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アルフィナとフェリシア

 アルフィナは父に連れられ、皆の集まる食堂に行き昼食を終えた後、フェリシアやその母サリサや、ケルトの母フレアと共にお話をしていた。

 アルフィナにはホットミルク、他の皆には紅茶が用意され、お菓子も置かれていた。

 フレアとフェリシアは刺繍、サリサは編み物をしていて、フレアの次男のヨルムはアルフィナよりも年上で、アルフィナの知らないことばかり話すのをすごいなぁと思っていたが、


「アルフィナは何か知ってる?」


と言われ、首を傾ける。


 自分が何も知らない事を、自分が理解している。

 しかし、ふと思い出す。


「えっと、セシルおにいしゃまが、リュシアンおじしゃまに借りた本に書いてたでしゅ。『インマヌエル1世陛下は、息子のバルナバーシュ猊下を逃がそうとしたが、娘婿クヌートの計略により息子を捕らえられ、それを脅され命を絶った。バルナバーシュ猊下の妻は子供を差し出し命乞いをし、その子供たちは代々罪人の処刑人として生かされることになった。クヌートは大罪人である。最初の奥方であるインマヌエル1世陛下の娘を、離縁幽閉し、すぐにバルナバーシュ猊下の妻を妻にして、生まれた次男を次の王としようとした。しかし、その行いは神は許さなかった。次男は親の罪を被り生き絶えた。次に生まれた息子達も幼くして逝った。最初の奥方であるインマヌエル1世の娘は夫によって偽りの聖女として振舞う事を強要されていたが、後に、毎日父と弟の行方不明とその家族の事を祈り続け、自分の命と引き換えにクヌート夫婦に永遠の時を繰り返す罪を与えて貰った。跡はインマヌエル1世の嫡孫である長男が継いだ。その後、ごく稀に愚かな行為を行う王族を神が罰する事を、《クヌートの罪》と言う』って書いてました」

「は?」

「んっと、『インマヌエル1世陛下』は……」

「それは分かってる。それより、さっき言ったことは……何で読めるんだ?」

「『インマヌエル1世陛下は、息子のバルナバーシュ猊下を逃がそうとしたが、娘婿クヌートの計略により息子を捕らえられ、それを脅され命を絶った。バルナバーシュ猊下の妻は子供を差し出し命乞いをし、その子供たちは代々罪人の処刑人として生かされることになった。クヌートは大罪人である。最初の奥方であるインマヌエル1世陛下の娘を、離縁幽閉し、すぐにバルナバーシュ猊下の妻を妻にして、生まれた次男を次の王としようとした。しかし、その行いは神は許さなかった。次男は親の罪を被り生き絶えた。次に生まれた息子達も幼くして逝った。最初の奥方であるインマヌエル1世の娘は夫によって偽りの聖女として振舞う事を強要されていたが、後に、毎日父と弟の行方不明とその家族の事を祈り続け、自分の命と引き換えにクヌート夫婦に永遠の時を繰り返す罪を与えて貰った。跡はインマヌエル1世の嫡孫である長男が継いだ。その後、ごく稀に愚かな行為を行う王族を神が罰する事を、《クヌートの罪》と言う』でしゅか? しゅんでいたお家に本があって、父が読んでくれたでしゅ……えと、変でしゅか?」


 周囲を見るとシンっと静まり返る。

 皆は、少女の記憶力の良さに驚いたのだが、言ってはいけなかったのかと、ハッとしたアルフィナに、フェリシアは近づき微笑む。


「アルフィナ? 私もその本を読んだことがあるわ。でも、良く一言一句覚えているわね?」

「おねえしゃまもでしゅか?」

「えぇ。《クヌートの罪》も聞いていたけれど、あの事がそうだったのね」

「フェリシア! もしかして!」


 サリサは青ざめるが、フェリシアは首を振る。


「いいえ、お母様。私が覚えているのは、今は牢獄にいた時のことが中心なの。だからアルフィナと会ったこととか、お話ししたこととか、私は末っ子だから、アルフィナみたいに可愛い妹が欲しかったわ、とか。今言っていた《クヌートの罪》の間は、神は私の意識を眠らせて下さっていたようなの。それに、嫌よ……ギロチンに首を差し出す行動を延々となんて……私の心が壊れそう……」

「おねえしゃま……怖い夢、とんでなの、どっかにいってなの。ダメなら、アルフィナが代わりに……」


 抱きついて必死に祈るアルフィナに、慌てて首を振る。


「駄目よ! それに、私はアルフィナに悲しくて苦しい思いして欲しくないの! アルフィナは私の妹よ? 可愛い妹に辛い思いさせるような、酷いお姉様にはなりたくないわ!」

「おねえしゃま……だいしゅきでしゅ。おねえしゃまは、アルフィナのおねえしゃまでしゅ!」


 フェリシアがアルフィナの頭を撫でると、2人を包むように抱きしめるのはサリサ。


「フェリシア、アルフィナ……私達が誓いますよ。もう二度と2人を手離したりしない。辛い思いをさせたりしない。貴方達には笑顔が似合うわ。私達は一度失敗してしまった……でももう二度と迷わないし躊躇わない。だから幸せになって頂戴」

「お母様」

「フェリシアおねえしゃまのおかあしゃま……」

「お母様でいいのよ。それに、ここにいるフレアも貴方のお母様。ヨルムはお兄さん。私達の息子達がお兄様で、フェリシアの姉達もお姉様。アルフィナは家族がいっぱいね」


 サリサは2人の娘の頰にキスをする。


「お母様は絶対に貴方達の味方。安心しなさい、ね?」


 娘と幼いアルフィナが本当に可愛いと、親馬鹿でも良い、可愛がって心の傷を癒してあげたいと祈る母親達だった。

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