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第二枢機卿、旅慣れないので困る。

メリーの職業を女官から侍女に変更しております。

 第二枢機卿は自分の部屋に戻ると、幼なじみ兼侍女のメリーを呼んだ。


「どうなさいましたか? 姫様」

「やめて頂戴。私は、キャスリーンの従姉だけれど、キャスリーンの母君様と私の父が兄妹と言うだけよ。王族の血と言ってもほとんど引いていないでしょう。貴方の方が引いているじゃないの……申し訳ないわ」


 メリーは表情を変えず、


「私の母は、媚薬を使って前王陛下に寵愛を受けただけです。しかも、前王妃様だけを愛しておられた前王陛下を騙し……祖父の言葉に……素直に従った、馬鹿な女です。愚かな女」

「メリー。私は貴方のお母様は優しい方と聞いたわ」

「知恵のある女であればよかったのです。私の命だけでも救って下さった前王妃様と、旦那様を今でも感謝しております」


深々と頭を下げる。


「やめて頂戴。メリー。それに、貴方はもう自由なのよ。私は、貴方を解放してあげたいの」

「姫様に見捨てられたら……私は生きていけません……」

「違うわ、側にいて欲しいけれど、下級侍女のままというのは、酷すぎる。それに自分を追い詰めないで。私は貴方を嫌いじゃないのよ」

「本当ですか?」

「えぇ」


 ホッとしたように微笑む。


「嬉しいです」

「ねぇ。メリー。第1枢機卿の元に行こうと思うの。先にエメルランドの陛下にご連絡をした方がいいのかしら?」

「第1枢機卿閣下ですか? ……やはりエメルランドの陛下にご挨拶がいいと思うのですが」

「そうよねぇ……でも、あの変人は、私が追いかけていると聞くと逃げそうな気がするのよね」

「変人……と言うのは、第1枢機卿閣下ですか?」


 メリーは苦笑する。


 側近として、日々彼女の愚痴を聞かされていた。

 頑固と言うか真面目な主人と、同じような境遇のはずなのに呑気で、大らかな第1枢機卿は水と油なのかもしれないと思っていたのだ。

 でも、理解し合えば元々知識がある者同士、他の身分を盾にあれこれすることはなく下級女官や新しく入ってくる聖女候補の養育を任されていた。


「本当にあの人は、のらりくらりとヌルヌルした魚か蛇のよう。そのまま頭を地面に叩きつけた方がいいのかしら……」

「姫様。私は姫様が人殺しだけは嫌ですわ」

「だって、あの人死にそうにないもの」


 あっさりと告げ、


「いつ行こうかしら。準備ができてからよね?」

「最低数日はお待ち下さいませ」

「分かったわ。どうぞお願いね」


第二枢機卿は微笑んで、メリーを連れ奥に入って行ったのだった。

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