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ジュリエットは力持ち  作者: 瑞希
『過去の恐怖』
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『仇篠の謎と火の子』

「懐かしいなぁ……」

「げっ、その写真とってあったんですか?」

大石先生がアルバムに納めているその写真は

ケイが小学生四年生のとき引っ越してきたときの写真だ

ほんの一年前のことだけどずいぶん昔のことに思える


「おう、大切な思い出だからな」

大石先生はなにかとつけては記念とか言って

すぐに写真を撮りたがるそれは私が小学生一年生の時からで

そのときの写真もこの思い出アルバムに納められている


「まだ一年しか経ってないんですね

 そういえば、仇篠の子が入ったんですよね」

前々からごく一部の人の中で言われていた仇篠の忌み子が

今年から中学生になり、能力やら色々を本人に伝え、

能力部に、もう一人の火の子と入ったらしい。


「あ。ああ、やっぱりハンナは知らされてたか」

「小学生でも異端の頭首ですから。」

小学生である私が

強い権力を持っているのには、二つの理由がある。

一つ目は元々私の家、力道家が能力者の中でも

異端という重要な家系だからだ。

二つ目は私のお母さんに能力がなかったことだ。

じいじとばあばは、二人とも能力を持っているのに、

なぜかその娘であるお母さんは能力を持たなかったため、

本来お母さんがなるはずだった力道家頭首の座は、

能力をもつ私に譲られた。


この二つの理由により私は、

小学生という異例の幼さにして、強い権力を持っている。


「…そうだな

 ああ、それで仇篠の子だが、

 今は音澤という苗字で、能力は音だ。」


「…え、ええっ、音なんですか?闇じゃなくて!?」


「そうなんだ、闇どころか

 光といえるほど見たいなんだ」


「光の…?まさか20年前に光圀家は滅ぼされて…

 ましてや、何故、仇篠の子が………」

光の家系はとても力の強い家系だったが

20年前に本家である光圀家が悪魔によって滅ぼされ

分家も五年前、有光家を最後に、行方不明事件で完全に滅ぼされたはずだ。


「その理由がさっぱりなんだ

 音澤はただ音の家系であって闇でも光でもない

 だが、仇篠の子の音は完全に光だそうだ」

大石先生の言うとおりだ

音は音であってそこに闇も光もない。

だが、仇篠の子は完全に光だという、

彼女の母親は闇の力を持っていた。

それなのに、その娘であるはずの仇篠の子が光を持っているなんて。


「もし、祖父母や親戚の中に、

 光の力を持つ人がいるなら、ありえなくはないですが」

少なくとも、父方の音澤の中に光の力を持っている人はいない。

遠くさかのぼればいるかもしれないが、そこまで詳細な情報は今手元にはない。


そして、母方に至っては光と対になる闇だ。

母方の親。つまり仇篠の子の、祖父母の力は一切分かっていないが、

悪魔なのだから光とは考えにくい。


「謎だな。」

「謎ですね。」


「なぞなぞ?」

「「うわっ」」

突然後ろから聞こえてきた声に、思わず大石先生と一緒に、声をあげてしっまった。

「ってケイかぁ、

 びっくりさせないでよ!」


「ごめんごめん。それで何の話?」

不条理に怒られたにもかかわらず、

それに対して気にする様子もなく、にこやかに聞いてきた。

「え、ええっと…」

返事に戸惑いながらちらりと大石先生を見た。

仇篠の子について、まだ話していいのかがわからないからだ


「…ああ、今年から中学生組に入った、

 音の子と、火の子の話をしていたんだ。」

大石先生うまい!嘘を言っているわけじゃないし

そもそも小学生相手に忌み子とかどうかと思うし。

……私はいいのよ私は。頭首だから。ね?


「ああ、そうなんですか

 中学生からって珍しいですね」

ケイのように、小学生から転校する人はざらに居るが、

中学生からというのは、確かに珍しい。

仇篠の子に隠れて気がつかなかったが、

火の子ってなにものだ?

火の家系に火伜家なんてあったかな…


「その家にちょっとした事情があるらしい」

ちょっとした…?そんな理由で、柊のおばあちゃんからの命令を

無視できるほどの権力者なんて居たかしら…。それとも人柄?もしくは…


「失礼します」

「おお、セツナ」

声をかけながら扉を開けて入ってきたのは、

私の一年先輩で、六年のセツナだ。


「すみません、いつもいつも委員会で」

セツナは申し訳なさそうに、

大石先生に向かって、丁寧に誤った。


「良い良い、気にするな。

 どうせ、小学生組は、雑談とか偵察ばっかだからな。」

大石先生の言うとおり。まだ小学生の私たちは、

安全のため、ほとんど偵察ばかりだ。

実際に悪魔を倒しにいくのは、中学生から。

でも、最近、高校生組の御三方が、カレンさまを中心に、

悪魔に関わりたがらなくなってしまっている。

(まぁ、しょうがないけどね。)


カレンの唯一の親友が、悪魔との戦いに巻き込まれ

それが引き金なって、今も入院している。

それに加え魔のものの増加。

そのおかげで、唯でさえ人手不足の能力者たちは、てんやわんや。

「やはり、委員会に入ったのは失敗でしたね。

 すみません……。」

そういうとセツナはうつむいて、深く考え込んでしまった。

「いや、今が異常なんだよ。

 本来なら、学業が優先されるはずなんだが、

 能力者の減少に、魔のものの増加とか………」

大石先生は言い終わると、深くため息をついた

大人たちは、さぞ頭を悩ませているのだろう


「そうだね。前々から思ってたけど、

 やっぱり、学生と社会人が傍らにやるのには、少し無理があるよ。」

昔みたいに、悪魔が全然居なければ成立していたが

魔界で何があったのか、急に魔のものが増加したのだ。

「ま、僕らは敵を倒すだけだよ

 組織はひいらぎに任せて技術はからさおに任せれば良いさ」

「ま、まぁ、そうなんだけどさぁ」

ずいぶん楽観的に言ってくれるものだ

でも、今だけは有り難い。正直、重い話ばかりで気が滅入りそうになっていたのだ。


「はい。考えなしではいけませんが、

 深く考えても、仕方がありません。」

「セツナが言うなら…。」

二人のおかげで気持ちが楽になった

ケイにはぜっ―――――たい!言ってあげないけど。


ケイはそんな私を見てにっこりと微笑んだ

(…その顔が一番ムカツク。)


「あ………」

「な、なんですか、大石先生。」

目を泳がせながら、口をパクパクと動かしてる

こういうときは、大概、ろくなことを言わない

「いや、今思い出したんだが…その……」

「だからなんですか」

なおもいいにくそうに口ごもる大石先生に、

苛立ち睨むと、やっとまともに話した


「来週、中学生組と偵察行くことになった………」

次の瞬間、私の気持ちはズーンと重くなった。

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