第5話 ハクビシンとの戦闘訓練(相談)
翌日。
内政の方針も決まったので、次は自分の能力を上げる方法について考えてみることにした。
文字の読み書きは、引き続きエクレアに習うとして、この世界で一番大事なのは、戦闘能力だろう。
てか、俺が今の地位になれたのも、戦闘能力があったからだ。
幸いなことに、白龍が娘のボディーガードとして、ハクビシン(上司から、名前の一部を貰った)という強力な戦士を残していってくれた。
これを、活用しない理由はないだろう。
ハクビシンに割り当てられていた部屋の扉を、マコトがノックした。
「ハクビシンさん、少しいいですか?」
若干の沈黙の後、部屋の中から声が返ってきた。
「どうぞ」
マコトが入室すると、ハクビシンが刀の整備を行っていた。
正直なところ、武器の善し悪しなんてわからない。
だが、ハクビシンが使っている刀が、一級品であることは素人の俺でもわかった。
なんというか、本当に美しい刀なんだ。
いつまででも、眺めていたくなる。
マコトが刀に見とれていると、ハクビシンが質問してきた。
「それで、マコトさん、用件は?」
おっと、本題に戻ろう。
「戦闘能力を向上させたいので、私に稽古をつけてくれませんか?」
こちらの願いを聞いた、ハクビシンが少し考え込んでから答えた。
「……私は荒っぽくしか教えられませんが、それでもいいですか?」
まあ、贅沢は言っていられないだろう。
「構いません」
こちらが大きく頷くと、ハクビシンが質問してきた。
「こちらからも、お願いがあるんですけどいいですか?」
そりゃあ、タダでは教えてくれないよね。
「もちろん」
マコトが先を促すと、ハクビシンが唇を動かした。
「私は、お酒が大好物なんです」
酒か……
食料が足りていない、この村では殆ど作られていないので、手に入れるのが大変だな。
そんなことを考えていると、ハクビシンが口をひらいた。
「しばらく、この地でお世話になるので、この機会に酒造りにチャレンジしたいんです。農地を貸してくれませんか?」
面白い提案をしてくる奴だな。
えーと、
「農地を貸すのは問題ありませんが、この村では殆ど酒が作られていないので、作り方を教えられる人がいないかもしれませんよ」
こちらの発言を聞いた、ハクビシンが微笑んだ。
「試行錯誤するのも、楽しいものですよ」
完全に趣味みたいだな。
「わかりました。それじゃあ、契約成立ですね」
その後、ハクビシンに貸し出す、農地の量と場所を決めた。
全ての交渉が終わったところで、ハクビシンが立ち上がった。
「これから朝の稽古をするので、マコトさん、準備してください」
早速か。
まあ、早くて困ることはないのだ。
「わかりました」と答えた、マコトが自室に戻って装備を整えた。
そして、部屋を出ようとした所で、エクレアがやってきた。
「マコトさん、少しいいですか?」
ちょうど着替えも終わったところだ。
「どうぞ」
マコトが入室を促すと、エクレアが質問してきた。
「ハクビシンと戦闘訓練をするって、本当ですか?」
「おお、耳が早いね」
マコトが感心していると、エクレアが強い口調で主張してきた。
「止めてください。怪我をしてしまいます」
まあ、本人も荒っぽい訓練になると言っていたからな…………
「心配してくれるのは嬉しいけど、他に教わる相手がいないんだよ」
ハクビシンを除けば、この村で一番強いのは俺だろう。
数ヶ月前までは、平和な日本で暮らしていたのに実戦経験って凄いんだね。
しばしの沈黙の後、エクレアが口をひらいた。
「……わかりました。それなら、私はマコトさんの最後を見届けます!」
最後って…………
『それは流石に、覚悟しすぎだろ』と目で問い掛けると、エクレアが首を横に振った。
「私が知っている限りでは、ハクビシンは戦闘訓練で二人殺しています」
うわ、マジで命懸けだったのか…………
正直、戦闘訓練を中止したくなってきたが、戦闘能力を上げる方法が他に思いつかなかった。
まあ、後で後悔するよりも、いま苦労しておこう。
マコトが覚悟を決めると、エクレアが大きく頷いた。
「それなら、私も一緒に行きます!」
まあ、断る理由もないだろう。
「好きにすれば」と答えた、マコトが中庭に向かった。




