3人は目的地に到達する。
バロンが先に立ち、マゼンタとメイが続く。
「バロン。ここからどう行くの?」
「(このまままっすぐ)」
指で示した。
あれから3人は、脇道から元の道に戻ることができた。
奥に進むにつれ次第に薄暗くなるのを、双子は灯玉を出してつけ周囲を見回した。
奥までどれくらいの距離があるのかわからないため、数は最低限に、明かりを壁につけることもせず、手にしたままで奥に奥にと移動する。
一度だけ休憩し、お茶とアルフィナとフェリシアが作ったクッキーを口にして、前後で周囲を警戒しつつ進んでいくと、大きな扉が現れた。
重々しい両扉だが、異質なのは扉を戒める鎖に錠前がぶら下げられている。
「これは……封印?」
灯玉を掲げるようにして、バロンは扉の状態を食い入るように見つめている。
その横に並び、装飾もないただ錆び付いた錠前を指さしたメイは、マゼンタを振り返った。
「ううん……封印じゃないわ。普通の錠前よ。でも、構造はとても古いわね」
「(昔のだね……ちょっと見てみるね。マゼンタ。灯玉をお願い)」
「うん。大丈夫? バロン」
「(大丈夫)」
バロンはベルトに挟んでいたピンを取り出すと錠前に手を伸ばしたが、触れてすぐざらっと音を立てて崩れ落ちていく。
「さ、錆びてたのね」
「鎖も朽ちているわね」
ザラザラ……
バロンは鎖をまるで枯れ果てたツルを引っ張るようにして、取り除いてしまう。
「奥、大丈夫かな?」
「引くのかしら? それとも押す方? 横にスライド……」
「(メイ……一応上下見たら? この扉は押す方だよ)」
「えっ? 嘘!」
メイは慌てる。
一応冗談と、マゼンタの緊張を和らげようと思った一言に、返され焦る。
「(ほら、天井の扉の部分)」
「あっ! 鍵がついてる。開くの?」
「(材質は同じみたいだから、大丈夫だよ……多分)」
「多分って?」
「(しいーっ!)」
人差し指を前に出し、静かに! と合図され、慌てて二人は口を閉ざす。
「(僕が扉を開けるから、壁際に下がってて。飛び出しちゃダメだよ。いいね?)」
「うんっ」
二人は壁に背を当て、すぐに動けるように待機する。
そして、バロンは二人を見て頷くと、鍵のない扉を押し広げた。
ギギィィィ……
低い音とともに、ゆっくり押し広げた扉の中をそっと確認したバロンは、二人を見て入るように促す。
マゼンタ、メイの順番で入り、二人が支えている間にバロンは、ポケットからドアが閉まるのをおさえるためにナイフを挟んで入る。
良く帰り道で扉が閉まっていたというような単純で危険状況は回避すべしと、ラインハルトやセシルに言い聞かせられていたからである。
来るまでに精神的にも肉体的にも疲れ果てている。
これ以上疲労を後にまで残しておきたくはない。
「ねぇ、まだ奥かしら?」
「ここよ。マゼンタ。ほら、奥に……」
「えっ? だって、確かラインハルト様は……インマヌエル1世の……きゃぁぁ!」
灯玉に照らされた玉座には、ボロボロの色も既に判別できない布がわずかに残る、胸に剣が突き立ったままの骸骨が座っていた。




