『新生小学生組誕生』
キーンコーンカーンコーン
やっと放課後になった。
授業中はケイとノートで話して変に疲れるし、
放課は放課で女子の雪崩に巻き込まれて、
その度にスズナやリューに引きずられるし、
もうヘトヘト……………
「じゃあ、ハンナ。
またね」
スズナはもちろん一般人で、手芸部に入ってる。
掛け持ちしたいなぁ、とも思ったんだけど流石に無理だった。
「明日は手伝わねーからなぁ…?」
リューも一般人で、サッカー部に所属している。
部活が始まる前なのに、ヘトヘトな顔になって外に出て行った。
それもそうだろう。
引っ張っていたのは、七割型リューだ。
スズナは力仕事は苦手なのだ。
それに、それをさせるリューでもない。漢だね!そういうところは好きだよ!
「私も行くか~…」
ランドセルを背負って西校舎の特殊能力部に向かった。
「ううっ…
いつまで経っても、西校舎の不気味さにはなれない。」
両腕で肩をさすり、怖いのを紛らわそうとした。
私は怖いのが大の苦手!
世にも奇妙な~~を見た夜はトイレに行けない…。
ああ、思い出したら怖くなってきた…!
「わっ!」
「キャァァッ!」
突然後ろから聞こえてきた声に、私はその場に座ってうずくまった。
「ご、ごめん…
まさかそんなに驚くとは……………」
その声に振り向くと、綺麗なお化け…じゃなくて、ケイが申し訳無さそうに立っていた。
その姿に驚いて、私は慌てて立ち上がった。
「べ、別に驚いてない!」
たった1日で2回も弱いところを見られるなんて…!
恥ずかしくて情けなくてしょうがない!
「大体何であんたがここに居るの!?」
よく考えてみたらここは、部外者が居て良いような場所ではない。
この校舎は、普段は特殊能力部の為だけにあるのだ。
「何でって…、僕も今日からここの部員だから」
ケイの言葉に、私は驚いて思わず眉を潜めた。
「…そんなわけ無いでしょ…?
許可は貰ったの?!」
表向きにはただの部活だが、ここは能力者の部。
ケイが部員になるはずがない。
ケイの為にも、私達のためにも、簡単には通せない。
「貰ってるって」
あれっ?!
ハッとして振り向くと、ケイは特殊能力部のドアを開けて中に入ってしまっていた。
「お、2人とも来たか」
慌てて追いかけた私とケイを出迎えたのは、大石先生だ。
「大石先生!
ケイが部員ってどういうことですか!?」
私は大石先生に慌てて詰め寄った。
許可は貰ってるって…ケイに能力者の様子なんて…!
「間違いじゃないぞ?
立派な、力を持つ家系の子だ。」
大石先生は後ろの方にあるホワイトボードに、ケイの苗字…彩瀬と書き、彩の木に丸をした。
能力者の苗字には、その人の能力を連想させる字が入っていることが多い。
まあ、もちろん絶対じゃないけど。
ケイが微笑んで、私に手を差し出した。
「改めてよろしく」
「……よろしく」
いまいち腑に落ちて居ない私は、無愛想に言ってしまった。
「ところで、ハンナの能力は何なの?」
ケイの問いに、待ってましたとばかりに、大石先生は笑った。
「ハンナのは超分かり易いぞ」
私はふてくされた顔のまま、大石先生に近づいて、片手でひょいっと持ち上げた。
「うおっ!」
私は溜め息をついて、慌てた顔をした大石先生を降ろした。
「私の能力は“力業“」
ちなみに、いつもこんな風な訳じゃない。
今はリミッターを着けてるんだから、こんなこと出来るわけがない。
車に轢かれかけたから、事故防衛が働いているみたいだ。
この状態なら、轢かれても私はたぶん大丈夫だった。
……いや、車に乗ってる人が危ない。
「小学生組は2人だけだったけど、これから賑やかになりそうだな~」
にこにこと嬉しそうに大石先生が言ったと同時に、ガラッとドアが開いた。
そこに立っていたのは黒い髪、黄土色の瞳の少女。
「すいません、委員会で遅れてしまいました」
ぺこりと御辞儀をして、部室に入ってきた。
「紹介するな?この子は
秋風 屑梛。六年生だ」
さっきと同様に、ホワイトボードに名前を書いて紹介した。
「ケイさんですね?話は聞いています。
私の能力は風です。
生徒会長をやっております。」
ケイに向かって、もう一度ぺこりと御辞儀をした。
それにならってケイも、セツナにお辞儀した。
「小学生組全員集合だな!
これからこのチームで頑張ろう!」