第6話
朝食をたべたあと、圭は自分の車で華浦を彼女のマンションまで送ってくれた。圭は、そのまま社長の入院している病院へと向かった。
華浦は自分の部屋に戻ると、そのままベットに横たわった。彼に愛されたという充実感に満たされ、幸せだった。そして今も、別れたばかりの彼が恋しい。
でも、これからどうしよう。拓馬のこと、どうすればいいのだろう。
その時、彼女の携帯が鳴った。拓馬だった。
「華浦、昨日は音信不通だったじゃないか」
「酔って、寝込んじやったのよ」
「その横に誰かいたんじゃないのか」
華浦はむっときた。
「なによ。その言い方、私のプライベートはあなたには関係ないわ」
拓馬は怒りに満ちた声で言った。
「おおありだ。君が今朝、圭の家から出て来たのを見た人間がいるんだぞ」
華浦は黙った。
「奴を探るために抱かれたとでも言うのか」
「拓馬、そんな言い方はやめて」
華浦は怒りを感じた。
「華浦、君に見せたいものがある。君のパソコンを開いて、僕からのメールを見てくれ。今すぐにだ」
「なんなのよ」
「いいから、見てみろ」
華浦は彼の言われるとおりにした。そこには一枚の写真が添付されていた。
華浦は愕然とした。
圭が美しい一人の女性と並んで歩いている写真だった。二人の表情と寄り添う様子から、恋人同士であることは明白だった。彼女は髪が長い、すらりとした長身の美しい女性だった。こんな綺麗なひとはそうはいないだろう。彼との姿はまるで映画の中の恋人のように理想的だった。
「わかったか華浦。圭はああ見えてももてるんだ。今まで何人もの恋人がいたんだ。写真の彼女は元モデルだよ。自分だけが愛されているなんて思っているんじゃないだろうな、華浦」
華浦は頭の中がぐるぐると回っているような気がした。
「別に、圭のことなんて気にしていないわ」
やっと、言葉が喉の奥から出てきた。声が虚ろだった。
「圭には気をつけろ。君のためだ」
と拓馬は言うと携帯を切った。
確かに、圭に他に女性がいないなんて考えにくかった。それなのに、自分は圭を信じてしまった。我ながらおめでたかった。と華浦は思った。しかし、もはや林田圭は自分の心の中に入りこんでしまっている。この苦しみをどうやって、取り除くというのだろう。
華浦はベットにうつ伏せになって泣いた。
恋は何度もしてきた。それなのに、嫉妬にこれほどまでに苦しめられたのは初めてだった。
圭は私と別れたあと、ひょっとしたらあの彼女と逢っているのかもしれない。私にしたように、やさしく抱きしめたり、朝食を作ってあげたりしているのだろうか。そう考えるだけで、華浦は苦しくて呼吸が止まりそうだった。胸の痛みが全身をさいなむようだった。
「華浦おはよう」
月曜の朝、九階のオフィスに入ると、圭がいつものように仕事をすでにしていた。
「おはようございます」
と華浦も言った。いつものつもりだったが、言葉が冷めていた。
「君も疲れたのかな。今日は顔色が悪いよ」
圭が華浦の様子がおかしいことに気がついた。
「別に、何もありません」
と華浦はそっけなく言うと、ブース内の自分のデスクについた。
何もかもあなたのせいよ。こんなに私を苦しめて。そう詰め寄りたかったが、彼女のプライドがそれを許さなかった。それでいて、ちょっとすると涙が滲みそうだった。
いけない。いけない。もう、惨めな女はやめる。と華浦は自分に言い聞かせた。
決して、圭には負けない。




