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その03:奇跡パワー微レ存論ってすげー名前だよな

「今日はあの楽器は持ってきていないようじゃな」

「っっ…!?あ、ああなんとなくね?」


二度目の会遇は突然だった。

あの日から2、3日、雨が降ってある程度道が乾くまで俺は「朝練」に行けていなかった。

本日は雨上がりの休日の昼前。約束?した朝でなく、出会った場所より少し奥で休んでいたため、完全に気を抜いていた。

不意打ち気味に話しかけられて、聞きたかった事がうまく出てこない。

結局、絞り出すように出せたのはたった一つの質問だけだった。


「…なぁ、君にまた会うには俺はどうすれば良い?」

「そうじゃのぅ…おぬしの言っとった「朝練」と言うやつを続けて欲しい…さすればもう少しは…」


すっと通ってきた一筋の風が彼女との会話のタイムリミットと言わんばかりに髪をなでる。

再び彼女は俺の視界から消えた。




「…って言うことがあってなぁ…」

「ソーさんの「朝練」って言ったら…」

「…やっぱり歌的な??」

「マジで?あの気持ち「しか」入ってないシャウトの事?」


再び会った彼女について相談に乗ってもらうべく俺はハカセの家に朝食という名の手土産を持っていって遊びに来ていた。


最近の休日は割とこういう感じで朝からハカセの家にいる事が良くあり、そんときは大体、季節外れのコタツの上にどかっと3人分のテイクアウトのマフィンを置いて部屋の家主を起こす。

その後、その日遊ぶかどうするかとかを聞いたりしてる。

何故3人分かと言うと珠にタイミング良く現れるミコトの分だったりする訳だが…どうやら今回は居たらしく、無駄にはならなかった様だ。いや、無駄にはならないけど。


因みに世界的に有名なハンバーガー屋さんの朝メニュー、めちゃくちゃ好きなんだけど俺だけなのかな?

持ってったときの2人の反応結構薄いから何時も「え、なんでテンション上がらんの?」ってなるんだよね。


「やっほーソーさん、会議ってるねー」


いつもの余裕のある間延びした挨拶をしながら朝食を終えてるコーちゃんもハカセの家にやってきた。

割と、コーちゃんはその辺しっかりしてるよなと思いつつ、挨拶を返そうとしたとき手に持っている紙の束に気づいた。


「おーコーちゃん…その資料何?今日講義あんの??」

「んー?これは、この間ソーさんが言ってたラノベの原作」

「おはよーコーちゃん。それってタコと絡んでる女の人描いてるエロいやつ?」


間にネタを挟むコーちゃんに挨拶がてらのるハカセ。

俺は話が進まなくなりそうなのでおいおいと突っ込みと訂正を入れた。


「違う違う…アレだろ、コーちゃん?この辺の伝聞、伝承ーとかそういうのだろ?」

「ソーさん、正解!まぁ、近しい…と言うか関係ありそうな所は軽くマーカーしておいたからちょっと見てみてよ、ちょっと参考になるかはわからんけど…」

「いやいや、めっちゃ助かるよ。サンキューな?で…どれどれ…」


そう言って俺はコーちゃんから手渡されたコピー用紙を確認する。

ぱっと見、時系列に纏められた伝聞、伝承、記録はこの辺りの超常的な出来事がざっくり羅列されている。流石コーちゃんと思いつつ、いくつかあるマークされたものを確認すると若干失礼かもしれないが直ぐに分かった事があった。


「…あの辺、村があったんだな…」


そう、俺がぼやくと横から覗くハカセとミコトがなるほどと前置きしつつ議論に入ってくれる。


「でも、時代考えたらぎり近代って感じっぽいし…多分、あったとしても山へ芝刈り、川で選択レベルなんじゃねーか?」

「なんの選択だよ?」

「命の選択?」


バーさん物騒だな!?

…と話がそれた。

ただ、やはり資料見るかぎり、獣耳娘がーとか空から女の子がーレベルの奇跡みたいなのは伝承でも存在しないみたいだ。

マークされてるのはリアルで起こりそうな美女が村にやってきた的な事象が書かれていて、この程度の出来事なら昔あった村あれば逆に少し少ない位のラインナップだ。…少ない?


「…なあコーちゃん、これって抜粋してきてこの量なん?」

「いや?元々どこにでもある普通の村っぽかったし、多分こっから増える事はそう無いと思うよ?」


コーちゃんは資料をさっと眺めながらそう言った。

そして俺がコーちゃんに問いただした内容の意図を察したハカセが俺に確認するように質問する。


「あ、何?ソーさん、奇跡パワー微レ存論?」

「そうそうハカセ、微レ存論ワンちゃんあるかなって思って」

「何その頭悪そうな理論」


奇跡パワー微レ存論。勿論これは通称だが、割と的を得ているあだ名だったりする。正しくは「知的生命体による観測点応力論」などと言われている一連の理論は現代物理学に波紋を投げかける理論らしいで端的に言うと「人の気持ちとか「想い」って物理的に微粒子レベルで存在するんじゃね?」っていう内容なのだ。

今でこそある程度受け入れつつあり、現在は実証実験も行われていたりするけど、これが発表された当時は世界を揺るがす出来事だったらしい。


まぁ、詳しいことは今はおいといて…

あまり良くわかってなさそうなコーちゃんとミコトに一言で説明するとしようか。


「要は神仏省案件ってやつ」

「「ああ…つまり何でもありってやつね…」」


自衛隊に次ぐ3大ふだんなにやってるかよくわからない仕事の1つ神仏省は所謂研究機関?に近いものがあるんだけど対象がなんかなんかよくわからん奇跡とかそんなんって事もあってよくこんな感じでネタにされてる。

ジュディに一度何故、なんでもかんでも神仏省の案件にしようとするの?と聞かれたことがあったが「お前んとこで言うエリア51みたいなもんだからだよ」って答えたら矢鱈納得していたので恐らくどこの国にもある話なんだろうなと思う。


とはいえ、何でもありにも何でもありなりに一定のルールみたいなものはある。らしい。

さっき言った微レ存論もそうだが強い「想い」はエネルギーも大きいので極論、執着とかそういうドロッドロしたものの側に奇跡(物理)がキラリみたいな事があることもおかしくない。

ついでに言えば奇跡パワー的なものが溜まったり拡散したりの法則性は解明されておらず…まあ所詮、学生の俺たちは今のところ「あそこ、なんか起こるトコなのかも」としか分からなかったりする。


因みに余談だがギャンブルの場合、「当たれ!いや、むしろ当てる!」という気持ちがいくら強くても大体において「もしかしたら当たらないかも…」という気持ちが同在するので…まぁ、当たらない…らしい?


閑話休題。


「話を戻すけど…今回の場合…「朝練」?」

「んで神仏省案件なら…やっぱり歌なんじゃねーの?それか気持ち「だけ」入ったシャウト?」

「うーん…とりあえずソウイチは続けてみればいいんじゃない?「朝練」」

「そうすっか…」


結論は現状維持というなんとも締まらない結果で幕をおろした朝飯会議は2つの意味で俺の腹に落ちた。

そして今日は何するという議題の無かった会議のあとにあるのは淀みなく準備されたレースゲーム。コイツは俺のバイトの時間までを一気に飛ばす最速のツールだった。


「んじゃー行ってきまー」

「行ってらー」


今まで握っていたコントローラーをハンドルに握り変え、俺は仙人よろしく下界へとバイクを走らせるのであった。

本日更新分です

よければブックマークの方、よろしくお願いいたします。

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