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アルフレッド達の大切なもの

 最近、母アマーリエの体調が良くない……と言うと、病気になったと思われるだろうが、本人によると、


「アルフレッドがお腹にいた時よりも楽よ〜。だってその頃私、まだ10代だったもの」


と真顔で言う。

 アルフレッドには分からないが、女性達によると、


「体ができていない頃の……特に若い女性の出産は難産が多いのよね〜」

「私は身体がしっかりしていたから大丈夫だったけど、アルベルティーヌはセシルを出産する時は少し大変だったわね。でも、アルフ君を出産した時のアマーリエ様は若かったし、難産というより陛下に突き飛ばされて早産だったのよ」


サリサの言葉にギョッとし、フレアはため息をつく。


「私はそれ程身分の高い家ではなかったけれど、陛下とアマーリエ様は同年代でしょう?自分の母君が亡くなって嫁いできた、義母に当たるアマーリエ様が母君を殺した疫病神だと。嫌がらせを散々していたらしいわ」

「そんなはずはないのにね。バカはバカだわ」


 サリサは豪快に笑うが、すぐに真顔になり、


「だから私が呼ばれたのよ。元々私は辺境で過ごすつもりだったの。でも、妊娠中の隣国出身の王妃様が、何物かに襲われて怪我をされて早産よ? しかも行ってみたら王子が義母に乱暴したってありえないわね。私は幼くとも公爵家の娘。身元はしっかりしているし、それに武器も持てるからよね。カーティスとのお見合い話があるのは知っていたけれど、そんなに乗り気じゃなかったのよね。でも、事件を聞いて、即、父に言われてアマーリエ様の元に出向いたの。フレアもいたわ」

「私達は子供だったけれど、空気が異様だったわね。現在の陛下派とアマーリエ様派に二分された宮廷。アマーリエ様は本当に愛らしい方なのに、青ざめて震えていたわ」

「カーティスのお父上がすぐに安全な所でと、教会のある自分の屋敷に預かることにしたのよ。早産したアルフレッドくんは小さくて泣かないし、お母様やミーナ殿が交代で見ていたわ。アマーリエさまは怪我をされていて、出産後の肥立ちが悪かったから」


聞いたことのなかった自分の生まれた時の話に、青ざめる。


「でも、今は大丈夫なのよ」


 アマーリエは夫のバルナバーシュに腕を絡め、微笑む。


「朝がちょっとだけ気持ちが悪い位で、つわりよつわり」

「と言いながら、食べなくなるんだから、少しは食べてくれないかな?」

「だって……あっ! そうだったわ! ベルンハルドの誕生日が10日後なの! どうしましょう! 20歳よ! 何を贈りましょう?」

「私はもう決めましたよ。アルフィナと選びました。それにアルフィナはもう一つって作ったんだよね?」

「あい! ハユおにいしゃまにあげましゅ!」

「えぇぇぇ! 作ったの? すごいわ。何を?」


 アマーリエは孫に問いかける。


「えっと……フェリシアおねえしゃまにおしょわったでしゅ」


 ポケットを探り、紐で作った何かを見せる。

 大きさはガタガタだが、くさり編みに何かを通している。


「こりぇは、んっと、おとうしゃま、これはおじいしゃまでしゅ」

「えっ! お父様に?」

「あい。んっと、フェリシアおねえしゃまがおしぇーてくえました。守り石でしゅ」

「それより、これはアルフィナが編んだの?」

「……下手でごめんなしゃい」


 フェリシアに編み棒を持たせて貰ったが、幼い為どうしても編めず、すると、体の不自由な人が指を動かす練習の為に指で編む方法を教わった。

 そして、一所懸命父や祖父に作ったのである。


「どうして? すごいじゃない! お父さんは嬉しいよ!」


 アルフィナが頑張って編んだと分かる、努力の跡。

 最初は一目が大きく、時々目が細かくなったり、でもそれはアルフィナが必死に作ってくれたと解る跡。

 それが本当に胸が熱くなる程嬉しい。

 紐の先を結び、石との間にもう一つ結び首にかけると、


「どう? 似合うでしょ? うわぁ、娘に貰った初めてのプレゼント! サリサ姉上、フレア姉上見て下さい!」

「まぁ。本当に素敵よ! 糸はもしかして魔法の糸ね。だって、珍しい色だわ」

「本当。アルくん似合ってるわ。アルフィナ、本当に素敵なプレゼントをお父さんに贈ったのね」


二人は声をかける。

 アルフィナは頬を赤くして、


「えと……おばあしゃまやおかあしゃま達にも……ちゅくりたかったの。でもむじゅかしいにょ……だから」


ポシェットからテーブルに広げる。

 それは、フェリシアと作ったらしい金具は用意されていて、それに石やレース、リボンをつけるもので、


「んっと、こりぇが、おばあしゃま。おじいしゃまとおしょろい。こりぇが、りーしゃおかあしゃま、レアおかあしゃま、ベユおかあしゃま」


小さな石と布の花、リボンを金具に貼り付けて作られた髪飾りに目を輝かせる。


「まぁぁ! 私達にも?」

「嬉しい!」


 喜ぶ二人に、アマーリエは孫に差し出された髪飾りを見て、ボロボロと涙を流す。


「お、おばあしゃま? 嫌にゃ? ちゅくりなおしゅね!」


 オロオロする孫に何度も首を振り、胸に抱きしめる。


「ありがとう……アルフィナ。おばあちゃまが昔、本当に欲しかった髪飾りにそっくりで、嬉しかったの。おばあちゃまは小さい頃に、おばあちゃまのお母様が亡くなって、数人の人以外は誰も見てくれなくて……こんな素敵なものだって……」

「おばあちゃまにゃかないで、アユフィナ、おばあちゃまに可愛い飾りいっぱいちゅくゆ! にゃかや……」

「ありがとう。アルフィナ。あなたは私の可愛い孫よ」





 10日後のベルンハルドの誕生日は、アルフレッドとアルフィナが一緒に筆記用具一式に、アルフィナが父や祖父母に贈ったプレゼントを贈った。

 ベルンハルドは、姪が一目一目頑張って編んで作ってくれたペンダントを、とても気に入り、


「ありがとう。アルフィナ。本当に嬉しい! こんなに心がこもったプレゼントを貰えるなんて、幸せだよ」


と抱き上げ、お礼の頬のキスをする。

 嬉しがるアルフィナの様子に、家族は微笑んで見守るのだった。

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