プロローグ
この世界には多くの神と呼ばれるものが存在する。彼らはそれぞれ火や水などを司り、その力をもって世界を創造し見守って来た。
だが、ある一人の神の言葉によって状況は一変する。
「我々の中で最も優れた神は誰なのだろうか?」
この問いかけに何人かの神々が自分こそが一番優れていると主張、お互いの力を比べるようになり、これは瞬く間に他の神々にも伝播し終わりの見えない神々の争いが始まった。
神々の争いは激しさを増していったがその過程でなんやかんやあって生物が誕生した。急にフワッとした感じになったが気にしない。
さらになんやかんやあり人類が誕生。神様だから!神様は万能だからフワッとした感じで人類位作れちゃうから!
この人類の誕生は神々の争いに大きな影響を与えることになる。彼らは自分達を生み出した神々を崇め、時に助けを求めた。神様も基本的には善良なので助けを求められると断ることも出来ず
「べ、別にあんた達のためじゃないんだからね!」
という謎のお告げと共に何度となく人間を救ってしまう。
そうこうしているうちに人間は急速に文明を発達させていく。この頃になると神様達も人間に気を遣って前のような激しい戦いをすることが難しくなり小競り合いのようなものが度々起こる程度になっていた。人間達もまた神々の争いの趣旨は理解していたが彼らが自分達に気を遣ってくれていると分かっていたためより深い信仰をもって神々を崇め大切にするようになった。
そんな現状を見かねた秩序を司る神であるルーフが神と人間にある提案をする。
「我々の神の力を人間に譲渡しその人間達に我々の代わりに優劣を付けて貰うのはどうだろうか?」
ルーフはさらにこう続けた。
「ただし、優劣を付けるといっても我々の力を使った争いは人間達には負荷が大きすぎるためある一定のルールのもとに物理的な力比べではなく、力や知恵などの様々な能力を必要とする競技で争うことにする」
このルーフの提案は神と人間に大きな波紋を呼ぶことになる。現在の停滞気味の状況に飽き飽きしていた神達はこの申し出を飲み、人間もまた神の力になれるならと快諾した。
ルーフは自身が今回の争いから降り公平な争いとなるように戦争管理委員会を作りその会長となること、そしてこの神の代理戦争の戦場を日本という島国にすることを宣言する。日本という島国が選ばれた理由はその国の人々が世界中にあるどの国の人々よりも信仰心が厚く神の力を最大限引き出せる可能性が高いためであった。
ルーフは代理戦争のルールを以下のようにまとめた。
・神は自身の代理人となる人間、『神子』を一人選ぶ。
選んだ神は親神と呼ばれる。この神子は10歳~20歳までの男女が選ばれ、21歳になった神子は神の力を失い、代理戦争への参加権も失われる。その場合は親神は新たな神子を選ぶことが出来る。
神子には神の力の一部が譲渡され、その力の自由な使用が認められるがその力を用いて他者を害することは禁止される。これを破った神子はその力を失い、親神は代理戦争へ干渉する権利を永久に剥奪される。ただし、致し方ない理由などで上記のルールを破った場合は戦争管理委員会による審議によって今後の処罰を決めるものとする。また、神子が代理戦争を続行するのが不可能な状態と戦争管理委員会に判断された場合親神は新たな神子を選出することが出来る。
・神子となったものは自らを長とするグループ、『神軍』を作ることになり最終的に現存する全ての神子を自らの神軍に加えたものが代理戦争の勝者となる。神軍への加入は代理戦争に破れたものが勝者の神軍へと強制的に加入させられる、または神子が自らの意思で他の神子の神軍への加入を希望し、その神軍の長である神子が認め加入する、という二つのパターンでのみ行われる。神軍からの脱退は神軍の長が許可する、神軍の長に対して代理戦争を申し込み勝利した場合のみ認められる。この項目に関しては下記で詳しく説明する。21歳になり代理戦争への参加資格を失った神子の神軍に所属しているものは新たに選ばれた神子の神軍へと所属することになる。
・神子は他の神子に対して1週間に1度代理戦争を申し込む事が出来、申し込まれた神子は原則としてこの申し出を受けなければならない。代理戦争の申し出が受理されるのと同時にその場に戦争管理委員会のものが現出し以降の代理戦争の進行役を務める。代理戦争の具体的な内容は戦争管理委員会によって決められた競技の中からランダムなものが選ばれるが選ばれる競技は双方の神軍の最小人数に応じたものとなる。この競技の選出は申し出を受けた方の神子のみ1度だけ選び直しを要求することが出来る。
・代理戦争に勝利した神子は敗北した神子を自身の神軍に加える権利を得る。この権利は敗北した神子の神軍に所属する全ての神子に対して有効であり、代理戦争終了後1時間後にこの権利は消失する。神軍に加わった神子は自身が所属する神軍の長に対してのみ代理戦争を挑むことが出来、勝利した場合はその神軍を抜けることが出来る。この時の代理戦争のルールは上記と同じものを使用する。
この無駄に長ったらしいルールが公表され一部の神は長すぎて最後の方読んでないっすわー状態になりながらもなんとかルールを理解し、遂に最も優れた神を決めるための代理戦争の火蓋が切って落とされた。
火蓋が切って落とされてから早100年近くが経った。・・・展開が急過ぎるとか言わない。
だが未だに代理戦争を制するものは現れない。理由は単純明快。神子の数が多すぎるのだ。何百、何千といる神子を全て自分の神軍に加えるなんて物理的に不可能である。確かに神軍は引き継ぎ制なので長い年月をかければいつかは勝利するこも出来るだろう。しかし、人間はそんな長いスパンで物事をみることが出来ない。ここら辺の感覚の違いが神と人間の超えられない壁なのかもしれない。神達もこの代理戦争を長い目で見守るつもりらしく代理戦争は大停滞時代を迎えていた。
ちなみに日本は代理戦争の戦場として一躍人気の観光地となり、人々にとっても代理戦争は娯楽と化していた。
だが、そんな大停滞時代に風穴を空ける存在が現れる。闘争の神アスレを親神に持ち圧倒的な強さとカリスマで瞬く間に自らの神軍を拡大していく女傑、戦場刹那。彼女の出現は長らく停滞していた代理戦争を大きく動かすことになり、その影響によって日本各地でいくつもの代理戦争が行われることになっていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ある晴れた日の午後、日本の首都である東京のとある高校の屋上で二人の男女が対峙していた。
男の名は羽生翔真、中肉中背の平凡な男子学生。ただし神子。
女の名は赤羽朱理、真っ赤なツインテールとつり目がよくマッチしている女子学生。もちろん神子。
朱理が口を開く。
「あんたに代理戦争を申し込むわ!」
翔真は表情を変えずに淡々と答えた。
「ああ、いいぜ。おたくには負けられない」
「そうね、私も親神様の為に負けるわけにはいかない」
「まあ、それもあるが俺にとって最も大事なのはそこじゃない」
「なによ?」
翔真の纏う雰囲気が先程までとは違い真剣味を帯びだし、それを見た朱理もより一層真剣な顔付きになる。
そして翔真は朱理の胸を指さし言った。
「おたく、胸にパットを付けてるな」
「・・・」
朱理は一瞬にして髪の色と同じ真っ赤になり、自身の胸を庇いながら翔真を睨みつける。
「な、なにを根拠に言ってるのよ!セクハラよ!」
ちょっと涙目である
そんな朱理の様子に全く動じずに翔真は続けた。
「俺には分かる。何故なら俺は・・・乳の神の神子だからな」
そう、この物語の主人公である羽生翔真は乳の神の神子なのである。