表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
曾お爺様を負かしてから来て下さいませ。  作者: み〜さん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/56

木苺とイノシシと私。

お待たせいたしました。


よろしくお願いします。

 




 木の上で、いつの間にか寝てしまっていた私は、可愛らしい小鳥のさえずりで目を覚ましました。


 ………既に日が昇って辺りはすっかり明るくなっております。


 体がギシギシいたしますが、先ずは靴を探しましょうと思いまして、紐を解きゆっくりと下に降りましたのですがーーー




「 おかしいですわっ! 」




 何故こうなってしまいましたの⁈


 私がしがみつく木の下で、何度も巨体を打ち付けてくるイノシシが甲高い声を張り上げております!


 それ程太くない幹が、イノシシの体当たりに嫌な音を立てていますのっ!


 そもそも靴を探しに降りなければ、イノシシと遭遇しなかったはず。


「左足は見つけられたのに、右足が何処にも無いなんて! 一体何処へ飛ばしてしまいましたの⁈ 」


 それほど遠くに飛ばせませんでしたから、直ぐに見つかると思っていましたのに!


「 あそこで木苺を見つけてしまったのがいけなかったんですわ。」


 黄色い実がキラキラ、プックリとしていてとても美味しそうだったのがいけないんですわ!



 ………まさか反対側からイノシシが食していたなんて、誰が想像できまして?それも追いかけて来るなんて!



 ダンッ!ドッズーーン ‼︎



「ひゃっっ ‼︎ 」


 木が! 木が! 今の体当たりで大きく傾いて私、今まさに最大のピンチです!


「イノシシって、こんなにも執念深い生き物でしたの ⁈ 」


 この木が倒れるのも時間の問題ですわ。上手く飛び降りて違う木に移るか、少し向こうに見える大きな岩まで走って行くかのどちらか。


 足には自信のある私ではございますが、相手がイノシシとなると話は別。勝とうなんていくつ命があっても無理なお話しですわっ。



 ーーーええっ、先程それに近い実体験をしたところです!



 ですからこれはとても危険な賭けなんです!


 このままでも危険の度合は同じなのは、わかっておりますわ。


 ああっ!私、オオカミではなくイノシシに食べられてしまいますの ‼︎


 いえ、食べられると言うよりも、全身歯型だらけになること間違いなしなんです!


「とんでもございませんわっ!そんなことになったらお嫁に行けないではありませんかっ‼︎ 」


 美容にも日々努力を重ねて参りましたのに、このようなことですべてを台無しになどできません!淑女としてなりません!


「それにっ ‼︎ 」


 私には確固たる人生設計があるんですの!


 曾お爺様の孫として ( 実際は曾孫ですが ) 不様な姿など見せられませんわっ!



 バッ!ギィギィーーッ!ギッ!



 何度目かのイノシシの体当たりに、いよいよ危ない音が木から発せられます。


「淑女たる者、如何なる時も冷静な判断と、最悪の事態を回避し、最善を心がけること!」


 学園でマナーを教えていらっしゃるマリリ先生の教えでございます。


 授業中、少なくとも七回は仰っておられます。


 ですからここは最善を心がけることにいたしましょう。


「大丈夫ですわ。木から飛び降りるのは私得意ですもの。」


 まるで冒険譚の主人公のように華麗に飛び降りる自信がございますのよ。


 それで小さい頃、フィルによく怒られておりましたからーーー



「………? あら? 」



 記憶がーーー私、フィルとのことを思い出してます?


 あまりにも自然に、キラキラした思い出が溢れ出して、目が潤んでしまいます。


 でもーーー


「今はそれどころではないのです。」


 頭を強く振って、今この状況をどうやって切り抜けるかだけに集中しなくてはっ!


 イノシシの渾身の?体当たりで手も足もビリビリしてしまって、さすがに長くは持ちそうもありません。


「……ならば、あいだにある木に素早く移ってイノシシの様子を見てから岩まで移動するとしよう。」


 少し冒険譚の主人公になりきって、大きく息を吸います。


 ドキドキする鼓動に大丈夫と繰り返し念じていますと、



 ドッ、バギュッ!ビギッ!ギィーーーッ!



 幹が大きく波打ち、悲鳴のような音をたてながら木が傾いていきます。


 いよいよだと思うと、汗をかいた手が震えます。


「大丈夫…大丈夫…大丈夫……」


 木が地面に倒れる前に両腕で顔を庇って、巻き込まれないように飛び降ります!


 美しく着地しましたが……靴下だけの足がジンジンいたします。


 ですが今はこの先にある木に一刻も早く向かわなければ!


 痛む足に力を込めて走り出し、目的の木に素早く駆け登ります。


 息を整えながら倒れた木の方を見ますと、イノシシが大きく頭を振って激しく鳴いていました。


「ーーー今なら行けそうですわ。」


 ゆっくりと木を降り、視線はイノシシに合わせて後ろへとすり足で下がっていきます。


 心臓が飛び出そうな程高鳴ります。


「物語なら、お姫様の危機には騎士様が現れるところですわね。」


 現実はままならないことに、何故か苦笑いしてしまいます。


 目的の岩までそれ程離れてはいないはず。


 後ろ向きで進んでいるのでわからないのですが、このままなら無事に岩まで到達できるような気がいたします。


「でも、なんて長く感じるのかしら。」


 イノシシが倒れた木の根元の土を掘り返しています。


 まだ私には気付いていないようです。


 ああっ!それにしても何という緊張感!


 寒くも無いのに歯がカチカチと鳴りそうなので、グッと食いしばります!


 震え出しそうな足に力を込めます!


 石を踏んで足が痛いなんて初めての経験に、どれだけ日々安全に護られて過ごしてきたことか、私つくづく思い知りました。


 無事に戻ったときには、屋敷の皆んなに感謝することにいたしましょう。




 ………それにしてももどかしい。


 ゆっくり進んでいるとは言え、これ程離れていたかしら?


 ここからなら走っても大丈夫なのでは?


 などと安易に思ってしまいますが、ここは慎重に。


 後少しの辛抱ですものーーー



 ………ペキッ



 小さな音と足の裏で小枝を踏み潰した感触。


 一気に頭の先からつま先まで凍結しました ‼︎


 サァーーーッと血の気も引く音が聞こえます。


 と同時に、発てた小さな音で、土の中に顔を突っ込んでいたイノシシが、土まみれの顔を素早くこちらに向けます。


 今、思いっっっきり視線が合っております!


 小さな目がギラギラと私を捕らえています!


「うっーーーー !」


 逃げなくてはっ!突っ立っている場合じぁありません!早く!動いて!走って!


 グッと両の手に力を込めて後ろに向かって走り出すのと、イノシシが倒れた木を乗り越えたのが同時!



 見れば岩まで後少しーーー



 でも、土を蹴る音があっという間に近付いてーーー



 振り返れば、イノシシが頭を低くして私へ体当たりしようとする態勢にーーー



 恐ろしさで目を瞑ってしまった私は、足をもつれさせて地面んへ激しく倒れてしまいました!



 ーーーーー曾お爺様っ ‼︎



 咄嗟に心で叫んだときでした!



「ピュッピィーーーーーーーーー!」



 ドグォーーン ‼︎ ズシャーーッ ‼︎




「ブギャッ ‼︎ 」




「………えっ………?」


 何が起こったのでしょう⁈ 私のすぐ後ろでイノシシの甲高い鳴き声と何かにぶつかる鈍い音が聞こえてきました。


 目を開けて見れば、私の目の前には真っ白な毛の大きな犬が低い唸り声をあげています。


 そして空に目を向ければ、大きな鳥が鳴きながらグルグル回って飛んでおります。


「……ザール?」


 曾お爺様の鷹のザール?


 では、今私の目の前でイノシシに威嚇している犬はーーー


「 ………モスダーグ?」


 曾お爺様と失礼な侍従にしか従わない犬のモスダーグ?


「私を………探しに来てくれたの?ザールも、モスダーグも。」


 私の言葉に、フサフサの真っ白な尾っぽが微妙に揺れます。


 身体を起こしてモスダーグ越しにイノシシを見ると、フゴフゴと鼻を鳴らし、勢いよく頭を振っております。


 そのイノシシに威嚇の声をあげながらモスダーグが近づいて行きます。


「………はぁ〜〜〜っ」


 大きく息を吐き出すと、緊張していた身体が少し楽になったような気がいたします。


 まだ安心はできませんが、ザールとモスダーグが居ると思うと何だか強張りが緩みます。


 すると大きな羽音が頭上から聞こえて、見るとザールが近くの木の枝に降り立っておりました。


「ザール!」


 嬉しくて名を呼びますが、フンと横を向いて無視されてしまいました。


 いつものことですが………寂しいですわ。


 と、イノシシを遠去けようとモスダーグが吠えながら追い立てて行きます。


 なんとか……危機を脱した?のでしょうか。


 もう一度大きく息を吐き出し、ゆっくりと立ち上がります。


「見るも無残な姿ですこと。間違いなくみんなが卒倒してしまいますわね。」


 ドレスを叩いて解れかけた髪を結び直します。


「取り敢えず、岩に登ってーーーー」


「ピュィーーーーーーーッ‼︎ 」


 ザールの鋭い鳴き声と羽音が辺り一面に響きます!


 そして、頭上から複数の唸り声が聞こえてきました。




 ………ああっ!見たくない!見てはダメ!


 でも思っていることとは裏腹に、自然に頭がそちらへと向いてしまいます。



「ーーーどうしてーーー」



 登ろうとしていた岩の上で、四頭の灰色の狼が私を見下ろしておりました。







実は、今回のこの話。二回バックアップ消失にあいまして……。

何故!上書き保存を怠ったのかっっ!

少々自棄っぱちになってしまい、遅くなった次第です。察していただければ幸いです。


恋愛要素がうす〜く酸欠状態ですが、まだまだコレ続きます。ごめんなさい。

でも、恋愛のハッピーエンド目指しますから!


読んでいただきましてありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ