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私、分かり易いですか?

 そもそもーーーー


「曾お爺様は、私のお手紙を受け取った訳では無いのに、どうしてこちらにいらっしゃったの?」


 ディルヴァイスが部屋を出て行った後、皆様でお茶をしております。すっかり冷めてしまったお茶を入れ直して頂き、曾お爺様が持って来てくれたクッキーをお茶請けに、近況報告をしております。


 このクッキー!今王都で、とても有名なお菓子のお店で、購入困難なお店ですのよ!さすが曾お爺様ですわぁ!


「いや〜〜、たまたまな、近くまで来る用事がーーあったんじゃ。うむ。」


「「……絶対にウソだ!」ですわっ!」


 パティとリューがボソッと何事かを呟きます。…?


「そうですの。曾お爺様に私の気持ちが届いたのかと思いましたわ。魔法でも無いのに、可笑しいですわよね。」


「いや!決っっして可笑しい事など無いぞ!マールの心の叫びが儂をここへ向かわせたのじゃ!これこそ、儂とマールを繋ぐ【 深い絆 】じゃぁっ!」


 グッと握る拳を私の目の前に突き出し、小さな瞳をキラキラさせる曾お爺様は何て可愛いのでしょう!


 嗚呼!いつもいつも曾お爺様の大きな愛を感じさせて頂ける私って‼︎ 何と幸せ者なのでしょうかっ!


「曾お爺様!私も感じておりますわっ! 曾お爺様との【 深い絆 】をっっ!」


「マール!何と嬉しい事を!」


「ハイハァ〜イ!お辞め下さいねぇ〜。気持ち悪いですからぁ〜。」


 いつの間に戻って来ていたのかディルヴァイスが、満面の笑みで侍従あるまじき発言をっ!


 曾お爺様との愛を確認している大事な場面を邪魔するなんて、空気が読めない侍従は底辺ですわっ!


「ーーーディルヴァイス、ありがとう。」


「ーーどうしようかと思っていましたのよ。」


 リューもパティもなぜホッとした様なお顔をしてらっしゃるの⁈


「ーまさか、ここで見られるとは思いませんでしたわ。御前様とマールの【 愛の劇場 】を。ふふふっ。」


 ローズ様!その題名頂きますわっ!


「ディルヴァイス!その口の利き方、何とかならんのか!儂は主人だぞっ!」


「主人なら主人らしくお願いしますと、私も常々申し上げておりますが?口の事も、主人が主人ですので、これは致し方ないかと。」


 ……一度この侍従をギャフンとーーコホッ。失礼。


「本当に!口の減らんやつじゃ!」


「そのお言葉、そっくりそのままお返し致します。御前様。」


「よくもまぁ、ここまで減らず口がーーー」


「曾お爺様がマールを溺愛しているのは、ここにいる者はわかっております。」


 やっぱり、お疲れ?リューの美しい眉間にシワが……。


「ディルも、もう少し曾お爺様に寛容になって下さいませ。これでは、屋敷にいた頃と全く変わっておりませんわ。ここは学園ですのよ。曾お爺様も、他の者の目もございます。どうか、ご自重下さいませ。」


 まぁ、パティが諌めるなんて!


 どちらかと言えば、曾お爺様と気性が似ているパティからこの様な言葉を聞く日が来るなんて!


 ミュラリーズ様!( リューとパティの母上様ですの ) これならもしかすると、リュー離れも夢では無いかもしれませんはっ!


「それは無理だと思いますわ。パティのアレは、持病ですもの。この先、リューが結婚しても続くと思いますわよ。」


「ーー読まないで下さいませ。ローズ様。」


 私、そんなにお顔に出ます?


 お顔に出るなら、マティアス様の事、私言えませんわね。申し訳ございません。マティアス様。


 膝に置いた両手に、何故かローズ様がご自分の手をのせ、ポンポンと優しく叩きます。


 やっぱり、読んでますわね。ローズ様。


「それはそうと、先程、ボンゴードル侯爵子息と出くわしましてーーあれは、出待ちされていたのでしょうか?どちらでも構いませんが、御前との面会を望まれましたが、いかが致しましょう。」


 まぁ!曾お爺様に直接言われるのでしょうか!婚約破棄を!


 マティアス様。それは得策とは言い難いですわ。玉砕なさりたいのでしょうか?


 曾お爺様が、顎を擦りながらチラリと私に視線を向けます。


「儂が会った所で何になる。若造にマールの事を言われて、頭に血がのぼる醜態なんぞ晒したくは無いからのう。それにじゃ、この婚約は飽くまでも家同士の約定であって、若造がしゃしゃり出る事では無いわ。儂は会わんぞ。」


「だと思いまして、懇切丁寧にお断りさせて頂きました。」


「ふむ、それでこそ儂の侍従じゃ。」


 満足そうに何度も頷く曾お爺様。対して侍従が恭しく一礼して、曾お爺様の背後に下がります。


 普段、言い合いばかりしている様に見えるのですが、そこには深い信頼関係がちゃんと築かれていて、私時々嫉妬を覚えます。


 それは、女の私には相容れない領域の様で……。


 すると、ローズ様が私の手を取り上げ、ご自分の方へ引き寄せられます。


「……大丈夫よマール。」


 少し薄い、でも形の良い唇を私の指にそっと押し当てられました。


「……………ですから私、いつも言っておりますが、そちらの気はございませんのローズ様。」


 スッと手を引き抜き、ハンカチで拭います!


「だって、小さくてプックリしていて、食べてしまいたい程可愛らしいんですもの。ふふ、私、我慢致しませんの。」


 …………お願いです。我慢して下さいませ!






ありがとうございました。

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