゃないでしょ…?」


いつもの様なじゃれ合いで、しかし目的に真摯な3人を見て俺はつい、笑みを溢した。

肩の力を抜いて、目的だけに狙いを定めて。

人よってはあり得ないと思うかもしれないがきっと全力ってこういう事なんだと思う。

皆が乗る気である事を感謝しつつ、俺達はジンさんの店に向かうのであった。

多分、主人公は地味に超人。


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