今日は皆にとって大切な記念日。
しばらく国王や、教会の様子を見守っていたある日、今日は父のアルフレッドとお昼寝をして目を覚ましたアルフィナが、
「おとうしゃま、お誕生日ってなんでしゅか?」
と聞いた。
アルフィナは、舌ったらずだが約4歳だろうという事で皆で認識していたのだが、戸籍には簡単に自分の娘として残していたのだが、誕生日を忘れていた。
実際、生まれた日が分からない。
それはアルフィナにとって残念なことである。
「えっと、誕生日は人が生まれた日だよ。お父さんは7月生まれ。お祖母様は9月生まれ」
「アユフィナはなんがちゅ生まれでしゅか?」
「うーん、何月かなぁ……おじいちゃんに聞いてみようか?」
「あい!」
娘の手を引いて……余りにも甘やかすので、体力不足になるとラインハルトに怒られ、我慢できないというまで歩かせるように言われるようになった……アルフレッドは家族の居間に向かい義父に声をかける。
今度、簡単な結婚パーティをする両親は、幸せそうに今日はお互いの身につけるブーケに、ドレスなどを選んでいる。
「父上、母上。それにベルンハルド……」
「おじいしゃま、おばあしゃま、おにいしゃま」
「おや、よく来たね。私達の可愛い姫君」
バルナバーシュは婚約者のアマーリエと孫のアルフィナを溺愛し、昔の冷たい面影はない。
しかし、二人がいないと機嫌が悪くなる。
いや、心底つまらなそうになるのである。
今、最愛の恋人と孫の前では見る影もない。
「おじいしゃま、あにょね? アユフィナのお誕生日いつでしゅか?」
「えっ?」
硬直するバルナバーシュを見て、アルフィナは目に涙をためる。
「お、おとうしゃま、お誕生日あゆのに、アユフィナ……ないでしゅか?」
「そ、そんなことはないよ。ちょっと待って、今は……何年だい?」
「聖暦1579年6月7日が今日ですよ」
「……聖暦っていうのが私には解らないんだ!」
ベルンハルドの言葉にぼやくバルナバーシュに、
「父上はどんな暦だったんですか?」
「私の時代にはヒジュラ暦、ツォルキン、ヴィクラム、他にダリアン暦かな……私はダリアン暦74年16月9日生まれで、確か、今日は閏年の589年の17月77日……」
「計算があいませんよ?父上?」
「難しいんだよ。月の満ち欠けに、古代宗教が混ざっているからね。月に30日もあれば、77日もある。だから、えっと、一番近い魂の息吹を感じたのは、587年、閏月18月30日だったと思う」
「自信満々ですね」
父親を見ると、ニコニコと笑う。
「私のいた封じられた場所の近くに、代々の当主が来るんだ。報告に……新しい命が生まれたことを。そのことだけが私には幸せで……それを祝福するのが嬉しくて。だから覚えてた。えと、この日付をどうにかしてあげられないかな……」
「……セシルとケルト、ルシアン兄上にでもお願いします。そうして、アルフィナの誕生日をお祝いしてあげたいので」
「おとうしゃま、ほんと? アユフィナ、お誕生日おめれとーしてくえりゅ?」
「あぁ、抱っこして、皆でワイワイお祝いしようね」
アルフィナは嬉しそうに抱きつく。
「おとうしゃま、おじいしゃま……みんなだいしゅきでしゅ!」
その後、暦を持ってルシアンの元に行くと、すぐに計算をして貰い、聖暦1574年12月30日ということが分かったのだった。
年明けにアルフィナを引き取ったので、仕方がないとはいえ、誕生日がすでに半年近く過ぎてしまったことに後悔したアルフレッドは、家族たちに相談し、両親の結婚パーティの前に、アルフィナの為に誕生パーティを開いたのだった。
余り新しい服や、飾りは欲しがらない娘に、可愛いドレスに髪飾りをつけ、当日まで内緒にしておいたので、会場にエスコートすると、扉が開いた瞬間、
「アルフィナ! お誕生日おめでとう!」
と一斉にお祝いの言葉を投げかけ、エスコートしてくれた父や祖父母達に、目に一杯の涙を溜め、
「お、おとうしゃま、あいがとう! だいしゅき! おばあしゃま、おじいしゃま、みんにゃ、だいしゅき!」
と抱きつくと、一人一人の頰にキスをした。
「アルフィナ。貴方にプレゼントなのよ? 開けてみて」
フェリシアの言葉に開けると、目を輝かせる。
「ミーちゃんのお洋服でしゅ! アユフィナとおしょろいでしゅ!」
「可愛いでしょう? きっと似合うと思って作ったのよ」
「あいがとうでしゅ! おねえしゃま!」
その日はお酒は控えめに、可愛い姪や妹が喜ぶようにお菓子やパンを用意して楽しんだのだった。




