第12話 仕事ができる大人は、面倒事を押しつけるのが上手い
こちらの指揮官であるリョフが、戦死したという情報が入ってきた。
始めは嘘だと思ったが、すぐにリョフの首が砦に投げ込まれたのだ。
その後の混乱は酷いものであった。
幸いなことに、領主(中堅の指揮官)が揃っていたので、なんとか敵を追い返すことができた。
もし領主(中堅の指揮官)がいなかったら、負けていただろう。
まあ、過去のことはどうでもいい。
問題は、これからの事だ!
砦に残っている兵士は、150
内訳は、砦の守備兵が、60
領主の兵士が、15×6=90
砦の守備兵は指揮官と副官が死んでしまったので、部隊としてはあまり機能していなかった。
まあ、怪我人も多いし、守備兵の中から新しい指揮官を見つけるのは無理だろう。
会議室に集まっていた面々に、マコトが語りかけた。
「新しい指揮官を決めて、この難局を乗り切りましょう!」
「「…………」」
ええ、ノーリアクションかよ!
てか、武勲を欲しがっている領主が、指揮官に名乗りを上げると思っていたが、誰も立候補しなかった。
それだけ、難易度が高いと思われているのだろう。
本当に、誰か元の世界に戻る方法を教えてくれないかな?
そんなことを考えていると、領主の一人が提案してきた。
「率いている兵数的には、シンさんが指揮官に相応しいでしょう」
こちらが『断った方がいいんじゃないかな』という感じの目配せを送ると、養父であるシンが大きく頷いた。
「わかりました。お引き受けします」
うわ、全然伝わってなかったよ。
シンに近づいて、マコトが耳打ちした。
「なんで、引き受けたんですか?」
若干の沈黙の後、シンが答えてくれた。
「このまま誰も指揮官にならなければ、負けが確定してしまいます」
その認識は、正しいと思う。
「それに、ほぼ同格の領主が揃っているので、誰が指揮官になっても、大して変わりませんよ」
そんなものなの?
マコトが困惑していると、シンが口をひらいた。
「それでは、この戦いが終わるまで指揮を執らせて貰います。問題や反対意見があれば、遠慮なくどうぞ」
反対意見が出てこないことを確認してから、シンが言葉を続けた。
「まず、敵よりも味方の方が少ないので、籠城を続けようと思います」
シンの提案を聞いた、領主たちが無言で頷いた。
まあ、無難な提案だし、当然のリアクションだろう。
「次に、砦の修復は激戦地である、正面門の近くから直していきましょう」
シンが、具体的に指示を出していく。
ここまでは、順調に話が進んだ。
だが、半減した砦の守備兵の代わりに、誰が正面門(最激戦地)を守るかで、領主たちが揉めた。
そりゃあ、誰も激戦地なんか守りたくないよね。
結局、激戦地の守備は、領主たちが日替わりで担当することになった。
なんというか、先行きが凄く不安になる出来事であった。
その日の夜。
寝付けなかったマコトが見回りをしていると、ヒミコの弟であるカイトが近づいてきた。
「僕が見張っているので、マコト様は休んでください」
ヒミコは売春宿に売り飛ばされなかったが、日陰者(妾)になってしまった。
そのことを、カイトはどう思っているのかな?
マコトが質問しようとした所で、カイトが質問してきた。
「……あの、どうやったら強くなれますか?」
強くなる方法か。
たぶん、実戦経験を積みまくれば、強くなれるだろう。
俺なんか戦闘訓練をしたことないのに、戦っていたら目茶苦茶強くなってしまったからな…………
だが、この方法は普通の人に教えるべきではないだろう。
命が幾つあっても、足りなくなってしまう。
そうだな――
「訓練だ! 訓練しまくれば、人は強くなれるぞ!」
こちらの発言を聞いた、カイトが微笑んだ。
「わかりました。毎日、訓練します!」
まあ、そんなに間違ったことは教えていないと思う。
てか、そもそもだ。
「どうして、そんなに強くなりたいんだ?」
こちらが尋ねると、カイトが身を乗り出してきた。
「だって、僕が強ければ、みんなを守れたから!」
そうだな。
この前の山賊戦で、多くの村人が殺されたのだ。
力を求めるのは当然だろう。
立ち上がってから、マコトが口をひらいた。
「それじゃあ、少し稽古をつけてやろう。カイトは体が小さいから、それをいかした戦い方を考えよう」
嬉しそうな表情を浮かべて、カイトが大きく頷いた。
「はい!」
この日、カイトの修行に、マコトが遅くまで付き合った。




