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受け止める新しい命

 汗をかき、ぐったりしたリリアナの後産を見ている産婆と、労わる女性達。

 そして、おくるみに包まれた丸々とした大きな赤ん坊。


「イザーク殿。男の子ですよ」


 産室から出て、抱いて近づいてきたアルベルティーヌは微笑む。


「大きな声で泣いてますでしょう?」

「ラファエル・ヴァルター……」

「まぁ。素敵なお名前。イザーク殿が考えられたのですか?」

「いえ、この父さんが……」


 アーティスは目を輝かせ、赤ん坊を見つめている。

 嬉しいのと、抱くのが苦手な自覚があるので、赤ん坊の一挙手一投足を見つめているらしい。


「父さん、抱かないんですか?」

「む、むむむ、無理! 赤ちゃん抱っこするより、古書の解読の方が楽……だって、可愛い子を泣かせたくないの! それにもっと大きい子ならいいの! この子は今、生まれたばっかりで、ふにゃふにゃだもん。ヘタッピな僕より、イザーク抱っこしないと!」

「それはそうですね」


 娘には言えなかったが念願の息子。

 抱き上げ頬をつつく。

 すると、反射的に筋肉が緩み笑っているように見える。


「わぁ! 笑ってる……笑ってる! 可愛い!」

「坊っちゃま。叫ばないで下さい。ラファエル坊っちゃまが泣きますよ」


 ジェイクは窘める。


「だって、可愛い……アルフィナもセアラーナも可愛いけど、可愛い! どうしよう! じい。えっと、赤ちゃんとセアラーナやアルフィナに何をあげよう? リリアナにはえっと、緩めのオーガニックコットンの部屋着とか、ラファエルにも産着を百着用意して〜!」

「百着いらない! 父さんはどうして極端なんだ!」

「あっ! セアラーナにも百着! 差別しちゃダメだもんね!」

「違う〜! 父さん。すっ飛びすぎ!」

「じゃあ、アマーリエにも!」


 数を減らせというのを分かってくれない父に脱力する横で、レオンハルトが、


「アーティス様、子供はすぐ大きくなるので、同じサイズだけはやめた方がいいとイザークは言っているみたいですよ。少しずつサイズを変えてみては?」

「えっ? そうだったの?」

「えぇ……そのつもりでした……」

「えへへ……ごめんね。イザーク。ちゃんと聞いてなくて」


頭を掻くアーティスが少年のようで、悪気は全くないのは分かっているので、イザークも笑うしかなかった。




 そして、今度は比較的安産でアマーリエも男の子を出産する。


「……あぁぁ、残念だわ」


 嘆くアマーリエに、バルナバーシュはラファエルよりも少し小さい息子を抱いて、


「どうして? こんなに可愛い子だよ?」

「だって……私に似ちゃうと、お兄様にも似ちゃうのよ! 貴方に似て欲しかったのに!」

「……いや……私より、君に似て欲しいよ。父親としては」


アルフィナを抱いたアルフレッドとキャスリーン、そして、眠るアンネリを抱いたベルンハルドに気が付き手招きする。


「アルフレッド、ベルンハルド、キャスリーン……弟のアルキールだよ」

「アルフィナ。おばあちゃまの赤ちゃんを見てくれないかしら?」


 そっと近づき、バルナバーシュの腕の中の赤ん坊を見る。


「……おとうしゃま……父に、似てゆにょ」

「そうなの?」

「んっ! おとうしゃまにも似てゆにょ。アユフィナ、だいしゅき!」

「良かったですわ。お母様。おめでとうございます。アルキールちゃんですか?」

「えぇ。今度は、キャスリーンの番ね。男の子だったら、キャスリーンに似て欲しいわ」


 赤くした顔を見合わせる息子達に微笑むと、ベルンハルドを見る。


「ベルンハルド? 髪の色と瞳は多分、貴方と一緒だと思うの。忙しいとは思うけれど可愛がってあげてね? 貴方の弟よ」

「……よ、良かった……」


 ベルンハルドは涙を流す。


「母上、お元気で、この子もよく泣いてる。それだけで私は……」

「駄目ねぇ……ベルンハルドは。誰に似たのかしら。この優しい良い子は……」


 微笑むと頭を撫でる。


「私は貴方のお母様よ。そんなに簡単に死なないわ。アルキールをしっかり育てて見せるから。うふふ」

「私も可愛がります……私の弟……」

「ベルンハルド。抱っこしてご覧。本当に可愛い子だよ」


 父親に抱かせて貰った弟は、髪の毛はこれからもっと濃くなるのだろう……明るい赤銅色、肌は白く、顔立ちは父や血の繋がりのない自分やアンネリに似ておらず、母や兄に似ているのだろう。


 でも似ていなくたって、今はもう気にしない。

 自分の両親はバルナバーシュとアマーリエで、兄がアルフレッドなのだから……。

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