【番外編】ところでこちらは……
ところで……
「えっと……フレドリック……この方、じゃないこの人は?」
「あれ? 知らなかったか? 騎士団長ラインハルトおじさんの長男で、俺の従弟のセシル」
「……えっ? お前に従兄弟いたの?」
「いるわっ。一応、父方は女ばっかり。ラインハルトおじさんは母の弟。セシルには弟がいて、それがユール」
「……あっ! 思い出した! 超美形、天才、武術も際立って才能のある子? ……良いなぁ。俺はそんなに才能ないし、分けて欲しい……」
ぼやく細身だが年長の青年に、セシルは、
「えっと、ベルンハルドさんですよね? あの……」
「あ、喧嘩しないよ? 俺、勝てない喧嘩は買わないし、面倒でしょ? お互い痛いもんね」
「……フレドリック兄上……」
「だから言ってるだろ? お前もズレてるが、こいつも貴族にしては変わり者なんだ」
セシルの頭をポンポン叩くと、
「えっとな、ハルド。この前、アルフィナに絵本を読んでやったんだろ? そうしたら、セシルが、アルフィナに自分も絵本を読んであげたいと言うか……何で俺が、こんな仲介しなきゃならないんだか……」
溜め息を吐くと、答える。
「つまり、セシルはアルフィナを可愛がりたいんだが、男兄弟の上に、騎士の一族で、領地に留まる母上とも会うこともそんなになくて、どうすればいいのか教えてくれだそうだ」
「え、絵本?」
真剣に年下の少年は頷く。
「ど、どうしても、上手く説明できなくて! 難しい言葉を使ってしまうんです! でも、アルフィナは『あい!』『おにいしゃまはとってもしゅごいのでしゅ。賢いのでしゅ、しょんけいしゅゆのでしゅ!』って言われて……もうちょっと分かりやすく説明したいなって……」
ひどく落ち込むセシルに、ベルンハルドは、
「と言うか、アルフィナは4歳にしては賢すぎるよ。難しいことは知っていても、逆に相応の年の子供の遊びを知らないんじゃないかな? ほら、追いかけっことか、おままごととか」
「……おままごと知らない……」
「それは男兄弟だからだろ。俺もフェリシアが遊んでって言うまで知らなかったぞ」
フレドリックが遠い目をする。
「姉貴どもは、男より男らしい。お人形遊びとかおままごとなんて、可愛い遊びはしない!」
「フレドリック兄上も知らないのですか……」
「一応知ってる。でも、フェリシアがしてることが気になって手を出すので、最後にフェリシアが泣いて泣いて、ユールとケルトに殴られる」
おっとりしたフェリシアとせかせか兄達……かなりの地獄絵図だっただろう。
「えっと……じゃぁ、こう言うのどう?」
ベルンハルドは提案する。
フェリシア達に手伝ってもらって、絵本の登場人物のぬいぐるみを作ってもらい、そのお人形を動かして見せながら絵本を読む。
「下手でもいいんだよ。ぬいぐるみをが見つからなかったら、一緒に探してって探したらいいし、あまり気負いすぎもダメだよ」
「よっし! 頑張る。ありがとう兄さん!」
「どういたしまして」
それからセシルはアマーリエ達に手伝ってもらいぬいぐるみを作ると、それと絵本を読みながら動かしアルフィナは大喜びしたのだった。




