表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/73

第16話 作戦会議

 一週間後。

 マコトたちが、林仲の村に到着した。


 そして、その日の夜。

 マコトが自らの執務室に、関係者を集めて作戦会議を開くことにした。


 メンバーは、


 林仲の村を守ってくれる予定の白龍の嫡男、白狼ハクロウ+副官。

 そして、最強の戦士であるハクビシン。


 林仲の村からは、


 名主のグエン。

 名主補佐のヒミコ。

 新しく名主になったコジロウ(本調子ではないが、歩けるようにはなっていた)


 そして、新しく支配下に入ることになった、大滝の村の名主であるコウメイ。


 同じく支配下に入ることになった、鉱山から25名の兵を連れてきた、ヤン(昔の知り合いだったので、驚いた)がいた。


 軽く挨拶した後、マコトが作戦を説明しようとした。そこで、白龍の嫡男が前に進み出てきて、強烈に主張した。


「私に先陣を任せてください!」

 こいつは、白龍(父親)との打ち合わせを聞いていなかったのか?


 マコトが睨みつけると、白龍の嫡男が叫んだ。


「俺だって、武勲が欲しいんだ!」


 まあ、領主の嫡男が武勲を欲しがるのは当然だろう。

 武勲がないと、部下から侮られるからな。


 だが、今回の場合、お前が前線に出ると、東国との戦争が再開になるかもしれないのだ。


 絶対に阻止しよう。


 そうだな。

 相手の顔を潰さない方法は――

 

 若干の沈黙の後、マコトが神妙な表情を浮かべて頭を下げた。


「……前回の戦い……私が遠征に行っている間に、この村が襲われました……


……白龍の嫡男ハクロウさんに、お願いする仕事(林仲の防御)は大変だと思いますが、よろしくお願いします……」

 

 仕事の重要性は伝えた。

 これで駄目なら、こいつはかなり駄目な奴だろう。

 

 白龍の嫡男が部屋の中を見回した。

 そして、周りの冷たい視線に気づいた、白龍の嫡男が頭を下げてきた。


「自分勝手なことを言って、すみませんでした。自分の仕事を全力で、勤めさせて貰います!」

 

 よし、説得成功だ。

 てか、未来の上司(寄り親)が無能でなくて、よかったよ。

 

 そんなことを考えながら、マコトが作戦を説明することにした。


「林仲の村は予定通り、白龍の嫡男ハクロウさんの部隊に守って貰います」

 

 100名近い精鋭が残ってくれるのだから、林仲の村は安全だろう。

 問題があるのは、遠征軍の方だ。


 林仲の村からは、ほぼ全ての成人男性70人。

 大滝の村からは、こちらもほぼ全ての成人男性25人。

 そして、鉱山からは、25人。


 合計120名の部隊を率いて、俺は敵の村を襲撃しに行くのだ。


 敵の村の人口は、300前後。

 いや、山賊を50人ほど殺したから、残りは250ぐらいだろう。


 250の内で、戦力になる成人男性は60~70前後。


 こちらは敵の倍近い人数がいるし、奇襲さえ上手くいけば十分に勝てる相手だろう。


 いや、敵地に乗り込むのだし、五分ぐらいと見るべきか。

 

 マコトが編成について説明すると、集まっていた人間から反対意見は出なかった。


 まあ、事前に説明していた案と同じだし当然だろう。

 だが、ここから先は、完全にアドリブになるのだ!


 最強の戦士であるハクビシンに向き直ってから、マコトが頭を下げた。


「ハクビシンさん、今回の遠征に参加してください。そして、私を守ってください」

 すごく情けない台詞だと思う。


 だが、あの強力な山賊のボスと戦って勝つには、ハクビシンの力が絶対に必要なのだ。


 若干の沈黙の後、ハクビシンが微笑んだ。


「剣の師として、全力を尽くさせて貰います。ただし、勝った後に、美味しいお酒を奢ってくださいね」


 相変わらず、ハクビシンはお酒が好きなんだな。


 顔を綻ばせながら、マコトが大きく頷いた。


「はい、とっておきの酒を奢ります!」

 こうして、作戦会議が終了したのだ。




 三十分後。

 マコトが寝室に、ヒミコを呼び出した。 


 エクレアと結婚したことを、ヒミコに報告するためだ。


 まあ、エクレアはまだ幼い(生理が来ているか、微妙な年齢)し、これまで通り妾でいてくれ。

 

 そう伝えるつもりだった。

 てか、俺もだいぶ、こっちの世界の常識に染まったな。


 そこで、寝室に入ってきた、ヒミコが微笑んだ。


「マコト様、結婚おめでとうございます。エクレア様は素晴らしい女性なので、大切にしてください」


 エクレアが、いい女なことは知っているよ。

 てか、祝福の言葉を本心から言ってくれた、ヒミコも十分にいい女だと思うよ。


 そんなことを考えていると、ヒミコがいつもと同じ口調で言った。


「私が邪魔になったら、遠くに売り飛ばしてくださいね」

 何を言っているんだ、この女は?


「嫉妬深い正妻なら、そういった展開もあるだろう。だが、エクレアはそんな女か?」


 こちらが睨みつけると、ヒミコが頭を下げてきた。


「……すみません……」

 小さく頷いた後、マコトが口をひらいた。 


「エクレアからの伝言だ。『ヒミコさん、一緒にマコトさんを支えてください』」

 俺は、奥さんに恵まれたよな。


 マコトが自分の幸運を噛み締めていると、エクレアが困惑した表情を浮かべていた。


 まあ、正妻と妾の仲が悪いケースは少なくないからな。


 そんなことを考えていると、エクレアが小声で主張してきた。


「……でも、妾なんて存在していては……」

 ああ、面倒くさいな!


 ヒミコの肩を掴んで、マコトが全力で叫んだ。


「俺は、お前のことをもっと抱きたいんだ! だから、俺のそばにいろ!」

 こちらの発言を聞いた、ヒミコが顔を真っ赤にしていた。


 これだけストレートに求められたら、照れもするだろう。

 てか、少し前に同じような会話をしたな。


 あの時は、確か――


「お前が、俺のことを嫌いなら諦めるが……」

 マコトが寂しそうに呟くと、ヒミコがすぐに首を横に振ってくれた。


「嫌いではありません」


『それじゃあ、好きか?』と、前は怖くて聞けなかった。


 だが、今回は!


「それじゃあ、好きなんだな?」

 マコトが問い掛けると、ヒミコが顔を真っ赤にして頷いてくれた。


 うわ、メチャクチャ可愛い!


「それじゃあ、エッチするぞ!」

 こちらが照れ隠しに大声で叫ぶと、ヒミコが微笑んだ。


「……はい……」

 こうして、俺はヒミコの大きなオッパイを堪能することが出来たのだ。




 翌日の早朝。

 マコトが広場に到着すると、遠征に同行する予定の兵が集まっていた。


 林仲の村人と大滝の村人は、明らかに士気が高いな。

 まあ、家族や友人を殺された人間も多いし当然だろう。


 それに比べると、鉱山からやってきた兵の士気が低いな。


 定住先の斡旋というエサを与えたが、林仲の村が貧しくて、やる気を失った可能性があるな…………


 行軍中に話し合って、この村は豊かになると説得して、彼らの士気を上げる必要があるな。


 マコトが思案していると、名主であるグエンが目配せしてきた。

 さてと、出発の時間になったし、挨拶をするか――


 村人に向き直る前に、マコトが空を見上げた。


 これまでとは違って、今回の遠征は行かないという選択肢もあったはずだ。


 いや、これ以上奪われる側でいるのは、もう耐えられない!

 だから、俺は手を汚すことになっても、奪う側に回るんだ!


 集まっていた村人に向き直ってから、マコトがこれまでの経緯(因縁)を語っていく。


 話を聞いていた村人の多くが、涙を流したり、拳を強く握りしめていた。

 まあ、色々とあったからな――


 そんな彼らに向かって、マコトが本音をぶちまけた。


「今回の遠征、行かないという選択肢もあった!


 だが、これ以上奪われる側ではいたくなかったから、俺は遠征をすることにしたんだ!


 不満がある人間は、ついてこなくてもいい!

 俺は手を汚すことになっても、奪う側に回るんだ!」


 大きく息を吸い込んでから、マコトが叫んだ。


「出発するぞ!」

 直後、熱狂的な歓声が上がった。


「「おう!」」


 結局、脱落者は出なかった。

 まあ、あの雰囲気で行かないと宣言すると、村八分にされるし当然か。


 てか、俺は演説が上手くなってしまったな…………

 こんな能力が上がるよりも、村を豊かに出来る能力の方が欲しかったよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ