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ジュリエットは力持ち  作者: 瑞希
『ヒーロー大作戦』
17/23

『幸福のための力』

その帰りに、私はカレンからの着信を受けた。

悪魔の討伐だと言うのに、私とケイとの内容では違っていたようだ。

一斉送信ではなかったから。

…私だけ?異端ゼノだけ?

それは確認のしようがない。


でも、それ以上にずっと驚いたのは、その内容だった。

続いて届いたのはおばあちゃん(柊 志野)からの召集令だった。

私はすぐにわかった。と送った。


「またね。ケイ。」

私にはおばあちゃんを裏切るなんて出来ない。

家族と同じくらい、大切な人だもん。

命の恩人だもん。


…けど


私は少し止まって後ろを振り返った。

ケイの姿なんて見えない。

それでもすぐそこにケイが居るような気がして、それだけで先の道が愛おしく思えた。

それと同時に悲しみを感じる自分も居た。


…だけど、あともう少しだけ。もう少しだけ。お願い。




「ちょっと待って!

 全然意味わかんないよ?!」

カレンの話を一通り聞いてはみたものの、全く意味がわからない。

死んだはずの人の姿記憶を模した悪魔でないものが現れ、マキリ先輩のリミッターで力を扱い、エミヤと共に倒した。って。

あってはならないことが多すぎる…!


「小学生には解り辛かったかしら?」

「ひどっ!

 って、そうじゃないって!!!」

久しぶりのカレンの毒舌にちょっと安心はした。

何はともあれ、本当に良い化学反応を起こしてくれたらしいのだ。

まさに女神!


高校生組担当の、清水しみず ゆうさんが冷や汗をかいて、口を開いた。

「まず、ポイントをまとめます。

 ひとつ、悪魔以外の敵が現れた

 ひとつ、記憶を模していた

 ひとつ、リミッターをそれが扱えた

 以上だね?」

責任を感じているのかもしれない。

けど優さんが感じる責任はないし、むしろ倒してくれてセーフ!!


けど、足りてないものがある

「ひとつ、エミヤさんの歌が悪魔以外も倒せると言うこと」

私のなかで一番大きいのはそれだ。

私の言葉に、カレンもおばあちゃんもみんな息を飲んだ。

物理系以外の能力レジでは、悪魔以外に危害を加えることが出来ないはずなのだ。

…はずだったのだ。

エミヤさんが特別なのか

試してみたこともなかっただけで、能力レジとはそういうものだったのか

それが悪魔と関連するものなのか


「…問題は四つか」

さすがのからさおさんも渋い顔で髭を撫でた。

リミッターなんかは思いっきり枷さんの管轄だ。さぞ頭が重いことだろう。

そして、悪魔以外の敵が現れたと言うのはおばあちゃんの管轄に入る。

今まで大まかな悪魔の探知や抑制はおばあちゃんがやってくれていた。

それが、悪魔以外の敵が現れたとなると…。


正直、全員頭が重い。

めちゃ重い。

ただでさえ戦力不足なのに…!

っていうのが一番切実。


「さて…叩かれる前に言っておくが、

 リミッターは悪魔には触れることすら出来ないようになっている。」

おばあちゃんはそれを知っていたように頷いた。

私はそうだろうとは思ってたけど、初めて聞いた。

それならリミッターに触れられた時点で、それは悪魔まではない。


「だったら…何なのでしょうか…」

それの正体とは…。

セツナが凄く怖い顔でそう言った。

セツナは悪魔が嫌いだ。凄く嫌い。

私も嫌いだけどそこまでじゃない。

まあ、セツナはTHE 正義!だからそうもなると思う。

一家揃ってな!


「血は出なかったし、死体もなかった。

 人と言うのはないわね。」

そりゃ、もう、悪魔なんじゃ……?

でも、違うんだよね………。


他にあるものっていったら…

「……魔導士…とか、あったよね」

もう幻と化している悪魔とは違った異世界の存在。

関係ないからって詳しい話とかは何も聞いてないけど…。


「そういった文書は、音澤家に…」

エミヤさんの本当の家だ。

今は操辻家の管理下に入っているらしい。

まあ、夫婦だし当たり前か。

いつも思うけど、あそこの家も大分複雑だよね~。

今のご時世で二股なんて。しかも姉妹相手に。

どういう神経してんだか知らないけど………………ウラヤマシイ。

じゃなくて!さいてー。


…いや、けど、何でそんな文書が、柊家や枷家じゃなくて、音澤家にあるの??

「…あれらの文書は音澤家の血筋のでないと開けられない。」

どうやら、金庫か何かに入っているらしい。

…けど、音澤家の血筋ってエミヤさんだけ…じゃん。


「更には基本的には音澤家の血筋の者にしか見ることはできない。」

てことは、おばあちゃんも枷さんも見たことない………。


終わった。


…………ん?………ってない!!!!!!


私は声が出そうになるのをグッと押さえた。

そこに一体、何が書かれているのか解らない。

もしかしたら、エミヤさんにとって不利になることかもしれない。

だから、これは、みんなには内緒。



















私にやるべきことができた。

やりたいこと

出来るかもしれないこと。

私はそれのために奔走した。


「ハヤテ先輩!!!」

私はそれからしばらく経ってから、操辻あやつじ家に押し掛けた。

ちなみにすぐ近くは音澤おとさわ家本家だ。


「な…、断る。」

「まだ何にも言ってない…!!」

開けた途端、用件を言う前にさっそく閉め出されそうになって私は慌ててドアを掴んだ。


「だっ……から、一々 能力レジ使うなって…!!」

ハッとして、私はドアから手を離した。


やっば、全然だめだ。

リミッターの位置は、頭や首に近ければ近いほどその制御が強力になる。

エミヤさんの髪飾りと、カレンや私のネックレスやチョーカーが一番強力なのだ。………が、制御出来てない。

やっぱり、私もチョーカーにした方が良いのかなぁ…もしくは髪飾り?

今のまんまが出来れば良いんだけど……。


「あれ、ハヤテ何してんの?」

気付けば、何故かハヤテが地面に転がっていた。


ハヤテはイラッとした顔をした。

「お前が急に離すからだよ……」

ハヤテは頭をさすりながら立ち上がった。


「あ…、ご、ごめーん…なさい……?」

「俺は別に良いけどな。

 それについての相談か?」

ハヤテ先輩の言うそれ、とはリミッターの事だろう。


私は首を振った。

「あのね、音澤家に入りたいの」

私の言葉に、ハヤテは固まった。


「…お前………」

ハヤテの驚きっぷりに私こそ驚いた。

もしかしたら、私の思った通り…………!


「そんなにエミヤが好きなのか?

 養子はいくらなんでも無理が……」

「ちっがーーーーーう!!!!!!!」

せっかく私が真面目に話に来たって言うのに、なんでハヤテってばこんなんなの?!


「そんなんだからサキアお姉ちゃんとも 未だに付き合えてないんだよ!!!!!」

「そっ……それは言わない約束だろぉぉお」

Winっていうのが自分の頭に浮かぶのを想像した。

でも、ハヤテは頭良いくせにたまにアホなのはどうかと思う。

これ絶対、遙華さんの遺伝だと思う。


「ねぇ、そんなことどうでも良いからさ、音澤家の鍵とか持ってるんじゃないの?」

「どうでも良いって……

 持ってるが、何する気だ?

 エミヤの持ち物とかはないぞ?」

しつこい。


「いい加減、そっから離れてよ。

 真面目に言ってるの!

 ハヤテも一緒に来てよね?!」

むしろ、ハヤテが居ることに意味があるのだ。


「早く早く!」

「はいはい…」

私が急かすと、ハヤテ先輩は溜め息を吐きながら、リミッターのウォレットチェーンに鍵をつけた。


「ねぇ、関係ないんだけどさ」

「何だ?」

手を繋ぐのは全力で拒否をして、私はハヤテと並んで家に向かった。

ハヤテはまだまだ私のこと子供だと思ってる。

ハヤテだけじゃなくて、たぶんみんなそう。

ひとしお兄ちゃんも!


「ハヤテはさ、それで制御できるの?」

強さなら、たぶんエミヤさん以外の誰にも負けない。

カレンにだって本気で戦えば、たぶん勝てる。

阿呆タイガも、見た感じ現状なら勝てると思うんだ。

悪いけどお婆ちゃんにだって、からさおの隆覇さんにだって。

エミヤさんは流石に勝てる気しないけど。


「やっぱ、それだったんだろ」

「違うよ…」

ホントに違う。

ただ、ちょっと気になっただけ!


「俺の場合はな、こんなもん飾りだ。」

「飾り…?

 嘘でしょ!」

リミッターは能力レジを制御するためのものだ。

もし一瞬でも取ってしまったり、無くしてしまったら、私は、家に居ることさえ怖くなる。

触れただけで、居ただけで全部壊しちゃいそうで。


「やろう。って思わなきゃならんからなぁ~。

 お前、いつも力みすぎなんじゃないか?

 まあそれはエミヤにも言えることなんだが。」

うん、ちょっと納得。

ハヤテ先輩は、怠惰を極めし漢だもんね。

ある意味尊敬してるよ(笑)


…みんな、自分で自分のこと制御出来るんだな……。

たぶんこれは私が子供だから、とかそういう問題じゃない。

実際、セツナやケイはそんなことないはずだもん。


「お前の場合、肉体に直接関わるからなぁ…

 しょうがないだろ」

そう言って、ハヤテ先輩はワシャワシャと私の頭を撫でた。


「ほら、着いたぞ」

ハヤテの手が頭から離れ、家を見てみた。

………うん。めちゃくちゃ近い。

お婆ちゃんの程じゃないけど、私やハヤテ先輩の家よりも大きいかも?

カレンの家よりちょっと小さいくらい?



「で?何したいんだ。」

家に入ってからハヤテは聞いてきた。


「資料だよ資料!

 魔導士とかに関するやつ!」

こんなに大きいんだから、絶対あるはずだ。

家具とかそのままみたいだし。


私の言葉に、ハヤテは戸惑った顔をした。

「そ…れは………、俺は場所知らんぞ。」


「ええええええ?!?!!」

こんなに大きいところから探せと?!

ってか知らないの?!


「見たこともないし、聞いたこともない。」

「そ、そ、そ、そ、そんな訳!!!」

お婆ちゃんも隆覇さんもあるって言ってた!

なんで仮にも音澤の血を引くものが知らないの?!


「在るには在るがない。

 確か、そんな感じだったはずだ。」

何そのナゾナゾ。

意味わかんないし!


「じゃ…じゃあどうすれば…!!?」

私は無駄に大きな家で、愕然とした。

知らないどころか、無いとまで言われてしまったのだ。

振り出しに戻る、になっちゃうじゃん!


「そもそも、なんで欲しいんだ?」

そんなの決まってるじゃん!


「敵の正体を知るためだよ!!!

 あわよくば、魔界の事とか能力レジとかリミッターとか、

 そういうのを全部知りたい!!!!!!」

ハヤテは呆気に取られたみたいだった。

「…な、何だって急に……」


違う。

「急じゃないよ!

 ずっとずっと長すぎた!

 私は血に縛られるなんて、絶対にヤダ!

 自分の力で、自分の好きなように、みんなで笑い合いたい!」

エミヤさんとも、ケイとだって…、セツナも、もしかしたら悪魔とだって…!

みんなで幸せに笑い合いたい。

凄く凄く単純な動機。

でも私にとっては、それが一番の力をくれる!


『面白い』


どこからか、声が聞こえた。

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