第4話 鉱山へ出稼ぎに行っていた、男たちが戻ってきた
寄り親である白龍が、自らの領地に戻っていった翌日。
鉱山へ出稼ぎに行っていた、林仲の村人たちが戻ってきた。
若い男性が、二十名。
「山賊との戦いで、若い男性が大勢死んだから、凄く助かるな」とマコトが呟くと、名主のグエンと、名主補佐のヒミコが渋い表情を浮かべていた。
これって――
「……もしかして、何か問題があるのか?」
こちらが問い掛けると、名主のグエンが口をひらいた。
「鉱山へ出稼ぎに行っていたのは、次男坊や三男坊が多いんです」
まあ、長男は継ぐべき農地があるのだから当然だろう。
「……だから、家族と仲が悪い人が多いんです……」
そうか、次男坊や三男坊は事実上、追放されたみたいなものか。
そりゃあ、家族との仲も悪くなるだろう。
しかも、彼らにとって、俺はヨソ者の領主だ。
追い返したくなってきたな…………
そんなことを考えていると、出稼ぎに行っていた若者の代表であるコジロウが執務室に入ってきた。
筋肉質で、目が鋭い男だな。
名主のグエンが促すと、コジロウが強い口調で語り掛けてきた。
「あなたも、私たちに奴隷のように働いて、貢げと要求するんですか?」
うわ、えらく喧嘩腰だな……
あそこの鉱山は、そんなに待遇は悪くないのに。
まあ、これも駆け引きの一種なのだろう。
首を横に振ってから、マコトが答えた。
「そんなこと、するつもりはありません。私は、皆さんに独立して貰うつもりです」
自作した地図を広げてから、マコトが言葉を続けた。
「出稼ぎに行っていた人たちには、この場所で開墾をして欲しいと思います」
この計画は、前の領主であるシンのアイディアだ。
それを、俺が発案したかのように振る舞って、人気を獲得しようとしているのは、大変申し訳ないと思う。
だが、これでみんなが幸せになれるのだから、黙っているべきだろう。
こちらの提案を聞いた、コジロウが嬉しそうな表情を浮かべていた。
やっぱり、結婚とかが出来ない、不安定な出稼ぎ労働にウンザリしていたのだろう。
ここは、更に懐柔を進めていこう。
「コジロウさんには、新しい名主になって貰いたい!」
こちらの発言を聞いた、コジロウが微笑んだ。
よし、説得成功だ。
男性二十人が一年間、開墾して新しく得られる農地の量は、四~五人分の年間消費量ぐらいだ。
彼らが食べていけるようになるのは、四~五年後。
いや、嫁や子供を養うためには、十年ぐらいは見ておかなければならない。
大変に困難な道程だが、彼らの表情は明るかった。
「……鉱山の待遇は、そんなに悪くないはずなんだが……」
マコトの呟きを聞いた、新しく名主になったコジロウが口をひらいた。
「たしかに、鉱山の待遇は悪くありませんでしたが、ずっと仕事があるわけではありません」
そういえば、俺がいた時もリストラとかしていたな。
マコトが考え込んでいると、コジロウがしみじみとした口調で言葉を続けた。
「……仕事を失った時の絶望感を、もう味わわなくていいのは助かります……」
俺もリストラされた時は、すごく不安だったな…………
マコトが昔を懐かしんでいると、コジロウが質問してきた。
「それにしても、こんなに援助して貰っていいんですか?」
二十人の男性が、一年間食べていけるだけの食料。
そして、農具一式を既に貸し出している。
普通なら農具の貸し出しと、数年間の減税処置で対処する物だ。
だが、この村の場合――
「ああ、人が大量に減ったからな」
皮肉なことに、多くの村人(余剰人員)が死んだせいで、開墾資金が捻出できるようになったのだ。
「その代わりに、軍役は多めにして貰うからな」
こちらが呼び掛けると、コジロウが大きく頷いた。
「任せてください」
これで、基本的な内政方針は固まった。
自室に戻った、マコトが林仲の村の収支表を作ってみることにした。
○ 林仲の村の収入(単位は、食料の年間消費量)
農地収入 120
採集収入 40~50
狩り収入 40~50
白龍からの援助 50
合計 250前後
○林仲の村の収支
村人の数 205+4(客)
開墾援助 25
老人+孤児への援助 10
合計 244前後
ちなみに、税金は20%(平地にある村の平均は、40%前後)なんだが、軍役とかをして貰うと、実質的には5~10%になる。
てか、この数字を見ると、この村が豊かになれる未来が全く描けない。
いや、困難な道でも、誰かが進まなくてはいけないのだ。
頑張ろう。




