第17話 作戦会議
猟師の報告によると、この村から二日ほど行った所にある洞窟に、山賊が住み着いているみたいだ。
人数は、二十名以上。
装備などから判断すると、前回この村を襲ってきた、山賊と同じだと考えられる。
本隊が留守の間に、山賊に襲撃されなくて、幸運だったと考えるべきか?
それとも、村の近くに山賊が住み着いて、不幸だと嘆くべきか?
どっちかね?
マコトが迷っていると、養父であるシンが大きく頷いた。
「とにかく、山賊にどう対処するべきか決めなくてはいけません!」
そこで、作戦会議に参加していた、エクレアが手を挙げて意見を述べてきた。
「当然、邪悪な山賊は退治するべきです!」
邪悪ねえ。
この女は、山賊の出身が貧農の次男坊とか三男坊って、解っているのかな?
たぶん、解っていないんだろうな…………
「私は、攻撃に反対です」
こちらの発言を聞いた、エクレアが睨みつけてきた。
本当に、この女とは相性が悪いよな……
そんなことを考えながら、マコトが説明を続けた。
「前回の山賊との戦いで、この村は20名近い死者を出しました。今回も戦うと、また大量の死者が出てしまいます」
若い男性が、もう20名死んだら冗談抜きで、村が存続できなくなってしまう。
マコトが軽く頷いてから、更に踏み込んだ発言をした。
「私は山賊に退去料を支払って、よその土地に行って貰うのがいいと思います」
そこで、エクレアが机を強く叩いた。
「騎士が、山賊にお金を払うなんて、あり得ません!」
『金で問題が解決した方が、色々と楽なんだよ!』
そういった思いを込めて睨みつけていると、シンが口をひらいた。
「こちらがお金を支払っても、山賊が本当に退去してくれるか解りませんよ」
それは、その通りだろう。
下手をすると、カモだと認識されて、恐喝が酷くなる可能性もあるな。
「……それに……」と呟いた、シンが目配せしてきた。
ああ、そうか。
山賊がここからいなくなるとしたら、寄り親である白龍の領地に行くしかない。
寄り親の娘であるエクレアの前で、それは実行できないな。
こうして、基本的な行動方針(山賊を退治する)が決定した。
次の問題は――
「私は山賊の本拠地を、こちらから襲撃するべきだと思います」
シンの意見を聞いた、マコトが無言で先を促した。
「まず、こちらから攻撃を仕掛ければ奇襲できます」
まあ、先手が取れるのは、確かに大きいだろう。
だが――
「私は援軍がくるのを待ってから、攻撃するのがいいと思います」
前回の戦いは、勝てたとはいえ辛勝だった。
再び戦うのなら、万全を期してから戦いたかった。
それに、今なら寄り親の娘である、エクレアがいるのだ。
寄り親である白龍は、喜んで兵を出してくれるだろう。
しばしの沈黙の後、シンが口をひらいた。
「マコトさんの意見は悪くありませんが、幾つか問題があります」
マコトが無言で先を促すと、シンが小さく頷いた。
「まず、時間が掛かりすぎます。
これから寄り親の本拠地と、ここを往復すると、最低でも二週間は掛かります。
準備の時間を考えると、援軍がくるのは早くても三週間後でしょう」
たしかに、三週間後に援軍がきても、山賊との決着がついていそうだ。
「次に、三週間も村人が、日常作業できないと困ってしまいます」
そうか。
ただでさえ、貧乏な村なんだから死活問題だろう。
「最後に、この村には援軍に支払う礼金がありません」
悲しい現実だな…………
マコトが黄昏れていると、エクレアが前に進み出た。
「お父様なら、ただで寄子を助けに来てくれますよ!」
いや、お前の父親は、かなり打算的だよ。
だが、娘のためなら、ただ働きをしそうではあった。
以上で、大体の意見が出揃った。
てか、この条件なら、苦しくてもこちらから攻めるべきだろう。
結論が出たので、マコトが攻撃についての打ち合わせをする事にした。
そして、その日の夜。
マコトが自室に戻ると、ヒミコが微笑んだ。
「マコト様、お疲れ様です。今日はすぐにお休みになりますか? それとも――」
おお、ヒミコが顔を赤くしているよ。
初々しくて、かなりそそるものがあるな――
しかし、カワイイ女の子とHできるのはいいが、明日になれば自分よりも強い相手と戦わなくてはいけないのだ。
特攻兵が出撃前に、女を宛がわれるのと、何が違うのだろうか?
そんなことを考えていた、マコトが口をひらいた。
「ああ、無理しなくていいよ」
若干の沈黙の後、ヒミコが唇を動かした。
「……どういう意味ですか?」
あれ、何かヒミコの機嫌が悪くなったぞ……
マコトが恐る恐る口をひらいた。
「ほら、権力(お金)にものを言わせて、関係を迫ったわけだし……」
当然、俺のこと嫌いだろ?
そう目で問い掛けると、ヒミコが強い口調で主張してきた。
「自分のことを助けてくれた人に、好意を抱くのは変なことですか?」
変ではないが、すり込みのような気がする。
マコトが沈黙していると、ヒミコが顔を真っ赤にして唇を動かした。
「……私は、強烈に求められて嬉しかったです……」
おや?
肉食系の方が、好感度が高いのかな?
まあ、この世界では草食系では食べていけないのだろう。
そんなことを考えていると、ヒミコが抱きついてきた。
「だから、私のことが嫌いでないのなら、抱いてください」
この魅力的な提案を断れるほど、俺は聖人ではなかった。




