紫色のヒヤシンスの花
最短です。
よろしくお願いします。
泣いていた。
私は綺麗な薔薇の花に迂闊にも手を出し鋭い棘に身を傷付け、流れ出る鮮血に慄き声を上げることもできず泣いていた。
早く誰か可哀想な私に気が付いて。
そしてお父様やお母様の処まで連れて行って。
涙が溢れて、喉が痛くて、手の傷が痛くて。
どうして薔薇に手を出してしまったのだろう。
真っ赤な花弁がベルベットのように艶やかで、その芳しい匂いに誘われ不用意に手を出してしまった。
私が手を出してはいけない花。
お願い。
お願いだから誰か私を此処から、この真っ赤な薔薇の中から救い出して。
……馬鹿ね。
……無理よ。
誰も私を救い出してはくれない。
わかっているの。
わかってる。
あの方は私に最後まで優しくしてくれた。
あの方は義務と偽善と惰性で私に接してくれた。
だからーーー
だからあの方が私を助けることは決して無い。
こんなにも血を吐き叫んでいるのにあの方には届かない。
柔らかくなびく金色の髪は、私が触れることを許さなかった。
美しく煌めくバイオレットの瞳は私を見ているはずなのに何も映さない。
剣を握る手は大きくて暖かいはずなのに、私には手袋越しに触れるだけ。
薔薇に手を出さなければよかった。
それでもきっとあの方は私を見て下さらない。
薔薇に手を出さなければ………
それでもあの方が私に心開くことなど無い。
薔薇に手を………
それでもあの方を求めて止まないこの気持ちをどうすれば良かったと言うのでしょう。
泣いていた。
どうしていいのかわからず。
声を殺して必死に笑った。
心を殺して必死に笑った。
誰のために?
だれのために?
ダレノ……タメ……ニ……。
『どうしたの?』
雲ひとつない青空を背に、金色の柔らかな髪が揺れ、バイオレットの瞳が心配気にこちらを見つめる。
そうーーー
貴方と出会ったのは、真っ赤な薔薇が咲き誇る庭園。
王妃様主催のお茶会。
私の初恋で ………
………… 唯一無二の愛おしい人。
何とか宣言?どおりです。
まだまだ続きますが、どうぞよろしくお願いします。
読んで下さいまして、ありがとうございました。




