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その11:へい、ガールズ

「…何でここにいるんだ?」

「「面白そうだから??」」


「わりぃ、ソーさん…気付いたら居た…」

「僕らにはこの2人は止められなかったよ…」


先に練習場にいると言われ、向かったジンさんの練習場には何故かジュディとハルカ。

講義が休講だった為、街をぶらついている所にハカセ等がギルドに入っている所を見かけたらしい。

まぁ、まれによくあることだ…仕方ねぇよ…うん。

そんなことを軽く考えながら俺は面白いものは特にないぞ?と言わんばかりに二人に声かける。


「…別にバンドの練習してるだけだぞ?」

「…女の匂いがするわ…」

「何処があの女のハウスよ!?」

「言動がとっちらかり過ぎじゃないか!?ガールズ!?」


数日だが、会っていなかった二人の様子は相変わらずで、俺は少しホッとしながらも全力投球でツッコミを入れる。

が、20歳を超えた自称大人の女性()曰く、俺の様子の変化はお見通しらしい。

…おっと?俺の心読んでそうな顔してるぞー?がーるず?

…般若のお面をとったハルカがあきれ顔で俺を問いただす。


「…で、茶番はここまでにして…さっさと教えなさいよ?10月の学祭に向けた準備じゃないでしょ、これ」

「ま、まあ…?そうかも知れないな…」

「もしかしてこの間、言ってた田舎の子!?素敵、無敵、大正義狐耳!?」

「…ジュディさん、ハウス」

「ミコト!?私犬じゃないよ!?」


少し茶化しながらもド直球に聞いてくる2人はなんながかんだその後ろに気遣いを感じられてありがたく思う。

仕方ないよな…と、俺はジンさんにしたイナリちゃんの現状をハルカ達にもする事にした。


「…と言う訳でわりぃとは思ってんだけど1週間、休ませて貰ってた訳だわ…」

「ナルホドねー」

「…まあ、事情は概ね分かったわ。ただ、話聞く限り明日やるんでしょ?曲はどうなのよ?」


ジュディとハルカはまぁ、納得した様子で俺の話を聞いてくれた。

俺はこういう時の理解力の高い二人はやはり、いい女なんだなと感謝しながらハルカが聞いてきたことにこたえる


「一応、コーちゃんは昨日見て後はリハやって本番。今日はハカセとミコト、3人で練習だね」

「前日練習って奴ね!ちょっと聞きたいな!」

「まだ完璧って訳じゃないからちょっと恥ずかしいなぁ…」


とは言ったものの実は恥ずかしいと言うより…なんとなく、あの歌を他の女性に先に聞かせたく無いって言う所がある。

ぶっちゃけ100%俺のエゴなんだが…


「いいじゃん、減るもんじゃないし」


…確かに。まあ、減るもんじゃないな。

2秒前のエゴを明後日に返納してせっかくだからと2,3フレーズ、現役女子大学生()に聴いてもらうことにした。

…あと、ハルカが感づいてそうなので今度から()を心の中でもつけるのをやめようと思った。

気を取り直して。


「…まあ、それもそうか…ハカセ、ミコト、サビからでええかな?」

「カウントは僕でいい?」

「勿論だぜ、ミコト!」


場数こそ踏んでいないが仲のいい間柄特有の話の速さで魅せる箇所の打ち合わせを行う。

この、空気感をいとしく思いながらミコトのカウントを俺とハカセが待つ。


「OK!いくよ!ワン・ツー・スリー・フォー!!」


張り上げたミコトのカウントからジャストのタイミングで俺とハカセは完璧に一つ目の音符を乗せることができた。

初日、2日目に比べて明らかに複雑なフレーズを滑らかにミスなく演奏してくる二人を横目で見ながら声を張り上げる。

段階をすっ飛ばして一気にファイナルギアまで上げていった勢いをミコト、ハカセ、そしてハルカとジュディにぶつける。


せっかくの練習だから、ここにイナリちゃんがいると思って。

彼女に俺の気持ちが全て、伝わるように。

その一瞬をダイジェストにしてダイレクトに固めた。



「で、どうだった?」


演奏を切りの良いところまで終わらせてとりあえず…と、ひとり足りない80%の制作進捗の出来を目をかっ開いてる2人に聞いてみた。


「すご…」

「ロックンロール…」


ボソリと呟かれた1言2言が突っ走ってきた数日間が間違いでなかったと認めてくれてる証明書の様に感じられて心の中でガッツポーズを取る。

…と思っていたらリアルでもやっている自分に気付く。


「まぁ、悪くなさそうな感触で良かったよ、んで…ハカセとミコト的に次はどの辺り見ときたい?」


握っていない拳をもう片方に添えて取り繕うように方を軽く回しながら俺は練習の続きを提案する。

気持ちの切り替えた2人は貪欲な練習モードに入り


「ここの繋がりがちょっとわかんないからやりたい」や

「最後の終わり方どうするか」などの質問が飛んでくるようになった。


俺達はハルカとジュディにわりい、練習に集中すると断りをいれて再び各々が出来る最後の準備へと没頭するのだった。



残り1日。

明日が本番。

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