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第13話 誰か、僕に自分よりも強い人間に勝つ方法を教えてください

 そして、次の日。

 マコトたちの部隊が、正面にある門を守っていると、敵が攻勢に出てきた。


 俺たちが担当している日に、敵が攻勢に出てくるなんて、本当についてないな…………


 てか、この頻度での攻勢はおかしくないか?

 こんなに力攻めするなんて、理由があるはずだ。


 えーと、理由として考えられるのは、兵糧が不足しているとか? 

 そう考えると、色々と辻褄があうな。

 

 いや、敵が攻勢に出てきた理由なんて、どうでもいいのだ。

 問題は、どうやって敵を追い返すかだ。


 そこで、そばにいた養父である、シンが話しかけてきた。


「私が村人を率いて、後方から弓で援護します。マコトさんは守備兵を率いて、敵の侵入を防いでください」


 まあ、そうなるよね。

 シンは指揮官だし、最前線に出られないのはわかる。


 また戦闘能力を買われて、領主の跡取りになったんだから、俺が最前線に行くのも当然だろう。


 わかるんだけど、辛いよ…………


 そこで、敵の投石機から、石が飛んできた。

 

「ドン!」という音と共に、城壁の一部が壊れた。

 そして、守備兵の一部が逃げ出そうとしていた。


 そいつらに向かって、マコトが武器を抜いて叫んだ。


「逃げるな! 

 敵の投石機には、あまり弾が残っていない。


 あと少しだけ、耐えろ! 

 そして、勝手に持ち場を離れた人間は、斬り捨てるぞ!」


 マコトが睨みつけると、逃げようとしていた砦の守備兵が元の位置に戻った。

 

 本当は、恐怖政治みたいなことはしたくないんだが、いまはこうするしかないのだ。


 そんなことを考えていると、敵の投石機から更に石が飛んできた。その石が、隣にいた守備兵の頭に直撃した。

 

 うわ、首が変な方向に曲がっているし、これは死んだな…………


 マコトが固まっていると、砦の守備兵がこちらに注目していた。

 いまは俺が指揮官なんだし、弱気な姿を見せては駄目だ。


「敵がハシゴを使って、登ってくるぞ! 迎え撃て!」


 そう叫びながら、マコトが近くにあった槍を掴んだ。そして、砦に登ってきた敵の兵士に、槍を突き刺した。


 よし、一人殺れた。


「続け!」

 こちらの叫び声を聞いた、砦の守備兵たちが大声で答えた。


「「おお!」」

 よし、味方の士気が上がってくれた。


 それにしても、俺は人を殺すことに慣れてしまったな……

 まあ、嘆いていても仕方がない。


 俺は、もうこの生き方を選んだのだ。 




 それからしばらく、敵の侵入を防いだ。

 そして、敵の攻勢が弱まってきた所で、そいつは現れた。


「君が、ここのボスだね。僕と勝負しよう」と、小柄な少年が無邪気な口調で話しかけてきた。


 こちらが挨拶されたことに戸惑っていると、小柄な少年が剣を抜いて襲い掛かってきた。


 いきなりかよ!

 

 てか、敵の攻撃が、メチャクチャ鋭いぞ。

 不意打ちだったら、死んでいたな………… 


 マコトが睨みつけて威嚇すると、小柄な少年が微笑んだ。


「やるね、これは楽しめそうだ!」

 そして、小柄な少年がこちらに突っ込んできた。

 

 くそ、俺はお前と違ってバトルマニアではないから、戦闘は楽しくないんだよ。


 そんなことを考えながら、マコトが敵の攻撃をさばいていく。


 まいったな。

 基本的な戦闘能力(腕力やスピード)、全て敵の方が上だ。


 俺がまだ生きていられるのは、防御に集中しているからだ。

 それも、そろそろ限界だ。


 どうする?


 敵も味方もこちらの一騎打ちに注目しているから、俺が逃げ出したら戦線が崩壊してしまう。


 マコトが迷っていると、足をすべらせた。

 

 不味いと思った瞬間、敵が強烈な一撃を放ってきた。

 

 ああ、これは敵の攻撃を避けられない。

 死んだと思った。


 そこで、俺と敵の間に、ヒミコの弟である、カイトが強引に割り込んでくれた。まもなく、敵の攻撃が直撃した、カイトの左肩から大量の血液が噴き出した。


「カイト!」と叫びながら、マコトが倒れてきたカイトを支えた。


 カイトの傷は、深いが致命傷ではない。

 すぐに治療できれば、十分助かるだろう。


 マコトが策を巡らせていると、小柄な少年が詰まらなそうに口を動かした。


「ああ、男同士の決闘に割り込んでくるなんて、無粋な奴だね。僕が処理してあげるから、ちょうだい」


 こいつは、本当にクソ野郎だな!


「……かばってくれて、ありがとう……すぐにあいつを片づけるから、ちょっと待っててくれ」


 そして、カイトを地面に下ろした。


「……僕は約束を守りました……お姉ちゃんを頼みます……」


 そういえば、何でもするって言っていたな。

 あの言葉は、嘘ではなかったんだな。


 なら、俺も――


「ああ、任せてくれ」と答えた、マコトが敵に向き直った。


「それじゃあ、再開しようか?」

 そう言って、小柄な少年が微笑んできた。


 本当に、戦闘を楽しんでいる最悪な野郎だ。

 しかし、困ったな。


 自分よりも強い相手に、勝つ方法が解らない。

 てか、そもそも自分より強い相手に、勝つ方法なんてあるのかな?

 

 そうだ。


 この前、山賊と戦ったときのように、命を捨てる覚悟をすれば、少々の実力差なんて覆せるはずだ。


 いや、駄目だ。


 ここで俺が死んだら、戦線が崩壊して敗北が決定してしまう。

 それに、俺は生き残って、カイトとの約束を果たさなくてはいけないのだ。


「俺は、絶対に生き残る!」

 そう叫んだ、マコトが敵を睨みつけた。


 直後、小柄な少年が微笑んだ。


「いい表情だ! 行くよ!」

 そして、小柄な少年が突っ込んできた。


 もう何も考えるな!

 ただ敵に、最強の一撃を叩き込めばいいんだ!


 マコトが全力で振り下ろした剣が、小柄な少年の体を切り裂いた。まもなく、傷口から大量の血があふれ出して、小柄な少年が地面に倒れた。


「お見事」と楽しそうに呟いた、小柄な少年が動かなくなった。


 俺は、勝利することが出来たのだ。


 もっとも、無傷ではすまなかった。

 小柄な少年の剣が、俺の左肩を貫いていた。


 もう少し、心臓に近かったら死んでいただろう。

 まあ、生き残れたのだから、何でもいい。


 とりあえず、いまするべき事は――


「敵の大将を討ち取ったぞ! 勝ち鬨を上げろ!」

 マコトが全力で叫ぶと、多くの味方が大声で答えてくれた。


「「おお!」」

 こちらの勢いに圧倒された、敵が逃げていった。


 ふう、助かった。

 もう限界に近かったのだ。


 近くにいた兵士に、マコトが話しかけた。


「俺と、そこに転がっているカイトの治療を頼む! 絶対に死なせるなよ!」


「は、はい」と、兵士が答えてくれた。

 これで、よしと。


 そこで、体力的に限界だった、マコトが意識を失った。

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