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第6話 チート能力を使って、状況を打開しよう!

 マコトが十字架の木を睨みつけていると「大丈夫ですか?」と、ヒミコが明るい声で尋ねてきた。


 ああ、この頃のヒミコは、こんなに屈託のない笑顔を浮かべていたんだな…………


「……問題は解決したので、大丈夫です……急いでいるので失礼します……」

 そう言い残して、マコトがその場を離れようとした。


 これで、俺は村と関わらずにすむ。

 生き残ることができた。


 だが、本当にこれでいいのか?


 このまま放置すれば、村が山賊に襲われて、ヒミコがまた虚ろな表情に戻ってしまう。


 いや、一般人の俺には、山賊を退治するなんて無理だ。

 諦めよう。


 いや、待て。


 俺には何度死んでも生き返るという、チート能力があるのだ。

 何度も挑めば、山賊に勝てるんじゃないか?


 てか、俺がこの能力を使えるようになったのは、山賊を退治するためだろう。


 そう都合よく考えて、マコトが足を止めた。


「ヒミコ、山賊が攻めてくるから、家族を避難させろ」


『何を言っているんだ、こいつは?』みたいな目を、ヒミコが向けてきた。

 まあ、正しいリアクションなんだろう。


 だが、ゆっくりと説明している時間はないのだ。


「早く行け!」

 こちらが怒鳴ると、ヒミコが村の方に走っていった。

 

 村人に危機を知らせに行くというよりも、不審者(俺)から逃げ出したかったのだろう。


 少し悲しかった…………

 まあ、気を取り直して武器の確保からしていこう。


 えーと、確かここから一番近い民家の納屋に、槍が隠してあったはずだ。

 それを取りに行こう!


 マコトが民家に移動して、納屋の中にそっと入った。


 やっていることは泥棒と同じだよな。

 いや、村を助けるためなんだから、許されて当然だ!


 そんなことを考えていると、目的の槍を発見した。


 この槍は、あまり手入れがされていないな。

 だが、他にいい武器があるわけでもないし、これでいくか。


 そこで、外から戦闘音が聞こえてきた。


 始まったか、俺も行こう!


 マコトが建物の外に出ると、山賊がヒミコの弟を殺そうとしていた。それを止めるために、マコトが叫びながら突進した。


「死ね!」


 こちらの攻撃を、山賊がさっと回避した。

 そして、山賊がこちらの胸に槍を突き刺したのだ。


 また胸を貫かれてしまった。

 これって、偶然なのかな?


 そんなことを考えていると、ヒミコが弟を連れて家の中に避難しようとしていた。


 ああ、俺の死も無駄ではなかったんだな。

 少しだけだが、救われたような気がした。





 

 そして、マコトが再び、森の中で目を覚ました。


 えーと、十字架の木が目の前にあるし、自分の体も無傷だった。

 どうやら、俺の悪夢は継続しているようだ。


 それはそうと、あっさりと殺されてしまったな。


 まあ、戦闘経験がほとんどない俺が、山賊に真正面から挑んでも駄目か。

 よし、今度は背後から襲おう。


 そんなことを考えていると、ヒミコが声を掛けてきた。


「そこで、何をしているんですか?」


『君を助けるために、頑張っているんだよ』と答えたら、どうなるのかな? 

 てか、どうせすぐに死ぬんだし、言ってみるか。


 ヒミコの目を見つめながら、マコトが強い口調で言った。


「君を助けるために、頑張っているんだよ」

 キョトンとした表情を、ヒミコが浮かべていた。


 まあ、そうなるよね。

 さてと、冗談はこれぐらいにして、本題に戻ろう。


「ヒミコ、山賊が攻めてくるから、急いで村に戻れ!」


 こちらの発言を聞いた、ヒミコが困惑した表情を浮かべた。

 まあ、急に言われたら、そうなるよね。

 

 だから、マコトが強い口調で続けた。


「弟が大事なら、早く戻――」

 こちらが全部言い終わる前に、ヒミコが自宅に走っていた。


 やっぱり、ブラコンだったんだな。

 もしかして、俺の面倒を見てくれたのも、弟の代わりだったのかもしれない……

 

 そんなことを考えながら、マコトが納屋に向かった。




 五分後。

 民家の納屋で待機していると、外から戦闘音が聞こえてきた。


 外の様子を確認すると、山賊が三人ほどいた。

 斧使い(リーダー風の男)、剣士、弓使いの三人組だ。


 この場合は、リーダーである斧使いを狙うのが正解だろう。


 方針が決定したので、敵が納屋の前を通り過ぎるのを待つことにした。


 手が震えているな。

 思っていたよりも、緊張しているみたいだ。


 大丈夫。

 俺なら、やれるはずだ!

 

 そんなことを考えていると、敵が納屋の前を通り過ぎていった。


 よし、ここから出て行けば、敵の背後を取れる。


 マコトが納屋からそっと出て、敵に近づいた。


 よし、この距離なら!


 マコトが繰り出した槍が、斧使いの胸に突き刺さった。


 やったー、俺は勝利することが出来たのだ。


「……母さん、助けて……」

 そう呟いてから、斧使いが地面に倒れた。


 そこで、始めて自分が、人を殺したんだと理解した。


 マコトが呆然としていると、敵の山賊が襲いかかってきた。


 対処しようとしたが、上手く体が動かなかった。

 マコトの胸に、敵の剣が突き刺さった。


 こうして、俺は再び殺されてしまったのだ。

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