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嘘実の魔導人生(ソーサリーライフ)  作者: 纏
第一章 『Knight meets girl』
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プロローグ『~廃村オウリン討伐戦・4~』


 現れたのは黒十字の紋様が施されたローブを纏った男性2人。

 そのうちの1人、黒髪に前髪の一部が銀色に染まったやや目つきの悪い男性が辺りを見回す。


「これは酷いね……」


 黒髪の男に続く形でやや明るめの金髪に碧眼の男性が辺りの凄惨な光景に顔を(しか)める。


 黒髪の男は周辺を確認し終わると、部隊長に顔を合わせる。

 互いに何かを言いたげな表情を見せるが口を開こうとしない。

 代わりに、黒髪の男は金髪の男性の目を見る。


「シャウ。怪我人の治療を頼む。極力、回復薬(ポーション)で。体内魔力(マギア)は温存しておいてくれ」

「了解だ」


 シャウと呼ばれる金髪の青年は身動きが取れない兵士の元へと駆け寄る。


「黒士魔導騎士団の方が態々(わざわざ)、援軍に来てくれるとは……」

 部隊長はそう言うと、黒髪の男の顔を見る。


「ツヴァイス騎士団長……?」


 ツヴァイスと呼ばれる黒髪の青年は部隊長の顔を見る。その目には冷たい闘志のようなものが滾っていた。


「ある筋から聞いたんだ。王都兵士の新入り達が出立時間から2時間も早く出発したとな。だから、急いで追いかけてきたんだよ」


 何かを見透かされているような目に部隊長の額に汗が流れる。


「ギルゴース、話は王都で聞く。まずはここを手伝え。この場を切り抜けないとどうにもならん」


 ツヴァイスは部隊長ことギルゴースにそう言い放つと、ガルムの群れを見る。

 7、8匹のガルムがこちらを睨んでいる。しかし、それよりも厄介なのが……、


「(何を()びやがった…?)」


 ガルムの習性はある程度、理解している。

 奴らは自らが危険な状態になると遠吠えを用いて仲間を呼ぶことがある。

 それが『ガルム』ならまだいい。

 問題なのが『それ以外』を喚んだ時である。


「(一気に片付けるか……)」


 ツヴァイスはローブから全長80cmほどの先端に紫色の宝珠が取り付けられた黒い杖を取り出す。


「時間が惜しい。まとめてかかって来い……!」


 ツヴァイスが吐き捨てるのと同時にガルムの群れはツヴァイスに向かって飛びかかる。


滅魂(フラウロス)!」


 ツヴァイスの呼び掛けに呼応するように杖の先端に紫の炎のようなものが揺れ始める。

 そして、それを1匹のガルムに向かって杖を振るうと、その炎はガルムに真っ直ぐ飛んでいき直撃を果たす。


 ガルムは叫び、炎を振りほどこうとするが決して離れず、ガルムの身体を燃やし続ける。


「呪え(ペイン)……!」


 続けざまにツヴァイスは呪文を唱えると、他のガルムにも同様に、突如として紫の炎を纏い激しく燃え立てる。


 ━━ギャアァァァァァォォ!!!


 痛みと苦しみで響き渡るガルムの叫び声は数分の間続き……肉・骨・臓器を灼き尽くす。

 後に残ったのは、燃えずして地面に残った消し炭のみとなった。

 その消し炭もまた、風により静かに消え失せる。


「すげぇ……」


 思わず息を呑む。自分達があれほど苦戦していたガルムを意図も簡単に(たお)すその姿に……。


「彼はある意味、『異常』だからね」


 シャウは切迫した状況の中でも笑みを崩さない。


「何なんですか、黒士魔導騎士団って?」


 王都にはそれを守護する七つの騎士団が存在する。

 蒼炎・聖炎・紫炎・銀炎・轟炎・金炎・雷炎……それらを総称し『七炎騎士団』と呼称され、王都を守る最強にして民の全てが敬意を評する存在。


 しかし、今聞いた『黒士魔導騎士団』という名前は聞いた事すら無かった。


「まぁ、僕達は『汚れ仕事屋』だから」


 シャウは苦笑いを浮かべながら兵士達の治療を手早く終わらせる。


「キミは騎士志望かな?」

「えっ、いや……その……」


 言えなかった。金がそこそこ入るから志願したなどと。

 この青年と自分とでは生い立ちも生き方も何もかも違う……そんな気がしてならなかった。


「もし、騎士志望なら『黒士魔導騎士団』に入りたいとは絶対に言わない方がいいよ」

「えっ……?」


 シャウは立ち上がり、次の兵士の元へと歩いていく。


「言ったら最後、その場にいる全員から白い目で見られるから」


 爽やかな笑顔には不釣り合いな言葉を言い残して彼は立ち去っていった。


 ◇◆◇

「(さすがは団長の肩書きを持つだけはある……)」


 ガルムの灰燼(かいじん)が舞う中、ギルゴースは前方のツヴァイスを見つめる。


 騎士団の中でも群を抜いて異質。

 任務遂行のためなら、あらゆる手段を講じる男。

 そのため、騎士団の中では一際嫌われている。

 当の本人は全くそんな事を気にしていないようだが……。


 そのツヴァイスは村の奥、木が生い茂るその一点を見つめていた。


「来やがったな」

「何……?」


 ギルゴースも同じ方向を見つめるが何もいない。

 何も……、


「……!!」

 いる……。ガルム、そしてワータイガーとは比較にならない殺気を放ち、木を掻き分け1匹の二足歩行の獣がこちらに歩いてくる。


「あれは……!?」


 ギルゴースの驚きに、ツヴァイスは冷静に彼の者の名を呟いた。


殺人狼(ワーウルフ)……」




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