かんわ:あんなところにジンさんがいた理由
次章の前に閑話投稿です!
次章からはゆるくいろんなキャラ出して世界観固めて行きたいです
鋭い金属の当たるような音がまだ少し寒い空の下で響く。
響かせているのは傷を負った獣のような雰囲気を纏った少女と何食わぬ顔で超然としている大柄の男。
幾許かの時が経った後、その場に残るのはに肩で息をする少女と超然としている男性、それと毛並みの違う女性2人だけだった。
「なんじゃ…お主らは」
「いやね、お前と仲良くしてるソウイチのこっちでの保護者みたいなやつだよ」
「そうそう…で、思った通りやっぱりね…ええと…イナリ…さんだったかしら?貴女、ソウイチに嘘の日付を教えたでしょう?」
「…っつつ!?」
「どうやら…その様子だと図星のようね?」
妖艶に微笑む女性と対象的な見るからに満身創痍の少女は好いた男には見せられない驚愕の表情を見せた。
それは最早、嘘ついていると自ら自白するのと同義だった。
男は自ら確認した少女の力の残りと少年の言っていたタイムリミットの引き算の答え合わせを行いながら言葉を紡ぐ。
「なるほどな…女のカンってのも伊達じゃ無いわけだ…」
「別に嘘をつこうがつくまいがワシが消えることは何も変わらん…」
己の戸惑いを振り切るように振った腕は虚空を切る。
なすすべなし、と呟く様にそういった狐耳を拵えた少女は諦観した様子を見せた。
「なるほどね…結局、上手くいかず絶望するソウイチ君を見たくないって訳ね…貴女、ソウイチ君を侮り過ぎなんじゃないかしら?」
「!?」
先程まで薄っすらとした笑みしか浮かべていなかった女性が真剣味を帯びた面を見せる。
完全に虚を突かれた少女は自分が今、ソウイチに対する「想い」を試されている事を理解した。
「…わりいがアイツはやると言ったらやる男だぞ?…ふむ、かなり効率が悪そうだが…」
少女がそう逡巡しているとおもむろに大男が近づき少女に手をかざす。
一拍を置いてから自身に流れ始めた力を感じて少女は驚愕した。
「!?!?!?な、なんじゃ!?」
「お前がここで顕現出来るタイムリミットを1日だけ伸ばした。それでも7日には届かなかったが…アイツの本気を見る時間は稼げたはずだ…」
所詮は気休めだが…と目の前の男が流してきた「想い」の力は途轍もない強さと量だった。
しかし指向性の違う力はかなりの割合で霧散してしまい、男の言うとおり効率が悪く、時間稼ぎにしかならない。
少女は複雑な心境で悪態をつく事しか出来なかった。
「余計な事を…」
「余計な事ついでに少しおめかししましょうかね?次の実体化でボロボロの姿を見せるのは嫌でしょう?」
「そんな事…出来るのか?」
「当たり前よ、私はそのために来たんだから」
そう言って少女と大男についてきた女性二人は奥に続く寝床にもならない小く朽ちた社の方へ向かう。
「…さて、そしたら俺は先走ってこっち来てるがむしゃら少年の足止めでもするかな」
彼女たちを見送った大男はそう呟いて踵を翻した。




