『音澤の仇篠』
「あー!もう!ややこしいったらありゃしない!」
「ハンナ…どうして、そんなに荒れてるの?
中学生組と一緒なんて珍しいことじゃないだろう?」
私はイライラしながら声を荒げて頬を膨らませた。
ショッピングモールへ行くため、バス停に向かっている私が
何故こんなにイライラしているのかと言うと。
まあ、色々あるのだ。正直説明がめんどくさい…。
「どうもこうもないの!
はぁ~あ~。中学生組の中に、
エミヤちゃんが居たらなぁ~!」
今度こそ説明しよう!
“エミヤちゃん“とは彗星の如く現れた超大型新人歌手!
私もエミヤちゃんに気づいたのは、最近なんだけど…。
でも!エミヤちゃんに対する情熱は誰にも負けない!
「エ、エミヤちゃん?誰?クラスの子?」
「あんた、エミヤちゃんを知らないの!?アンタもまだまだね!
エミヤちゃんっていうのは人気歌手よ!
ドラマにも出演決定したのよ!」
私が自信満々にエミヤちゃんについて、
ペラペラと解説すると、ケイは驚いた顔をしてからにこりと笑った。
「そっか。ハンナはその人のことが本当に好きなんだね」
「あ、当たり前でしょ!」
好きとか言う直球過ぎる言葉に少し照れたが、
私は胸を張って答えた。事実だし。うん。
「あ。あれ、セツナじゃない?」
「ホントだ!おーい、セツナ~!」
一歳年上の6年生である
秋風 屑梛に私は手を振って声をかけた。
するとセツナは私たちに気づきこちらに歩いてきた。
「こんにちは。ここからだと、
バス停までに少しかかりますが良かったのですか?」
「いーの、いーの!3人で行った方がいいでしょ?」
私とケイはもうひとつ前のところのバス停の方が近いのだが、
ちょっと金欠なのと、どうせなら3人で行きたい。ということで、
一つ向こうのセツナの家に近いバス停に向かうことにしたのだ。
「さ!早く行って!早く終わらせちゃおう!」
嫌な気分を紛らわせようと、後ろを向きながら走り出すと、
うっかり、誰かにぶつかってしまった。
「すっ、すいませんっ!
あれっ!?、もしかしてエミヤちゃんですか!?」
ぶつかってしまった拍子に、相手の帽子が落ちた。
その素顔は何と私が夢にまで見たエミヤちゃんだったのだ!
聞いては見たものの私が見間違えるはずがない!
「あー…う、うん…。もしかして迷子?」
「いえ、ちょっと…。私、ハンナって言います!」
私はこの世で一番の幸せ者だ!
まさか生エミヤちゃんに会えるだなんて!
生で見るとますます可愛い!
平常心を保とうとしてもどうしても満面の笑みになってしまう!
「ハンナ!大丈夫?」
ちっ、邪魔物がいたか。セツナはともかく、ケイはちょっと邪魔ね。
偵察だけ任せてエミヤちゃんと一緒にいられないかしら。
「あ、彼氏?」
「違います!!!」
エミヤちゃんからの質問はすごく嬉しいけど、
ケイが彼氏だなんてとんでもない!!!
…別に嫌いな訳じゃないんだけどさ。ってなに言い訳してるんだろ。
「ん?誰だ、その子?」
「ハンナです。彼氏さんですか?」
家のなかから中学一年生くらいのアホそうな男の子が出てきた。
どうせ違うだろうけど、さっきの仕返し!
「ち が う!」
「エミヤさん、これから何処に?」
そんなことよりエミヤちゃんの行き先が気になる!
もしもショッピングモールなら一緒に行けるじゃない!!!
違ったら任務放棄してやるわ!
「え…?ショッピングモールに…」
「私もなんです!一緒に行きませんか?」
懇願したがエミヤちゃんは何故か渋っているようだ。
やはり、デートなのか…。でも、こればっかりは譲れない!
ここは親戚のお姉ちゃんから習った必殺技を使おう!
「ダメ…ですかぁ…?」
上目遣いで目をうるっと潤ませ私はそういった。
親戚のお姉ちゃんによれば、
私がそういって拒否できる人は少ないらしい。
案の定、エミヤちゃんは折れてくれた。
アホそうな男子がもろともしてないのは放っといて。
(やっっったぁぁぁぁぁあっ!!!今日は最高の日ね!!!)
「ケイです」
「私はセツナといいます。」
「俺はタイガ」
エミヤちゃんと一緒に居た、
アホそうな男の子はタイガと言うらしい。…まあ、興味ないけど。
互いの自己紹介を終えショッピングモールに着くと
千里眼の能力を持つ
千里 咲空と
操作の能力を持つ
操辻 颯天が立っていた。
「あ!サキアお姉ちゃーん!」
再開に嬉しくなり私は迷わずサキアお姉ちゃんに抱きついた。
「え、知り合い…なんですか?」
「知り合いも何もあの三人が小学生組だ」
「えっ、そうだったんすか…!」
て…ことは、エミヤちゃん!(と、アホそうな男の子)が新しい中学生組!?
なにそれ最高じゃん!もう仇篠の忌み子とか火の子とか、どうでもいい!!!
「どうぞ、よろしく!
音澤 愛雅さん!」