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ジュリエットは力持ち  作者: 瑞希
『過去の恐怖』
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『卑しき者へ祝福を』

「改めまして

 私は力道りきどう 帆凪はんなです。能力レジは力業!」

「僕は彩瀬あやせ けい、植物。」

「私は秋風あきかぜ 屑娜せつなです。能力レジティーマは風です。」


音澤おとさわ 愛雅えみやです。えっと、音です」

火砕がさい 泰芽たいが。火。」

水の能力をもち、哀れな双子である

清水しみず 倖架ゆきか清水しみず 懐架なつかが到着して飲み物を飲んでいた。

どうせ、ハヤテの能力レジには多少時間がかかるし、

そのすきに私たちは改めて自己紹介をした。


「それにしても“エミヤちゃん”が…」

心のなかで言ったつもりだったが思わず声が漏れてしまった。

だが、恐らく誰にも聞こえていないと思う。

エミヤさんは自分が“仇篠の忌み子”だと言うことを知っているのだろうか。


「…出たみたいだ」

ハヤテが悪魔を見つけたようだ。

操辻あやつじ家は先代から糸を操れるようになり、

町中に特殊な糸を張り巡らせているらしい。

これで悪魔感知がより正確になった。


セツナの風は範囲はとんでもなく広いが、

風に乗って声を聞くだけなので、信頼性に欠ける。

ひいらぎは範囲もそこそこ広く、悪魔だと確実に解る。

操辻あやつじは範囲は広くはないが、位置などが明確に解る。

千里せんりは範囲は極端に狭いが強さやルーンを見極められる。


使う順番としては

風の家が怪しい所を出して、

ひいらぎが悪魔かどうか確かめ、

操辻あやつじが明確な位置や数を出し、

千里せんりが実践で強さやルーン、一定の予測を出す。

といった感じだ。みんな暇な訳ではないので、

いつもこうとはいかないが、これが一番正確で楽だ。


「どこですか…」

「…屋上のようだ」

セツナはハヤテの言葉に頷いて、私たちに目で合図を送った。

私は目で頷いて立ち上がった。

中学生組もユキカを除いて立ち上がった。


「あっ…」

私を含めたみんなが、ジトォッとした視線を送ると、

ユキカはやっと気付き、慌ててジュースを飲んで立った。


「中級ですか?

 解らなければ私も使いますが。」

屋上へと移動していると、

セツナがハヤテに冷静な声で言った。

ハヤテの能力レジの見え方は知らないけど、

実際に見て聞いた人の声が聞こえるのだから、

相手の見た目とかはセツナの得意分野だ。


「いや、おそらく低級だ。

 それが…四匹。」

本当にどう見えているのだろう。

見えて居るのではなく糸に触れられているのか…。

あ、大体の位置を確認したら、そこの糸を増やすのかな。


「四匹ですか。」

「人も多い。エミヤの能力レジを使おう。」

エミヤさんの能力…。

大石先生が言うには闇じゃなくて音の方らしいけど…。

でも、仇篠の忌み子が“エミヤちゃん”なら有り得るかもしれない。

私が“エミヤちゃん”にここまで心酔しているのも…。


「では、一体を私とケイさん。

 もう一体をハンナさん。」

「うちは一体をユキカとナツカ。

 一体を俺とタイガが。サキアがエミヤの援護。」

私はセツナとハヤテの言葉に頷いた。

まるっきり初めてではないとはいえ、

いつもこのメンバーではないのに、

二人とも全員の力量を良く把握している。


「…どれ!?」

屋上に着くとカラスと猫と大勢の人間が居た。

カラスも猫も四匹ずつ居て、確かに若干迷うが、

私はなんとなく猫な気がする。

変な靄みたいなオーラが見えるのだ。


「猫の方みたいよ。」

サキアお姉ちゃんが言った。

どうやら、当たったようだ。

ただ単に勘が良いのだろう。

それとも、力道の能力の一環なのか…。

例えそうでも、正確性にも欠けるし誰かに言うつもりはない。


「じゃあ、僕らは一番左。」

そう言ったのはナツカだ。

双子は息ピッタリに同時に走り出していった。

ユキカはただのアホだが、ナツカは少し違う気がする。

普段優しそうに笑っているが、戦闘になると全くの無表情になる。

ちょっと怖いし、たまに靄?見たいなのまで見える。

違う。そんな訳がない。ただの私の思いすごしだ。


「私たちは一番右を押さえます。」

セツナはそういうとケイと共に走って行った。

ケイは初めから戦闘に慣れていた。

驚いて経験があったのかと聞いたが初めてだと言っていた。

イワユル、天才なのだろう。


「じゃー、私は真ん中の右~。」

私は何となく面白くなくて、気の抜けた声で言った。

言ってからハヤテに怒られるかと思ったが、

よほど自分のエミヤさんが心配らしくあんまり聞いていない。

二人は結構、複雑な関係で異母兄妹なのだ。

ギクシャクしているのかと思っていが、至って普通。

それどころか仲良しだ。

ハヤテって元々優しすぎるからなぁ。

それが弱点でもあるって、柊のおばあちゃんも心配していた。


「とにかく、仇篠の忌み子のお手並み拝見?」

自分で言ってて鳥肌が立つ。

私はなんて酷い言葉を言えていたのだろう。

血とは何故こんなに残酷なのだろう。

私は自分への怒りを外に出さないように、

まるでケイのような笑みを浮かべて、

私のように卑しい。猫の姿をした悪魔を捉えた。


「リミッター解除。」

猫の姿をしているだけあってすばしっこいが、

能力者レジティーマである私たちの敵ではない。

私はリミッターであるネックレスを外し、

自分の脚に能力を発動させた。


今の私ならチーターとドッコイかもしれない。

…チーターの速さは知らないけど。

案の定、私はすぐに猫を捕まえられた。

私にしてみれば朝飯前だ!

心配無用だとは思うが、一応セツナやケイの姿を探すと、

ツタや風の壁でしっかり捕まえていた。


「いつでもいいよ」

姿は見えないが私はサキアお姉ちゃんに向かって言った。

千里の力でエミヤさんに合図を送ってくれるはずだ。

そのとき、突然空気が震えた。


「え…?」

私は息が止まるかと思った。

一瞬何が起こったか解らなかったが

それはエミヤさんの声。歌だったのだ。

心の奥にまで届き、癒してくれる優しい歌。


光圀みつくに…?ううん、違う。」

大石先生の言う通り、これは確かに光だ。

でも、光圀みつくに有光ありみつのような貫く光じゃない。

ふわふわした、包み込むような優しい光。

その光は、卑しい悪魔たちでさえ包み込み

討伐ではなく、浄化してくれた。

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