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愚王は魔女と悪女に翻弄される。

 愛人の国王の元に走っていったパルミラは気がついていなかった。

 今までなら、定位置に近衛がおり、パルミラの護衛もいたのだが誰もいない。

 それも気づかず走っていく。


「陛下! 陛下! どちらにおいでですか?」


 国王の私室に向かうが、何故か艶っぽい声が響いた。


「あぁん、陛下……ダメですわ……」

「構わん、構わん……」

「パルミラが、いらっしゃるのに……」

「あの女も、他の男とよろしくやっておる……ふんっ、何が愛しておるだ。わしは、あやつから何もかも奪いたかっただけだ。金と宝石とドレス程度で釣れるような下民を、誰が欲しいか……それよりも、そなたのように……」


 クククッ……

 ウフフ……


と、忍び笑いが聞こえる。


 一瞬立ち止まるが、パルミラは即歩き出した。

 そして、蹴破るようにして扉を開く。


 その部屋は国王の私室で、ベッドでは国王と、国王付きの女官が服をはだけ、よろしくやっている。

 硬直し寵姫を見る2人に、髪をかきあげニッコリ微笑む。


「あらあら、陛下。どうなさいましたの?」

「パ、パルミラ……」

「金と宝石とドレス程度で釣れるような……でしたかしら?」

「そ、それは……」

「わ、私、仕事が残っておりましたわ! し、失礼致します!」


 胸元を慌てて隠し、横を通り抜けていこうとする女官のドレスの裾を、パルミラは体重をかけて踏みしめる。

 ビリリッと高い音と共に、ドレスのスカート部分が裂ける。


「きゃぁぁ! な、何をされるのですか! パルミラ……さま」

「あらあら。泥棒ガラスが、何をギャーギャー言っているのかしら。私、カラスじゃありませんから、何をいっているのか聞こえませんわぁ」

「何ですって! このババァ!」


 女官は怒鳴りつけるのと一緒に、手を伸ばしてきて髪を掴む。


「私は侯爵家の娘よ! 私が子供を産んだら、次の王にしてくれると陛下はおっしゃったわ! 貴方のように年増の尻軽女の子供より、私の子供が次の王になるに決まっているじゃないの!」

「はっ! 何が尻軽! あんたこそアルフレッドだけじゃなく、外交官のフレドリック、騎士団長の息子のセシルにまでコナかけて全滅してた癖に。それに知ってんだからね! 陛下のことをジジイって言ってたそうね。ジジイはすぐ果てる。こちらがいい思いなんてする間もないって」

「何だと!」

「な、何を……わ、私はそんなこと言っておりませんわ! 陛下、信じて下さいませ!」

「信じるも何も、あんただってもうすでに行き遅れのババア。でも、その性格で同性にも嫌われてるそうじゃないの」


 手をねじり、外させると突き飛ばす。


「ふんっ、誰も彼も悪女だと私を言うけれどね? あんたのように同僚の宝石を盗んだり、脅して金を巻き上げたりなんてしないわよ。侯爵令嬢あんたの手の悪さは有名ですものね。私は、前の夫の家から持ってきたのを返したし、陛下以外からお金や宝石は貰っちゃいない。あんたは他人から盗む……ふふふっ……知ってるんだから、伯爵家の……」

「貸してくれただけよ!」

「ふんっ! 嘘つき」


 せせら笑う。


「私が侍女や女官全員に嫌われていると思うんじゃないわよ。私より嫌われてんのはあんたよ。オホホホ、今、どっかの下級の貴族といい仲じゃない。その男、元はある侍女の恋人で、子供ができたって言ってその男をしれっと奪ったそうじゃない……あははは! 陛下に言ったの? 陛下の子供じゃない子供を、陛下の血を引く子供だって言った……あらあら、私だって言えないわ〜」

「そ、そんな事は……」

「あぁ、本当に王子があの状態になったのを、いいタイミングだと思ったの〜? タイミングが良かったのね〜」

「……へ、陛下信じて下さいませ! わ、私は……」


 涙ぐみ、国王を見る。

 すると、ニッコリと微笑みを浮かべたパルミラは、


「陛下? 約束をお忘れですの?」

「……っ!」

「私は約束しましたわよね? 私は、陛下のご迷惑になりたくありませんから、無理に子供はいりません。堕胎薬を飲んでも構いません。代わりに私のことは……」


寵姫の瞳に怖気付いたように、


「パ、パルミラを信じておる。この女の子供は……わしの子ではない」

「な、何でですか、陛下! 信じて下さいませ! 私の子供は陛下の子供ですわ! 嘘ではありません! その証拠に……」

「……例え、陛下の子供だったとしても、他の男と噂があるだけで駄目よね、あははは!」

「あ、あんたに言われたくないわ! 悪女! 淫婦いんぷ! 売女ばいた! 魔女!」


その叫びに、手を伸ばし服を引きちぎった。


「きゃぁぁ!」

「ふんっ、あんたに、悪女って呼ばれ続けるのも不快だわ。あんたに進呈するわ」


 もう一度引っ張り、ズタズタに引き裂くと、


「泥棒猫! もう二度と陛下に近寄らないことね。ついでに、あんたの噂をばらまいてあげるから安心しな!」


腕を掴み、そのまま扉に向かうと、


「ほら出て行け! この尻軽女!」


と放り出したのだった。

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