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第1話 上級貴族の当主になりませんか?

 俺がこの世界に転生してから、五年が経った。

 初めの半年に比べると、この五年は概ね平穏だった。


 いや、二年に一度のペースで、東国との戦争があったか。

 てか、戦争することに慣れてしまうとは、この世界は本当に地獄だよな…………


 そんなことを考えていると、俺とヒミコ(妾)の間にできた、娘のイヨが執務室に入ってきた。


「パパ、ママ(ヒミコ)がご飯できたって!」


 舌足らずな口調で話しかけてきた娘(超カワイイ!)に、マコトが笑顔を向けた。


「わかった、すぐに行く」

 林仲リンチュウの村の資料を、マコトが机の引き出しに入れようとした。


 そこで、娘であるイヨが質問してきた。


「パパ、それなあに?」


 この年(四才)で村の内政に興味を持つなんて、俺の娘は天才なのかもしれないな!


 そんな親バカみたいなことを考えながら、マコトが口をひらいた。


「これは、林仲の村の資料だよ」

 娘に資料を手渡してから、マコトが説明を始めた。


 現在の林仲リンチュウの村の人口は


 林仲の村出身者が、250

 大滝の村出身者が、100

 青丘の村出身者が、20

  鉱山の出身者が、30

       合計、400


 この五年は、それぞれの派閥の利害調整ばかりをしていた。

 てか、領主というよりも、ただの中間管理職だったような…………


 マコトが不服そうな表情を浮かべていると、娘であるイヨが微笑んでくれた。


「お母様エクレアもママ(ヒミコ)も、パパは頑張っているって褒めていたよ! だから、そんな顔しないで」

 

 大変だ!

 俺の娘は、天使だった!


 近いうちに、ウチの娘の婿の座をめぐって、内乱とかが起こるんじゃないか?

 いや、俺は娘のためだったら、内乱ぐらい平定してみせる。


 そんなバカなことを考えていると、娘であるイヨが質問してきた。


「そっちの資料はなあに?」

 えーと、そっちは――


「それは、この村の収支表だよ」

 娘に資料を手渡してから、マコトが説明を始めた。


 現在の林仲の村の収入は、


 林仲の村の農地収入 120→200(増加)

 青丘の村の農地収入 50→30(減少)

 大滝の村の農地収入 50→20(減少)


     傭兵収入 00→150(増加)

     狩り収入 50→50(維持)

     鉱山収入 50→50(維持)

 寄り親からの援助 50→50(維持)

       合計 550


 五年前に比べると、林仲の村は確実に豊かになった。

 少なくとも、ここ一~二年で身売りするような女子は出ていない。


 もっとも、戦死者は増加傾向にある。

 俺の選択が正しかったのかは、微妙な所だろう。


 そこで、ヒミコが執務室に入ってきた。


「マコト様、食事の用意が出来ました」

 おお、忘れていた。


「わかった。いま行く」

 林仲の村の収支表を見つめていた娘に、マコトが優しく声をかけた。


「イヨ、食事に行こう」


「はーい」


 そう言ってから、娘であるイヨが俺の手を掴んできた。そして、トコトコと歩いて、ヒミコの手も掴んで言った。


「みんなで行こ!」


 ハッキリ言おう。

 俺は、メチャクチャ幸せだ。


 いまは父親(白龍)の見舞いに行っていて不在のエクレア(正妻)を含めて、俺は家族に恵まれていると思う。


 不満といえば、家庭内の序列が、エクレア(正妻)>>>俺>ヒミコ(妾)なことぐらいだろう。


 てか、年々エクレアの力が強大になっていくのは、どうかと思うよ。


 そんなことを考えていると、部下が早足で近づいてきた。


「マコト様、寄り親の使者である、ハクビシン様がいらっしゃいました」

 うん?


「ハクビシンさんが来ているのか?」

 こちらが尋ねると、部下が大きく頷いた。

 

 寄り親である白龍の懐刀である、ハクビシンがわざわざ来たってことは、重要な話なのだろう。


「ヒミコ、お客様の食事を頼む。そして、イヨは――」


「はーい。私もお客様のおもてなしを手伝います!」

 本当に、いい子に育ってくれた。


「頼む」と言い残して、マコトが客間に向かった。




 三分後。

 客間に到着すると、俺の剣の師であるハクビシンがいた。


「ハクビシンさん、お久しぶりです」

 こちらが笑いかけると、ハクビシンもぎこちない笑みを返してくれた。


「……マコトさん、お久しぶりです……」


 本当は昔話に花を咲かせたい所だが、ハクビシンさんの表情を見ると、その余裕はなさそうだった。

 

 だから、マコトが直球で尋ねた。 


「それで、ハクビシンさん、何があったんですか?」

 若干の沈黙の後、ハクビシンが言葉を発した。


「……マコトさん、十龍シーロンの領主になりませんか?」

 こうして、俺の激動の一年が幕を開けた。

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