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華やかなる追跡者  作者: 槇野文香(まきのあやか)
7/9

第7話

「華浦、もっと積極的に圭の弱みを探れよ」

 と拓馬は度々言っていた。

 確かに今のままでは、圭を追い詰めるだけの情報はつかむことはできなかった。

 圭は用心深く、秘書でも彼の仕事の本質的な部分まで踏み込むのは難しかった。

 その後、華浦は圭のデスクをのぞき込むようにした。デスクの中は綺麗に整頓されているため、時間がないと、見ることができなかった。

 初夏の暑い日だった。圭は出かけていた。夕方まで会社には帰ってこない。今日こそ彼の何ものかをつかみたい。華浦はそう考えた。

 彼女はそっと彼の部屋に入ると、彼のデスクの椅子に座った。そして引き出しを開けた。引き出しの中は乱れなく戻しておかなくてはならない。

 彼女はその中の書類を、一枚一枚確認していった。ブラインドの隙間から陽ざしが鋭くさしていた。

 一時間ほど見ていたが、これといったものは出てこなかった。やはり、彼のパソコンを見ないとだめか。でも、彼のパスワードがわからない。

 その時、部屋のドアが開いた。

「華浦、何をしているんだ」

 圭だった。彼の冷たい視線に、彼女は一瞬すくんだ。それから「圭」と小さく言った。

 どうして彼は戻ってきたのだろう。

「この頃、おかしいと思っていたら、やはりこんな事をしていたのか」

 彼は険しい顔をして言った。華浦は彼の椅子から立ち上がった。

「あなたのデスクを探ったのは、これが初めてよ」

 華浦は、精一杯の勇気をふりしぼって言った。

「君は何のために、こんな事をするんだ」

 彼の怒りに満ちた声が、彼女の胸にひびいた。華浦の目から涙が溢れた。

「私をくびにする」

 と華浦はきいた。彼は青白い顔をして、しばらく彼女を見ていた。

「君のことは、改めて返事をする。今は自分のデスクに戻りたまえ」

 と圭が厳しく命じた。

 華浦はうなだれて彼の部屋から出た。自分のデスクの椅子に座ると涙をふいた。これで、すべて終わった。明日、辞表を出そう。そう決意した。


 翌日、決意を胸に出社した。しかし、九階のオフィスには圭はいなかった。すでに、時計は朝の8時半をさしている。

 華浦は胸騒ぎを覚えた。

 仕事は手につかず、ぼんやりとパソコンの画面を見ていた。時計が10時を過ぎたときだった。圭がエレベーターから降りてきた。

「どうしたの」

 と華浦がきいても、無言のまま、圭は自分の部屋に入っていった。

 すると、拓馬が圭を追いかけて来るように、九階のエレベーターから出て来た。拓馬の顔が怒りで黒々としているのがわかった。拓馬も華浦を無視し、足早に圭の部屋に入っていった。


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