間章……サーパルティータ帝国本国にて
グロい部分があります……。
飛ばしても大丈夫……(*☻-☻*)です。
多分……うーん?
サーパルティータ帝国……。
現在老齢で、愛妻を亡くした皇帝ツェーザルはだいぶん頑固になっている。
その原因は、目の前にいる長男であり王太子カスパーのスカスカな頭から考え出される、政策でもないただの子供のわがまま。
最愛の正妃との間に生まれたのは多くとも、育ったのはこの阿呆と賢いアーティスのみ。
彼女は賢く、自分の意見を先回りして指示し、人質として受け入れた側室達を束ね、後宮内の面倒を引き受けてくれた。
アーティスは厳しく育ててしまい、術が暴走したりもしたが、成人してからはこの国の為に手を尽くしてくれた。
そして、王妃の血は引いていないが、子供を産んですぐ亡くなった名も忘れた妾妃の遺児のアマーリエが存外賢く、その上に整った顔立ちの自分に似ていたので、もっとマナーや知識を身につければ他国に嫁がせられる。
あの美貌である。
魅せられる者も多いだろう。
そう思っていたのにアーティスは修道士に、アマーリエも聖女としてサーパルティータからアソシアシオンに連れ去られた。
この目の前の妃の父親に似た可愛げのない顔の息子も、アーティスの兄だからそれなりになると期待したが、その逆を行き、その上この馬鹿に跡を継がせてはこの国が滅ぶと、その次の代に期待したが、全くお眼鏡に敵う子はいなかった。
あぁ、アマーリエの息子のアルフレッドはナミアレミアの宰相という位には勿体無い、出来の良い子だった。
この愚息を廃嫡にして、アルフレッドを呼び寄せようか……。
それともアーティスを……。
「何を考えていらっしゃるのですか?父上」
「うるさい、馬鹿者が!」
アーティスに次々と暗殺者を送り込み、それだけでなくアソシアシオンの枢機卿を殺したいと言い出した馬鹿に怒鳴りつける。
「な、何で怒るのですか! あの、エメルランドの枢機卿は、私が妃にしてやると言うと、まるでゴミを見るような目で私を見たのです。この私をですよ!」
「ゴミをゴミと思うのは仕方ないだろう」
「ち、父上まで! 何故そんなことを! 私は悪くありません!」
「ならば、何故、我が国の影……闇の者をわしに黙って使った?」
「私が、父上の次の後継者です!」
馬鹿な考え方をする愚息に、持っていた杖を振り上げ殴りつける。
「あぁぁ! 痛い! 父上! 何で!」
「うるさい! この愚息! 誰か、このクズを自室に謹慎させろ! しばらく言うことを聞くな」
「父上!」
周囲の警備の者が集まってきたその時、急にカスパーの周りに黒い霧のようなものか何かが集まってきた。
「なっ、何だそれは!」
「あぁ。父上。父上が母上の棺に納めていた指輪を頂いたのです」
「何っ!」
妻には苦労をかけた。
自分が死んだら、石室の代々の墓に並べて貰いたいと思っていた。
「そして、母上や代々のご先祖の遺骸を食べて貰い、満足したところで呪いをかけました。アマーリエやアーティスを殺すようにと。その命令を従ってくれたようですね……あ、がががが、がぁぁぁ!」
突然、カスパーの口に黒い霧がどんどん吸い込まれ、そして口が裂け、目が、背中や内臓が飛び出し、腕がボキボキ言いながら変な方向に歪み、人間外の姿に変形していく。
それだけでなく、その体に、妃や両親、祖父母といった先祖の顔が浮かび上がる。
「お前……堕ちたか……」
『堕ちた? 何のことです?』
体が変化していくごとに痛みも薄れてきたのか、嘲笑する。
『ねぇ? 父上。今なら帝位継承権、下さいよ。もうもうろくしてしまったじじいがここにいて良いところじゃねぇっすよ。じゃねぇとわしが、食らっちまいますぜ……』
口を大きく開け、父親を呑み込もうとする。
すると、腕が伸び、息子の口を逆に大きく引きちぎった。
『ぎゃぁぁ! わしの、わしの顔がぁぁ!』
「五月蝿い、クズめが……我が溜め続けてきた力までも、無駄に使いやがって……」
「なっ……」
「この溜め続けた力は、代々のサーパルティータの帝王の力。表向きは精霊信仰と言っていたが、本当は聖なる力を使うアソシアシオンの聖女とは逆の力。アマーリエは母がその信仰を持っていたのだろう。それにアーティスは隔世遺伝……勿体無い。あの力が我と同じものであれば奪い取って完成させたのに……貴様は、まだ少し足りない力を惜しむ我の力を使うとは!」
節くれだった指が、息子の四肢を引きちぎり、右腕を口に運ぶがすぐに吐き出す。
「くっ……不味いな。力もないクズを食らっても意味はないか……」
息子の腕を投げつけ、そして周囲の者に命じる。
「我の力を増やす者を持ってこい。そして、このゴミは牢獄に閉じ込めよ。指輪は我のものだ」
「畏まりました」
目が濁り、機械のように動く護衛達は頭を下げて、四肢のない皇太子を引きずりながら去っていった。
残った一人の侍女は四肢を集めそこから指輪を抜いていくと、皇帝に捧げる。
「よくやった。褒美をとらせる」
と言うと指輪をはめ、そして、侍女に手を伸ばした。
「……ぎゃぁぁ!」
響く悲鳴に、サーパルティータの宮廷は青ざめ静まり返る貴族の姿があったのだった。
逃げてはならない……毎日通い、皇帝にご機嫌伺いを命じられているのだった。




