34:「もう一人の私」
後日、私はほかの面白そうな映画を見に行きたいと思い、高瀬さんを誘った。
映画を見ながら、やっぱり一人で行くのは少し寂しいや、とか、誰かと行くから何か変わるわけでもないのだけど、と私は一人言い訳をする。
そして映画を見終えて、隣の高瀬さんに言う。
「面白かったですね!」
「だな、予想以上だった」
その感想に私は、上機嫌になり、笑顔をつくる。たぶんきっと、これは嘘じゃないだろう。あんなに面白かったんだ。私だって引き込まれた。別に私がたくさん映画を見ているような人でもないのだけど、面白かった。面白かったといえる。……そう、面白かったと言える。お互いのそれぞれの感想を確かめ合える、たったそれだけで、……。
となりを歩く気配に向かって、私は安心して、心の中で確かめたのだった。
今日一日が、とても有意義なものだったのだ、と。
//おまけ的あとがき2「作品公開の経緯」
ある音楽家の人が言っていました。偉大な作曲家の人というのは、数えきれないほどの曲を書いていて、死後にその人が作った曲を整理する人がいるのだと。そういう人というのは、本当に一生をかけて番号を振っていったりだとか、もしくは何人かで分担したり、下手すると何世代かにわたって整理したりするのだと。
そして言われたことは、そういう人はすごい有名になれたから整理してくれる人がいるのだけれど、有名じゃなければ、誰も整理をしてくれず、気が付けば永久に日の目もあたらずに消失してしまうのだということ。
そして、それから、毎日一作品ずつ公開していこうと決めたのですが、それがなかなか自分自身書いた作品がどこにどれだけあるのか把握しきれていない現状……。死んでもいないのに、すでに消失しかけているものもいくつかある始末。そういう意味で、この場所に作品をあげられ、あわよくば人に読んでいただき、何かしら心に残るもの、高望みするならば琴線に触れるものがあればいいのかな、というスタンスで日々少しづつ作品を書いてあげております。
ちなみに、この場所にこういう作品をあげるということは、どういうことなのかも重々承知です。ジャンプにマガジンの漫画を載せるようなこと、剣道の選手がフェンシングの試合に出るようなこと、……つまりは、場違いだということなのですが、それでも作品が多くの人の目に触れられ、読んでいただければ幸いです。欲をいうなれば、評価やコメントを書いていただければと、すごく喜びます。すごく頑張ります。大切ですよね、そういう気持ちの燃料。
長くなり脱線もしましたが、これからもいろいろな作品を書いていきます。もし、それぞれの作品を最後まで読んでいただいた人がいるならば、心から感謝します。読んでいただき、本当にありがとうございます! 毎回毎回はなかなか書けませんが、機会があるごとに一人一人に直接でもお伝えしたい気持ちです。
まだまだ未熟者ですが、これからも末永く作品たちと付き合っていただければ幸いです。(2016.10.26自宅の机にて)