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アルフィナの聖女としての力

 セシルは、アルフィナを抱っこしたまま歩いたり、途中は下ろして手を繋ぐ。

 まだ数日しか一緒にいないが、余りにも可愛がりすぎて、ずっと抱きっ放しは駄目だと念を押されたのである。

 アルフィナは小食で小さく、その上わがままを言わない。

 年齢の上ばかりだが、従兄姉や兄姉同然のセシル達は甘やかしたいと思っていた。


「あら、アルフィナ」

「おねえしゃまとケルトおにいしゃま」


 目をキラキラとさせ、セシルから手を離し、フェリシアは駆け寄っていく。

 そして、フェリシアに抱きつくと、何故かキラキラとした光のかけらのようなものが飛び散った。


「な、何だい、これ?」


 セシルは近づき、そのかけらを拾う。

 かけらといったが、小指の爪のサイズの丸い玉で、中にはゆらゆらと液体がたゆとう。

 ケルトは袋に飛び散ったそれを拾い集めつつ、


「これは、癒しのポーション。多分白が体力回復、ピンクが魔力回復かな。青いのは何かな? 聖女が祈りで生み出して、教会で高額で売られているものだよ」

「えっ? これが? 一つ手に入れるのに、かなりの額を寄付しているよね? あれは小瓶に入ってる」

「ここに小瓶がないからね。多分、飴みたいに口に入れるんじゃないかなぁ。あっ、アルフィナ」


 自分の足元に転がったポーションを、


「飴ちゃん! おとうしゃまやルシアンおじしゃまにあげるのでしゅ。あ、ケルトおにいしゃまもあい、でしゅ」

「ありがとう。いいの? お兄ちゃんにくれるの?」

「あい。父と母がいつもちゅかれた時に、青いのあげましゅた。おねえしゃまとセシルおにいしゃまも」

「青いの?」


拾った中の青いものを、親指と人差し指でつまみ、かざしてみる。

 青というより水色のそれは、可愛らしい。


 ケルトは、三色を一気に口に入れると、


「うわぁぁ!」


口を押さえ目を見開く。


「イタイタイタッ! 弾けるし一緒に飲むんじゃなかった!」

「大丈夫か?」

「いえ、あの、味が、ミルクとベリーとソーダ味です。混ざって変な味になってる〜」


 泣きそうな声に、フェリシアとセシルは笑う。

 アルフィナは、心配そうに、


「大丈夫でしゅか? おにいしゃま」

「だ、大丈夫。次から一つづつ口に入れるよ。でも、確か、フェリシアは体力回復と魔力回復のポーション作っていたよね? この青いポーションは……」


フェリシアは口に入れると、口の中で確かめる。


「これは多分、精神安定ではないかしら。とても疲れた時に口にするとリラックス出来るのではないの?」

「父と母がちゅかれた時にあげましゅた。よこりょんでくえましゅた」


 セシルも口に含み、リラックスする自分に驚く。


「アルフィナは、こんなの作っていたの?」

「えと……カップにジューシュを。飴ちゃんは、んっと、おみしぇで見たのでしゅ。キラキラでしゅ。かあいいでしゅ。おとうしゃまが今日もくれましゅた」

「あぁ、あの飴……」


 1日一個貰っている、そして選ぶ時に喜んでいたアルフィナを思い出す。

 しかし、ポーションを飴風に作り変える、生み出す才能は凄いものである。

 確か、フェリシアは出来ない。


「じゃぁ、アルフィナはいつも三つの色の飴を作るの?」

「……? んっと……むしゃらきとみじょりと、きいりょでしゅ。おねえしゃまとぎゅーはしりょ、ピンク、ブリューです。おばあしゃまとぎゅーはみじょりで、おとうしゃまはきいりょ、セシルおにいしゃまとむりゃしゃきでしゅ」

「えっ? 私?」


 フェリシアから離れ、てててっとセシルに抱きつくと、ポーンと飴が数個出てくる。


「えっ? こんなのあったの?」

「ふにゃんは作りゃないでしゅ。今日はうえしいのでしゅ」

「えっ? ご機嫌だとできるの?」

「えへへ、おにいしゃまだいしゅきー」


 ポンポンと今度は様々な色のポーションが生まれ、そして、


「……アルフィナ……ねんね、しゅ……」


と、呟き寝入ってしまった。

 いや、力尽きたのである。


「アルフィナ……アルフィナ?」


 腕の中でぐったりするアルフィナに、慌てて立ち上がる。


「ケルト。このポーションはアルフレッド兄上の所にルシアン叔父上がいるから、見て貰って。フェリシア。悪いけれど、アルフィナに癒しの祈りをお願いできる?」

「はい、分かりました!」


 ケルトは袋にポーション玉を詰め、それを大切に持っていく。


 ポーションは本当に貴重で、もしこの一粒だけでも、教会に一週間分の一般の人間が働いた給金と引き換えである。

 一本なら、一月分である。

 この幼い体で大量に作れると分かったなら、教会はどうするだろう。

 ケルトはゾッとする。

 そして、急いで父たちのいる部屋に走っていったのだった。




 セシルはフェリシアと共に奥の部屋に向かう。


「フェリシア、王太后様たちを。お願い」

「はい、セシルお兄様」


 フェリシアは奥に向かう。

 セシルはアルフィナを抱きしめ、アルフィナの部屋に向かう。

 乳母夫妻はおらず、エリとリリがアルフィナのワンピースを詰める作業をしていた。

 フェリシアの屋敷から贈られたワンピースなどを、一時的にアルフィナの為に着せる為である。


「失礼する。アルフィナが倒れた」

「お嬢様が!」

「セシル様、こちらです」


 二人は針を置き、寝室に案内する。

 そして、家族が家の主治医を呼び、皆が集まるのだった。




 アルフィナが知恵熱に近いものだと言われ、休んでいる間、アルフレッドたちはケルトの持ってきていた飴玉のようなものを確認していた。


「これは……」

「もの凄く嬉しかったのか、フェリシアに抱きついて、この飴玉ポーションをポンポン作っていました。白が体力、ピンクが魔力回復、青が精神的なリラックスをもたらすようです。後の三色は王太后さまにぎゅっとしたら緑、アルフレッド兄上は黄色、紫はセシル兄上と一緒にいるとできるとか」


 袋いっぱいの飴玉ポーションを見ていたルシアンは、紫のものを手にすると、


「うわっ……これはヤバイ」

「何?」

「これ、毒」

「はっ?ポーションだぞ?」


ラインハルトは眉をひそめる。


「何言ってるんですか。普通、ポーションとは水薬のことで、薬と毒は表裏一体ですよ。緑のは……毒解除。黄色が体力、魔力両方回復ですね」

「これは……カーティス兄上……」


 青ざめた顔でアルフレッドが呟く。


「……隠そう! 子供の頃は、魔力やこう言った力が暴走することもある。それが安定するか、もしくは消えることも。教会に知られないように……でなければ、フェリシアのようになる。隠そう」

「でも、無理に抑え込むと暴走するぞ」


 ラインハルトは腕を組む。

 実際、長男のセシルはある程度魔力があり、安定するまでかなり時間がかかったのである。


「そうだよね。じゃぁ、もう、逆に自由にさせてあげたら? これなんて飴玉そのものじゃない。沢山作っちゃダメだよでいいと思うけど」

「そう……ですね。ダメって言っても解らないだろうし。でも、体の調子が悪くなったり」

「その制御をフェリシアに教えて貰ったらいいんだよ。フェリシアはあの子と同じ聖女なんだから」

「……そうだな」


 カーティスも頷く。


「私の娘と同じだからな」

「あの子の将来が心配です。優しく可愛い子だから、辛い目に遭いませんように……父として生きると決めましたが、こんな時がこれからもあるのでしょうね」


 アルフレッドは祈るのだった。

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