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マナーレッスンはむじゅかしいでしゅ。

 アルフィナは、ゆっくりとお辞儀をするフェリシアの動きを真似ようとするのだが、体が左右に揺れ、ヨタヨタっとするその身体を、ビシッと言うよりガシッとセシルが何度も支えてくれる。

 セシルには本当にありがたいが、フェリシアは上品に出来るのに、どうして自分はこんなのだろうと涙目になる。


「焦らなくていいんだよ? アルフィナはまだ4歳だから、こんにちはでいいの」


 アルフレッドは優しく頭を撫でる。


「でも、おとうしゃま、おはようごじゃいましゅ、ってちゃんとごあしゃちゅしたいでしゅ。あいがとうごじゃいましゅって、こにょ、おしゃべり、おとうしゃまとちあうでしゅ」


 抱きつき訴える。


「おねえしゃまみたいに、きえいなおはにゃししたい、赤ちゃんみたいでしゅ」

「赤ちゃん? 誰に言われたの?」


 ハッとしたように口を閉ざすと首を振る。


「怒らないから言って?」

「や、でしゅ。言った子にょおかあしゃんがやめしゃしぇやえるの……あっ!」


 素直なアルフィナは答えてしまう。


 実は、ケルトの弟のヨルムと同年代で、この屋敷に働く者たちの子供達の中でリーダー格の少年がいる。

 その子供は素早く小回りが利くのだが、それ以上に気になるのが、他の子供達にお金を渡し、ちょっとした買い物をしてきてほしいと頼むのだが、少し多めに渡しておいたのにジョンの元には頼んだものしか届かず、その上その子供は必ずどこか怪我をしていると言う。


 ガイが調べたところ、その少年が子供達について行ってやると恩を売るように言い、ついていくとお釣りを全部奪い取るのだと言う。

 ちなみに、その子供の両親が共にこの屋敷に働いており、余り親子共々素行も働きが良くないとイーリアスが不満を漏らしていた。

 その上、この屋敷の名前で物を持って来させるのも月に数回あり、いつ現場を押さえようかと思っているらしい。


 少し考えたアルフレッドは、


「えっとね? アルフィナ。これからお父様とお出かけして、それであるお店でお買い物をして欲しいんだ。お買い物解る?」

「あい!」

「でね? お父様のペン軸と、お祖母様の本に挟むしおりを買って欲しいんだけど、出来るかな?」

「あい、できましゅ! んっと、ペン軸としおりでしゅね? 覚えましたでしゅ」

「じゃぁ、お金を持ってくるからね? 待っててね?」


とセシルに預け隣室に向かう。


 ベルを鳴らし、イーリアスと自分の執事のガイの父ジョンを呼び、説明すると、すぐに眉間にしわを寄せた。




「……お嬢様はまだ4歳です。反対です」


 ガイがまだ結婚していない為、内孫のいないジョンは、好々爺とした表情を怒りに変えている。

 ジョンにとってアルフィナは主人の娘であり、自分の孫同然である。


「だが、お嬢様がそれを見つけたら、お嬢様の周囲の評価が上がり、逆にお嬢様が不安そうな顔も減るのではないのか?」


 兄の一言にウッとくる。


「で、ですが、お嬢様はまだ4歳です。まだ甘えていい、私達がいるからと……甘えさせてあげたいんです」

「それは一つの案だ。だが、お嬢様はこの家の惣領姫だ。その存在として自分で考えるべきであり、動くことも必要になる。突き放す訳ではないが成長を促すべきだ」

「それが早いんです! あと半年は……」

「じーじ?」


 扉が薄く開き、顔を覗かせている。


「ジョンじーじ。怒っちゃめーなの。ニコニコがいいの」


 トコトコ入っていくと、


「アルフィナね?お買い物行くの。でね? 今度はじーじに手帳買うの!」


ジョンに抱きつく。

 ジョンをもう一人の祖父と思い、甘えるようになったアルフィナである。


「だかやね? じーじ、アルフィナがんばゆからね? かえったやいい子いい子してね?」


 ニコニコと笑う主人の愛くるしさに堕ちる家令一家だった。

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