第10話 傭兵団「赤い川」との戦い
敵の騎兵(10騎)が勢いに任せて、こちらに突っ込んでくるな。
まずは――
「円陣を組んで、槍衾を作れ!」
こちらの指示を聞いた、部下が円陣を組んで、敵に向かって槍を構えた。
よし、これで敵の騎兵の突撃を防げるはずだ。
こちらの素早い陣形変更を確認した、敵の騎兵の指揮官が叫んだ。
「俺に続け!」
このまま突っ込んでくるのか?
もしそうなら、槍衾のエジキにしてやる。
「陣形を崩すな! このまま迎え撃て!」
そう叫びながら、マコトが敵の突撃に備えた。
そして、敵の騎馬隊が、こちらの槍衾に当たる直前。敵の騎馬隊の隊長が、わずかに進路を変えて、こちらの軍の横を通り過ぎていった。
敵は、馬の扱いが上手いな。
てか、隊長と同じ動きが出来るなんて、どれだけ錬度が高いんだよ…………
本当に、楽な相手と戦いたいよ。
そんなことを考えていると、敵の歩兵おおよそ140が前進してきた。
武器は、こちらと同じく槍と弓矢が多いな。
おや?
騎兵連中に比べると、歩兵連中は士気が高くないみたいだな。
まあ、全員が同じ気持ちでいるなんて、不可能だし当然だろう。
てか、この温度差は理由したいな。
そんなことを考えていると、ハクビシンさんの姿が目に入ってきた。
「ハクビシンさんは、安全なところ――」
そこで、マコトが言葉を詰まらせた。
安全なところなんて、どこにあるんだよ。
マコトが左手を強く握り締めていると、ハクビシンが微笑んだ。
「大丈夫。自分の身は、自分で守ります! マコトさんは、指揮に集中してください!」
「……すみません……」
悪いが本当に余裕がないので、そうさせて貰うことにした。
えーと、敵の騎馬隊は整列して、再びこちらに突撃しようとしているな…………
今度は歩兵と、連携を取るつもりなんだろう。
それならば――
「槍隊は陣形を維持して、敵の騎馬隊の突撃に備えろ!
そして、俺が合図したら、弓隊は敵の歩兵に矢を放て!」
基本的な方針は、これでいいはずだ!
問題なのは――
「次の攻撃で、敵の騎兵と弓兵が、同時に攻撃してくるはずだ!
俺たちは陣形を崩さずに、これを迎え撃たなくてはいけない!」
陣形を崩して乱戦に持ち込まれたら、兵数の少ないこちらの敗北が決定してしまう。
だから、マコトが叫んだ。
「槍隊は、弓隊を!
弓隊は、槍隊を信じて、陣形を維持しろ!」
直後、部下たちが大声で答えてくれた。
「「おお!」」
仲間を信じろか…………
綺麗事だな。
実際は、持ち場を死守しろという、酷い命令なのだ。
だが、他に手がないのだ。
えーと、援軍を呼びに行った、林仲の村の名主であるコウメイは、こちらの砦に到着したようだ。
砦に残っている兵士は、出撃の準備が出来ているし、五分もすれば、こちらに到着するだろう。
あと二撃たえられれば、こちらの勝ちだ。
そこで、前進を続けていた、敵の歩兵が立ち止まって、矢を撃つ準備を始めた。
おや?
もう少し前進してから、弓矢で攻撃してくると思っていたが、あの位置で立ち止まったのか。
てか、あの位置なら、こちらは高台(交渉の場は、見晴らしのよい場所が選ばれた)から、一方的に攻撃ができる!。
たぶん、敵は焦っているのだろう。
「よし、弓隊! 敵の歩兵に矢を放て!」
こちらの命令を聞いた、弓隊の人間が一斉に矢を放った。それとほぼ同時に、敵軍も矢を放ってきた。
こちらの矢は、ほぼ狙い通りの場所に命中。
そして、敵軍の矢は半数ほどが、狙い通りの場所に命中した。
大成功だと言いたいが、元々の人数差があるので、ダメージ量は同じぐらいだろう。
くそ、本当に人数差は辛い…………
いや、弱気になるな。
攻撃の手を緩めては、駄目なんだ。
「続けて、二撃目を放て!」
そこで、敵の騎兵の指揮官が叫んだ。
「突撃するぞ!」
そして、敵の騎兵が、全力で突撃してきた。
やはり、連携攻撃を仕掛けてきたか。
てか、こちらの弓兵が矢を落としたり、隣の兵士とぶつかったりして動揺しているな。
まあ、巨大な馬が全力で迫ってくるのだ。
動揺するのが普通だろう。
だから、マコトが叫んだ。
「槍隊! 陣形を維持して、弓隊を守れ!」
直後、槍隊の隊長が叫び返してきた。
「任せてください!」
そして、敵の騎馬隊が、こちらの槍衾に当たる直前。
敵の騎馬隊が再び、わずかに進路を変えて、こちらの横を通り過ぎて行った。
いや、今回は最接近したときに、敵の指揮官が俺に向かってナイフを投げてきた。
指揮を執るために、あちこちを見回していた、俺は敵の攻撃に気づくのに遅れた。
あ、これは避けられない。
喉に直撃するコースだし、出血多量で死んだな…………
ごめん、みんな。
俺は帰れない――
マコトが死を覚悟した。
そこで、隣にいた林仲の村の村長である、グエンが盾を持って、俺の前に進み出てくれた。
「マコト様! 周りにも注意してください!」
そう叫んだグエンが、盾でナイフを弾き飛ばしてくれた。
助かった。
「……ありがとう。でも、俺は指揮を執らなくちゃいけないから、自分の身を最優先には出来ないんだ!」
俺が適切な指揮を執らないと、この戦闘は負ける。
そして、戦闘に負けたら、みんな死んでしまうのだ!
そう目で伝えると、グエンが叫んだ。
「マコト様が死んだら負けなんですから、自重してください!」
もっともな意見であった。
反論するのは、難しいな…………
そうだ。
「だったら、俺のことは、グエンが守ってくれ!」
こちらの発言を聞いた、グエンが大きく頷いた。
「わかりました、任せてください!」
これで、グエンは無茶な突撃をしなくなるだろう。
こんな時にも部下に気をつかえるなんて、俺は素晴らしい指揮官だな!




